ドイツ戦の後の選手のフラッシュインタビュー、丸山選手が息も荒く、
ボードの前に立った。
インタビューアーである日比野さんの事を何故かまっすぐに見ないで、
いくらか下向きにマイクに向かった。
うん?あまり嬉しそうな感じではない?
「岩渕選手が出してくれると信じて、スペースに走り出しました。」
え?
そう、あのパスは岩渕選手が出したものではなく、岩渕選手がトラップ・ミスを
したボールを澤選手がはたいて出したものだ。丸山選手は勘違いしていた。
それもそのはずで、岩渕選手にボールが回ってきた時点で、既に丸山選手は
岩渕選手に背を向けてスペースに走り出していたから、見えていなかった。
それに気づいていた日比野さんは何も指摘せずに、受け答えていた。
何故、丸山選手はインタヴュー時、日比野さんをまっすぐに見なかったのか。
この後、著者はこう胸の中で丸山選手につぶやく。
「あなたは泣いても良かったのに・・・。」
二人とも何と、神経の細やかな人達なのだろう。
この理由が書かれている章を読んで、信頼関係の太さを理解した。
そんな幸せな関係を築ける著者は、本当に素敵な人だ。
それを裏付けるエピソードの数々は、著者の人柄を余すことなく表現している。
ミーハーな視線が、全く違和感無く、ストレートにこちらに入ってくる。
ここにも、真摯で、まっすぐで、ひたむきで、心優しいなでしこがいる。
しかも、このなでしこはたった一人で戦っている。
熱狂の試合経過は、拍子抜けするほどあっさりとスルーした表現に
とどまっている。
むしろ、試合後や休日、練習時のなでしこ達の姿を、本当にまっすぐに記述している。
こうなると、最早取材対象とかではなく、「大好きな人達の日常」を「追っかけ」
しているようなものだ。
しかし、それが決して嫌味や違和感をもたらさないのは、何故か。
とてつもない偉業を成し遂げた彼女達の、実に普通に優しくて、心の強い姿に
唖然としてしまうほど、普通の姿とそれを優しく見守る、「お姉さん」のような
スタンスだからだ。
何と冷静で、可愛らしく、穏やかで、素敵な人達なのだろうか。
読み進む内に何度、涙腺が決壊したであろうか。
読み進む内に何度、微笑んだであろうか。
ほぼミーハーに徹した著者の姿勢が、却って、彼女自身の真面目な姿勢を映した
稀有な傑作となった。
実際、ここ数年読んだ本の中で、こんなに素敵なジャーナル本は無かった。
ありがとう、と、なでしこ達と著者に改めて言いたい。
勿論、裏方に徹したTVの画面に数度写っていた女性スタッフ達にも。
「感動をありがとう」などというキャッチフレーズには正直辟易するが、
今回ばかりは違う。
あらゆるスポーツの試合を限りなく見てきたが、こんな感動した試合を見た事が無い。
日本女子は素晴らしい。
感謝のバナー横断幕を一緒に持ってスタジアムを1周してくれた英国女子は素晴らしい。
ワンバック選手、ソロ選手を擁する米国選手達の日本女子への賞賛。
米国女子は素晴らしい。
日本の澤の同点弾をスタンドで自国の点のように喜ぶ独国女子は素晴らしい。
独女子代表監督だったシルヴィア・ナイト監督のガッツ・ポーズ。
それは、日本がPK戦で勝った瞬間のポーズだった。
イングランド戦の前に、スタジアム周辺で著者とすれ違った。
沢山のファイルを持って、颯爽と闊歩する著者はなでしこ達と同じく小さな
まるで少女のようだったが本当に凛として素敵だった。
この著者も、この大会を通じて「凛と咲いた日本女子」だった。
美しく、強く、たおやかで、限りなく優しい女性。
是非、ロンドンで彼女達が織り成してくれるはずの美しいサッカーの
旋律を、もう一度著者にルポルタージュしてもらいたい。
本当に日本女子は素晴らしい。
ウエムブリー・スタジアムでまた、最高の栄冠を最高の笑顔で。
そんな姿を、夢想ではなく、現実として。
彼女達なら、そのメダルを、高々に空に向かって。
誇り高い笑顔で。世界へ。愛を。平和を。
この本にサブ・タイトルを付けるならば沢木先生の受け売りだが
「愛と平和とスタジアム」。
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凛と咲く なでしこジャパン30年目の歓喜と挑戦 単行本 – 2011/9/1
日々野 真理
(著)
ワールドカップ優勝――。 その道のりを、選手に最も近いところで取材をしつづけた日々野真理が綴る、なでしこジャパンの激闘秘話と過去そして未来の話。 ワールドカップ前、いままの「なでしこ」とは違った空気をもった「個性派集団」は、これまでにない不安と期待を持っていた。 しかし、大会が進むごとにその不安は解消されていく。個性となでしこの伝統は見事な化学反応を起こし、世界一へと突き進む原動力となるのだ。 日々変わる選手の表情、声、知られざる心情。 なでしこジャパンのメンバーから絶対的な信頼を得ていた日々野氏だからこそ、知ることができた選手の心情の変化と、なでしこの本当の表情とは――。 女子サッカー日本代表誕生からちょうど30年目。その歓喜と、これからの挑戦を描く1冊。 澤穂希選手推薦 「この本で、女子サッカーの魅力を多くの人に知ってもらえたらうれしいです」
- 本の長さ207ページ
- 言語日本語
- 出版社ベストセラーズ
- 発売日2011/9/1
- ISBN-104584133379
- ISBN-13978-4584133378
商品の説明
著者について
日々野真理(ひびの・まり) 三重県出身。フリーアナウンサー。 武蔵野女子大学短期大学部英文科卒業後アメリカに留学。 スカパー!などでサッカー番組の司会やJリーグのピッチリポーターとして活躍。 また女子サッカーの取材も精力的に行っており、なでしこジャパンのオリンピックやワールドカップなどの海外の大会に多数同行。 ワールドカップアメリカ大会ではTBSのリポーター、インタビュアーとして、 中国大会・ドイツ大会ではフジテレビのリポーター、インタビュアーとして現地取材を行った。
登録情報
- 出版社 : ベストセラーズ (2011/9/1)
- 発売日 : 2011/9/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 207ページ
- ISBN-10 : 4584133379
- ISBN-13 : 978-4584133378
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,181,817位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 28,072位スポーツ (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
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2011年9月24日に日本でレビュー済み
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それぞれの選手の思いが伝わってきます。歴史などその思いの原点がもう少し書かれていればと思いました。
2011年11月23日に日本でレビュー済み
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本書の終章は「未来そして、過去」と題した、山郷のぞみ選手と宮間あや選手へのインタビュー。佐々木監督や澤選手ではなく、なぜこの2人を選んだのかを知れば、著者・日々野真理さんが、どれだけ深く「なでしこ」を理解しているのかがよくわかるでしょう。
日々野さんは、インタビューで選手の心のひだまで分け入る能力に長けています。選手たちも心を開いて、ざっくばらんに飾らない言葉で心境を語ってくれます。そこで引き出された多くの宝のような言葉がこの本には満ちています。
読みどころは、ワールドカップの美しい記憶をたどっていく観戦記事と、なでしこたちの人間ドラマに二分されます。後者で著者が、個性あふれる選手たちのなかから着目したのは、宮間あや選手の存在です。試合翌日の練習で控え組に交じってプレーする。交代させられた悔しさで号泣するエースの永里選手に寄り添う。
著者はそんな宮間選手の行動と言葉から、彼女のチームへの気遣いを読み取っていきます。そして、なぜ彼女たちはひとつになって戦うことができたのかに迫ります。そのストーリーをぜひ本書で確かめてください。ニュースやバラエティとは違ったアングルから、日本女子サッカーの挫折と挑戦と歓喜を記した「なでしこ本」の決定版だと思います。
日々野さんは、インタビューで選手の心のひだまで分け入る能力に長けています。選手たちも心を開いて、ざっくばらんに飾らない言葉で心境を語ってくれます。そこで引き出された多くの宝のような言葉がこの本には満ちています。
読みどころは、ワールドカップの美しい記憶をたどっていく観戦記事と、なでしこたちの人間ドラマに二分されます。後者で著者が、個性あふれる選手たちのなかから着目したのは、宮間あや選手の存在です。試合翌日の練習で控え組に交じってプレーする。交代させられた悔しさで号泣するエースの永里選手に寄り添う。
著者はそんな宮間選手の行動と言葉から、彼女のチームへの気遣いを読み取っていきます。そして、なぜ彼女たちはひとつになって戦うことができたのかに迫ります。そのストーリーをぜひ本書で確かめてください。ニュースやバラエティとは違ったアングルから、日本女子サッカーの挫折と挑戦と歓喜を記した「なでしこ本」の決定版だと思います。
2011年10月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
特に良かったと思うのは終章のインタビュー。長年女子日本代表を追い続けている著者だからこそインタビューできた内容ではないかと思う。
インタビューを受けたのは山郷選手と宮間選手。佐々木監督や澤選手ではなくこの2人にしたところがニクイというか、素晴らしい。
山郷選手については、如何に彼女がなでしこジャパンにとって重要な選手であるかがよく分かる内容であった。試合を表面的に見ていただけでは決して分からないが、彼女の貢献度は本当に凄いと思う。
宮間選手については、世界一になっても決して浮かれることなく、次のステージへ向けてしっかりした考えを持っていることが伺えた。しっかりとした、1本の大きな太い芯のようなものを感じた。
インタビューを受けたのは山郷選手と宮間選手。佐々木監督や澤選手ではなくこの2人にしたところがニクイというか、素晴らしい。
山郷選手については、如何に彼女がなでしこジャパンにとって重要な選手であるかがよく分かる内容であった。試合を表面的に見ていただけでは決して分からないが、彼女の貢献度は本当に凄いと思う。
宮間選手については、世界一になっても決して浮かれることなく、次のステージへ向けてしっかりした考えを持っていることが伺えた。しっかりとした、1本の大きな太い芯のようなものを感じた。
2013年5月8日に日本でレビュー済み
女子ワールドカップをグループリーグからテレビで観戦して、なでしこジャパンに興味を持ちました。
ワールドカップ優勝後に、なでしこジャパン関係のグラフ誌や書籍を多数購入しておきましたが、3日前に本書をやっと読みました。
筆者は、選手と親交が有り、フジテレビのレポーターとして、なでしこジャパンに帯同して現場で見聞きし、思った事を描いているので、ワールドカップ優勝当時の感動が蘇りました。
又、現地で採用したドイツ人スタッフ(テレビクルー)がなでしこのファンになって行く様子や、筆者が試合後の公式インタビューをする様子等、大会の裏話も書かれていて、ワールドカップが少し身近に感じられて良かったです。
ワールドカップ優勝後に、なでしこジャパン関係のグラフ誌や書籍を多数購入しておきましたが、3日前に本書をやっと読みました。
筆者は、選手と親交が有り、フジテレビのレポーターとして、なでしこジャパンに帯同して現場で見聞きし、思った事を描いているので、ワールドカップ優勝当時の感動が蘇りました。
又、現地で採用したドイツ人スタッフ(テレビクルー)がなでしこのファンになって行く様子や、筆者が試合後の公式インタビューをする様子等、大会の裏話も書かれていて、ワールドカップが少し身近に感じられて良かったです。
2011年10月30日に日本でレビュー済み
女子サッカーワールドカップドイツ大会でのなでしこの奇跡の優勝への道筋を、長く女子サッカー取材を続けてきたジャーナリストが綴った本。発刊の直後、なでしこチームFWでドイツ戦で決勝ゴールを上げた丸山選手が、一読を推奨されていた。
ワールドカップ期間中、チームに密着帯同しての取材で得られた選手たちの素顔が、微笑ましくまた興味深い内容だ。
おそらくこのチームは平常心で、大会に臨めていたのだろう。本書を読むと、有名になった決勝戦PK戦直前の笑顔の円陣もすんなりと来るのだ。
一人のサッカーファンとして、女子サッカーのますますの発展を祈念し、これからも応援していきたいと思う。
ワールドカップ期間中、チームに密着帯同しての取材で得られた選手たちの素顔が、微笑ましくまた興味深い内容だ。
おそらくこのチームは平常心で、大会に臨めていたのだろう。本書を読むと、有名になった決勝戦PK戦直前の笑顔の円陣もすんなりと来るのだ。
一人のサッカーファンとして、女子サッカーのますますの発展を祈念し、これからも応援していきたいと思う。
2011年9月25日に日本でレビュー済み
サッカー専門誌になでしこジャパンのことをよく書かれている日々野真理さんの著です。
読みやすい文章ですらすら読めます。書かれていることも興味深いことが多いので集中でき、本を読み慣れて人なら一時間くらいで読めるでしょう。
ワールドカップの数試合をテレビで観た方は得点シーンでの感動がよみがえると同時にテレビだけでは知ることのできない個々の選手の個性や心理、サッカーへの姿勢を知ることになり感動がより深くなると思います。
レビュアーの印象に残ったのは永里優季選手のことです。交替を告げられたときや先発で出れないときに号泣したといいます。そのとき周囲のメンバーがどういう態度で包んだか、そこには奥深い思いやりやチームワーク精神があることを知りました。
著者のなでしこジャパンとのつきあいは長いようで選手ともコミュニケーションがよくとれているのだと思えるエピソードも数多く出てきます。
読みやすい文章ですらすら読めます。書かれていることも興味深いことが多いので集中でき、本を読み慣れて人なら一時間くらいで読めるでしょう。
ワールドカップの数試合をテレビで観た方は得点シーンでの感動がよみがえると同時にテレビだけでは知ることのできない個々の選手の個性や心理、サッカーへの姿勢を知ることになり感動がより深くなると思います。
レビュアーの印象に残ったのは永里優季選手のことです。交替を告げられたときや先発で出れないときに号泣したといいます。そのとき周囲のメンバーがどういう態度で包んだか、そこには奥深い思いやりやチームワーク精神があることを知りました。
著者のなでしこジャパンとのつきあいは長いようで選手ともコミュニケーションがよくとれているのだと思えるエピソードも数多く出てきます。
2011年10月12日に日本でレビュー済み
激闘の中の心情や、前後の様子。そして大会を終えてからのインタビューなど、著者と選手たちの深い関係だからこそ聞き出すことができた貴重な話が詰まっている。