万葉集にはじまり源氏物語、さらには牡丹燈籠に至るまで、
日本文学に綿々と受け継がれるリメイクの大きな流れに心踊らされて読み進むうちに、
なぜか気が滅入りイラついている自分に気がつく。
ひとつには、とにかく筆者が断定的な表現を避けまくる態度に起因する。
「・・・と思われる」といった表記が１ページに多ければ３回も出てくる。
筆者の意には反しているかもしれないが、読み手は、筆者が何かに遠慮しているように受け止められてしまう。
もっと自信を持って「こうだ」と言い切ってほしいし、そうしたからといって学問的な正確性を欠くわけでもない。
もうひとつは（こっちが最大の要因だが）、
筆者が自らの役割を限定的に捉えていると思われる点。
言語学は作品の比較検討までであり、そこから先は文学の領域ですので立ち入りません。
だから、なぜ書き換えが発生したのかについて、「てにをは」ベースの分析はしますけど、
もっと根源的な動機だったり心理的な要因だったり当時の事情だったりに関しては、あまり語りたくはありません。
そのくせ、リメイクの前と後でどっちが好きか、どっちが優れているかといった議論を何度も蒸し返している。
そんなことは読み手が百人百様で感じればいい話であって（筆者も「どっちもアリですよ」とくり返し述べている）、
作品のビフォー・アフターを論じるなら、なぜそう書き換えられたのかに切り込んでくれないと話にならない。
延々と文学作品の引用が続いた挙句、肝心なことには触れず、凡庸な解説を読まされる読者のことも少しは考えてほしい、と最後には感じるようになってしまった。リメイクの事例集に止まっていると断定しては失礼千万だが、これじゃあ、せっかくの題材がもったいない。
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