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「負けるが勝ち」の生き残り戦略: なぜ自分のことばかり考えるやつは滅びるか (ベスト新書 121) 新書 – 2006/10/1
「優勝劣敗」「弱肉強食」の世界だと思われている。しかし、事実は違う。長い
進化の果てに生き残った、現存する生物は、長期的に見て、互いに助け合ってい
る。互いに依存しあっている。そのようなものとして、長い自然選択の試練を経
て、生き残ることができたのである。
殺虫剤でゴキブリやハエを殺すと、当座は数が少なくなる。しかし、しばらく経
つと、以前よりぐっと増えることが知られている。複雑な自然界の現象は、決し
て、強い者が生き残り、弱い者が滅びる世界ではない。「利他主義」こそが最適
の戦略であり、弱い者ほど生き残る。このパラドックス(逆説)は、選挙をはじ
め、人間社会にも数々の実例が見られる。
本書では、生物界と人間社会から、これら逆説の例を多数取りあげながら、自分
のことばかり考えるジコチューは滅び、「黄金律」戦略と呼ばれる利他主義を
とった者が、結局は最後まで生き残ることを、ゲームの理論を駆使しながら
説得力をもって証明する、本邦初の本である。
- 本の長さ170ページ
- 言語日本語
- 出版社ベストセラーズ
- 発売日2006/10/1
- ISBN-104584121214
- ISBN-13978-4584121214
商品の説明
著者からのコメント
ものです。ときには短期と長期的結果が、まったく逆になることもあります。本
書はこのような逆転の事例(話題)をたくさん集めたものです。各々の話題は独
立しているので、興味のある話題だけを読んでいただいても結構です。
はじめの話題は「選挙とマスコミ」の関係です。当初の計画では、こ
の話題を本のタイトルにしようと思っていました。マスコミ報道は、選挙に大き
な影響を及ぼします。マスコミ報道は、短期的には有権者に決定的影響を及ぼし
ます。したがって例えば選挙の直前一ヶ月間の報道がストレートに選挙結果に
反映します。このことを総選挙のデータで立証しました。各政党がマスコミに注
目された度合いと、各政党の当選者がおおむね比例するのです。言い方を換える
と、選挙の直前うまくマスコミを利用できれば、総選挙の結果を思い通りに支配
できるということです。悪く言えば、有権者は選挙前の一時的な報道の影響を強
く受けて投票しているということです。2005年の総選挙では、「郵政民営化」の
問題だけで投票した人が多かったのは記憶に新しいことです。
しかし、長期的には、マスコミ報道の影響は複雑です。場合によって、長期
的には、短期的影響とは逆の結果を引き起こします。その具体例が「スキャンダ
ル報道」です。私は昔から、田中角栄氏、佐藤孝行氏、...、鈴木宗雄氏ら多く
のスキャンダル候補者は、なぜ勝ち残るのか疑問を持っていました。私は、ス
キャンダル報道の影響を調べるために、コンピュータ・シミュレーションを行い
ました。スキャンダルが報道されるやいなや、その政治家は大きなダメージを受
けます。しかし、それは短期的な影響であり、長期的には逆になることが多いの
です。ずっとスキャンダル報道が続いていても、しだいにその候補者が有利に
なってくるのです。これがシミュレーションの長期的結果です。日本ではその
上、選挙の直前にはスキャンダル候補者が批判されないので、スキャンダル
候補者はますます有利になります。このようにして彼らは勝ち残るのです。
生物の話題も短期と長期的結果が、まったく逆転するシミュレーション事
例です。ゴキブリ駆除の場合、駆除装置の設置とともにゴキブリが減り始めま
す。しかし、長期的には、駆除装置が設置され続けているにもかかわらず、前に
も増してゴキブリが増加することもあるのです。「アドレア海のパラドックス」
もそのような事例です。これは第一次大戦後、アドレア海で漁業が開始されまし
たが、漁業によって魚を殺しても、増加してくる魚もあるという話です。
最近のゲーム理論は、人間のモラルの研究にも役立っています。ゲーム理
論において、最も重要なのは「囚人のジレンマゲーム」です。私は、このゲーム
によって、「情けは人のためならず」ということわざを立証しました。「他人に
親切にしておけば、その人のためになるばかりではなく、やがてはよい報いが自
分に戻ってくる」ことをシミュレーションで示したのです。「目には目を」とい
う報復主義は、長期的に見るとあまり得にはならないのです。「やられたらやり
返す」ということが続くのです。報復主義は、報復と暴力の連鎖によって、逆
に自分の利得を減らしてしまいます。
最後の話題は「生物の絶滅」と「オーストラリア先住民(アボリジニ)」
の話です。アボリジニは、古くから陰陽説の概念を持っています。これは近親婚
を回避する結婚システムとなっています。5万年の歴史を持つアボリジニの輝か
しい成果です。生物も環境条件が良いときに近親婚回避システムを発達させまし
た。しかし、近年になってアボリジニも生物も環境条件が悪化してきました。ア
ボリジニは、結婚システムを緩めることでなんとかなっています。しかし、生物
はシステムを急には変更できないので絶滅するのです。
著者について
静岡大学 創造科学技術大学院
(静岡大学 工学部システム工学科 兼担)
登録情報
- 出版社 : ベストセラーズ (2006/10/1)
- 発売日 : 2006/10/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 170ページ
- ISBN-10 : 4584121214
- ISBN-13 : 978-4584121214
- Amazon 売れ筋ランキング: - 931,138位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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本書の記載は後に出版された『生き残る生物...』との重複が多いが,部分的には説明が詳しく,選挙やジャンケンなどを例示して理解しやすいように配慮されている。万人を対象とした入門書ながら,参考文献も提示されており,一部を検証した限りに於いては信頼性は高いと思う。
難点は,囚人のジレンマなどを知る者にとっては物足りないこと,やや説明不足を感じる点があることである。後者については,『負けるが勝ち』という勝者とは必ずしも一旦負けた個人が最後は勝つという意味ではなく,部分的に負けを認める戦略を認める個体のいる種族が絶滅しないという意味を含むことを明記すべきである。例えば,ある自動車製造会社が負けることによってその隙間には別の自動車会社が入り込むために,自動車産業全体が絶滅することはないが,負けた会社自身は消滅してしまうということだ。つまり,自己の滅亡と種全体の絶滅を区別して理解する必要がある。逆にいうと,各自がわがままであれば種族全体が絶滅するということを含む。それ以外にも『シカの角が大きくなったのは他のオスに勝ちたいから』という表現よりも『より大きな角のシカが高確率で子孫を残せたためにその形質が選択圧になった』の方が正しいと思う(これは他の進化論の本にも言える。アノールトカゲなどエピジェネティックな変化を除く)。細かく言えば,イクラとタラコの大きさの違いの根拠も説明不足である。
全体としては良書と思うし,著者の理念は素晴らしいと思う。学者としての業績も優れているとおもう。できれば脚注などを加えて,もう少し詳しくしてほしかった。先の難点を考慮して星4つの評価。
「利他主義」を説く論調は多々あるが、情緒的精神的な側面を根拠とするものがほとんどである中、ゲーム理論を持ち込んだ点がユニークである。
他人の為に行う善行が、まわりまわって「種」の繁栄に結び付くといったまとめが多い。
それは別として、アリのなるへそ行動など、
昆虫や生物たちの不思議な行動の謎が書かれており
単純に面白い
この逆説的な思考は面白かった。
生物進化の長期的最適化がゲーム理論によって
理由づけされている。
著者の言う、
「本当に豊かな社会では、弱いものでも不安なく生きて
いける社会ではないだろうか。
負けるが勝ちの科学的事実に多くの人が気づき、
目の前の諸問題の数々に関しても短期的な応答ではなく、
長期的な視野で行動選択することが、そういう社会を実現するための
鍵になるはずである」。
これこそがこれからの私たちの生き方ではないだろうか、と
深く感銘を受けた。
競争社会で病んでいく人が多い中、
負けるが勝ち、とステージを降りて、ゆっくりと
まわりを見渡してみると、この事実に気付くのでは。
また、我々は病気を退治するために、医療を充実させてきたわけであるが、充実すればするほど病気が増えるという。
本書を読み進めるうちに、今まで常識で考えられていたことが、シミュレーションや実例から、見事に覆されていく。
進化論による自然淘汰の仕組みを、ゲーム理論によって解説しているが、短期的には相手をだます戦略が優勢を示すが、長い目で見ると「黄金律」に乗っ取った行動、すなわち、どんな人に対しても善行を行うことこそが、最も生き残る戦略であるという。
これは、我々の日常行動にもいえるであろうし、国際関係における日本の取るべき行動にもいえるのではないか。
生物学の世界であっても、我々が学ぶべきものは多いものだと感じた。