本書の出版予定を知り、さっそく予約を入れて購入した。出版後数週間で一時品薄状態になって入手困難になったようだ。私と同じく翻訳を心待ちにしていた人が大勢買ったのだろう。
翻訳を評価する資格はないが、訳文は日本語として読みやすい。原書の英語版と仏語版の両方を参照し、原書より明瞭に理解できることを目指し、訳注ではANT(Actor-Network-Theory)の用語集として活用できる水準を目指したという。なかなか意欲的な訳業である。
本書はANTの入門と題されているが、社会と社会科学をどのように理解したらよいかを説く、ANT理論のフルバージョンである。以下の点を押さえておけば、今までの社会学等とどこが違うかが理解しやすくなるだろう。
1.主要概念
新しい思想には、新しい概念の理解が不可欠である。思弁的実在論のグレアム・ハーマンは、ラトゥールの理論を4つにまとめている。その4つに本書からの補足を加えておく。
(G. Harman(2007)‘The Importance of Bruno Latour for Philosophy’, Cultural Studies Review, 13(1): 33-49.)
①アクター(actor):存在するものはすべてアクターである。すべてのアクターは同じように扱われなければならない。
(補足)ネットワークの最初の構成要素としてアクターを想定するのは間違いのようだ。「分かちがたい結合が第一であり、アクターはその次である(p.416)」と述べ、結合の例として人形と操り人形師の例を挙げている(訳註7)。また、「アクターとは、行為の源ではなく、無数の事物が群がってくる動的な標的である(p.88)」という表現は、いわゆるネットワーク理論との違いが鮮明になる。
「同じように扱う」とは、人間も非人間も区別しないということである。これはANTの一大特徴といえる。
②イリダクション(irreduction):何ものも減じられたり、他の何かに置き換えられたりはできない。
(補足)例えば生物学で発見された原理を当てはめて、実在する事物(entity)を説明することはしてはならない。ここで従来の社会学理論の多くは「他の何か」として否定されることになる。
③翻訳(translation):事物が別の何かに代わることはできない。実際に起こることは別の事物に影響を及ぼすということである。
(補足)英語から日本語に翻訳するなどという意味ではない。変換という訳語でもいいように思うのだが、それではいけないようだ。事物と事物がつながるとき、アクターに新しい意味が創造されるということである(訳註24)。下記に示すカロンの例では、科学者は仲間に、漁師は代表者に、ホタテ貝は稚貝に翻訳されたということになろう。
④連関(association):連関や協働は弱かったり強かったりする。社会科学とはこれらの連関をトレースすることである。
(補足)社会は連関の全体ではない。社会は連関の一部である。社会的な事物を集め、接続させる制度や手続き、概念がどのようなものであるかを探ることが重要である(p.26)。「集合体(collective)という語を社会の代わりに用いたい」と提唱されることになる(p.141)。
2.三つの論文
ラトゥールはANTの形成に寄与した本格的な論文を三つ挙げている(p.24)。これで科学技術を対象とした研究が社会的なものと互換的になった。本書には内容の紹介がなかったので調べてみた。
・ブリュノ・ラトゥール
ラトゥール自身が1988年に書いた『The Pasteurization of France』。これはトルストイの『戦争と平和』の主人公がフランス皇帝ナポレオンでもなく、ロシア軍の元帥クトゥーゾフでもないように、パスツールの微生物学の発見がリアリティを獲得したのは、パスツール以前の衛生学によって道が開かれていたからである。
・マイケル・カロン
もうひとつは、マイケル・カロン(Michel Callon, 1986)の『Some elements of a sociology of translation: domestication of the scallops and the fishermen of St Brieuc Bay』で、サン・ブリュ湾のホタテ貝の養殖の話である。
アクターたち、つまりホタテ貝、漁師たち、研究者が集まった。研究者は日本の養殖技術を応用するという計画を提示し、漁師たちは代表者として参加し、科学者は彼らの仲間となった。プロジェクトの目標はホタテ貝の稚貝を網に付着させることであった。そのことでホタテ貝は生命を得、漁師たちは生活の糧を得、科学者たちは知識を得ることができる。しかし、残念ながら網の近くをトロール船が通ってしまい、稚貝の集まりは破壊されてしまった。
・ジョン・ロー
三つ目は、ジョン・ロー(John Law, 1986)の『On the Methods of Long-Distance Control: Vessels, Navigation and the Portuguese Route to India』である。
西洋が16世紀以来の世界制覇を可能にした航海術の技術革新について報告されている。15世紀から16世紀にかけてのポルトガル・インド航路について研究されている。人間と非人間の三つの使者が、中央から周辺へのコントロールを可能とした。数々のドキュメント、船を含めた数々の装置、そして訓練された人々である。
3.ANTかどうかの判断基準
ハーマンの要約と重なるが、ラトゥール自身がANTの特徴を三つ挙げている(p.24-6)。
①非人間にはっきりとした役割が与えられているかどうか。
(補足)はいらないだろう。
②社会的なものを安定化させたまま、ある事物の状態を説明するのに用いるならば、それはANTではない。
(補足)例えば「グローバル化」という社会的なものを持ち出して説明を試みたりすること(p.365)。
③その研究が社会的なものを組み直すことを目指しているのかどうか。
(補足)脱構築などのポストモダンの思想と混同してはならない。
4.タルドはANTの先駆者
カロンは自分の「翻訳の社会学」を、ミシェル・セールの『ヘルメス〈3〉翻訳』1974年に負っていると言ったそうだが(p.203)、ラトゥールはガブリエル・タルドを自分たちの社会理論の先駆者としている(p.32)。
スペンサーの有機体論に抗し、デュルケムの社会学に抗したタルドであったが(p.413)、有名なタルド―デュルケム論争に敗れ、今日タルドの名前はほとんど知られていない。
タルドの狙いは、ライプニッツのモナド論を一般化することであった(p.33)。モナドは単子と訳されることがあるが、「個を超越した全体でもなければ、個の総和でもなく、互いにつながりあったすべての個を指す」と訳註20で説明されている。そして、タルドの発想は、ANTが取り組んできた「科学史」や「イノベーションの社会学」を説明するものでもあった。
残念なことに、タルドは結びつきの網を示すためのうまい比喩がなく、「模倣放射」という粗いメタファーに頼らざるをえなかった(p.415)。
・ジル・ドゥルーズ
ドゥルーズ、ガタリの『千のプラトー』では、タルドへのオマージュが書かれている(文庫本・中 p.117)。ラトゥールばかりでなく、ドゥルーズもタルドを評価していたようだ。そして、『千のプラトー』の序はリゾームと題され、リゾームはANTに似ている。以前ラトゥールは、ANTをアクタン-リゾーム存在論(actant-rhizome ontology)と呼ぶのに反対しなかったようだ(p.22)。
アクターネットワーク理論(ANT)は、ポストモダン流の批判思想と混同されてきた(p.26)。しかし上記の理解があれば、ベルタランフィ以降のシステム理論の一部である社会システム論(例えばルーマン)や最近の複雑系ネットワークとも違う理論であると理解できよう。集合体のあり様を、固定した理論にとらわれず、柔軟にあるがままに記述することを目指すのがアクターネットワーク理論であるように思える。それはまるで集合体の事例研究のようだ。
本書の真ん中に挿入され、「蟻(ANT、アント)であることの難しさについて」と題された教授と学生の対話を理解できれば、アクターネットワーク理論をほぼマスターしているといえよう。人類と科学技術の未来を建設的なものにするために、アクターネットワーク理論は貢献するものと期待される。
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社会的なものを組み直す: アクターネットワーク理論入門(叢書・ウニベルシタス) (叢書・ウニベルシタス 1090) 単行本 – 2019/1/11
ブリュノ ラトゥール
(著),
伊藤 嘉高
(翻訳)
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主体/客体あるいは人間/自然といった近代的世界認識を超え、脱中心的なネットワークとして社会を記述するアクターネットワーク理論。アーリ、ラッシュら多くの社会学者に影響を及ぼし、技術社会論、情報論、経営学、地理学、人類学、哲学、アートにもインパクトを与えた方法論を、提唱者であるラトゥール自身が解説する。現代の知見をふまえてアップデートされたラトゥール社会学の核心。
目次
謝 辞
序章──連関をたどる務めに立ち帰るには
第I部 社会的世界をめぐる論争を展開させるには
はじめに──論争を糧にすることを学ぶ
第一の不確定性の発生源──グループではなく、グループ形成だけがある
グループ形成が残す痕跡のリスト
ノー・ワーク、ノー・グループ──働きかけがなければ、グループはない
媒介子 対 中間項
第二の不確定性の発生源──行為はアクターを超えてなされる
〈アクターが行為する〉ように他の多くのものがしている
実地に根ざした形而上学を探究する
エージェンシーをめぐる論争を地図に示すためのリスト
誰かに何かをさせる方法
第三の不確定性の発生源──モノにもエージェンシーがある
働いているアクターの種類を増やさなくてはならない
モノを行為の進行に与するものにする
モノはところどころでしか痕跡を残さない
モノの活動が簡単に可視化される状況のリスト
権力関係を忘却してきたのは誰なのか
第四の不確定性の発生源──〈厳然たる事実〉対〈議論を呼ぶ事実〉
構築主義 対 社会構築主義
科学社会学の幸いなる難破
社会的説明は必要ない
翻訳 対 移送
経験には目に映る以上のものがある
〈議論を呼ぶ事実〉を展開するのに資するリスト
第五の不確定性の発生源──失敗と隣り合わせの報告を書きとめる
テクストを書くのであって、窓ガラスを通して見るのではない
ついにネットワークが何であるのかを定義する
基本に帰る──ノートのリスト
批判ではなく、展開
アリ/ANTであることの難しさについて──対話形式の幕間劇
導入──消極的な理論と積極的な理論
ネットワークと、記述の重要性について
解釈的なパースペクティブと客観主義的なパースペクティブについて
相対主義、ANT、コンテクストについて
文字による記述、作り話、論文について
痕跡を残さないアクターと、研究から学ぶ必要のないアクターについて
反省性と説明について
構造主義とANTの果てしない隔たり
科学、権威、意義について
第II部 連関をたどり直せるようにする
はじめに──社会的なものをたどることは、なぜ難しいのか?
社会的なものをフラットな状態に保つ方法
第一の手立て──グローバルなものをローカル化する
パノプティコンからオリゴプティコンへ
パノラマ
第二の手立て──ローカルなものを分散させ直す
分節化、ローカル化の装置
対面的な相互作用という場の怪しさ
プラグイン
アクターから、分かちがたい結合へ
第三の手立て──複数の場を結びつける
規格から収集型の言表へ
ついに媒介子
プラズマ──ミッシング・マス
結章 社会から集合体へ──社会的なものを組み直すことは可能か
どのような政治認識論なのか?
数あるなかの一学問分野
政治の異なる定義
訳 註
訳者あとがき
文献一覧
事項索引
人名索引
目次
謝 辞
序章──連関をたどる務めに立ち帰るには
第I部 社会的世界をめぐる論争を展開させるには
はじめに──論争を糧にすることを学ぶ
第一の不確定性の発生源──グループではなく、グループ形成だけがある
グループ形成が残す痕跡のリスト
ノー・ワーク、ノー・グループ──働きかけがなければ、グループはない
媒介子 対 中間項
第二の不確定性の発生源──行為はアクターを超えてなされる
〈アクターが行為する〉ように他の多くのものがしている
実地に根ざした形而上学を探究する
エージェンシーをめぐる論争を地図に示すためのリスト
誰かに何かをさせる方法
第三の不確定性の発生源──モノにもエージェンシーがある
働いているアクターの種類を増やさなくてはならない
モノを行為の進行に与するものにする
モノはところどころでしか痕跡を残さない
モノの活動が簡単に可視化される状況のリスト
権力関係を忘却してきたのは誰なのか
第四の不確定性の発生源──〈厳然たる事実〉対〈議論を呼ぶ事実〉
構築主義 対 社会構築主義
科学社会学の幸いなる難破
社会的説明は必要ない
翻訳 対 移送
経験には目に映る以上のものがある
〈議論を呼ぶ事実〉を展開するのに資するリスト
第五の不確定性の発生源──失敗と隣り合わせの報告を書きとめる
テクストを書くのであって、窓ガラスを通して見るのではない
ついにネットワークが何であるのかを定義する
基本に帰る──ノートのリスト
批判ではなく、展開
アリ/ANTであることの難しさについて──対話形式の幕間劇
導入──消極的な理論と積極的な理論
ネットワークと、記述の重要性について
解釈的なパースペクティブと客観主義的なパースペクティブについて
相対主義、ANT、コンテクストについて
文字による記述、作り話、論文について
痕跡を残さないアクターと、研究から学ぶ必要のないアクターについて
反省性と説明について
構造主義とANTの果てしない隔たり
科学、権威、意義について
第II部 連関をたどり直せるようにする
はじめに──社会的なものをたどることは、なぜ難しいのか?
社会的なものをフラットな状態に保つ方法
第一の手立て──グローバルなものをローカル化する
パノプティコンからオリゴプティコンへ
パノラマ
第二の手立て──ローカルなものを分散させ直す
分節化、ローカル化の装置
対面的な相互作用という場の怪しさ
プラグイン
アクターから、分かちがたい結合へ
第三の手立て──複数の場を結びつける
規格から収集型の言表へ
ついに媒介子
プラズマ──ミッシング・マス
結章 社会から集合体へ──社会的なものを組み直すことは可能か
どのような政治認識論なのか?
数あるなかの一学問分野
政治の異なる定義
訳 註
訳者あとがき
文献一覧
事項索引
人名索引
- 本の長さ577ページ
- 言語日本語
- 出版社法政大学出版局
- 発売日2019/1/11
- 寸法13.8 x 3.4 x 19.6 cm
- ISBN-104588010905
- ISBN-13978-4588010903
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商品の説明
著者について
ブリュノ・ラトゥール(ラトゥール ブリュノ)
(Bruno Latour)
1947年、フランス東部ブルゴーニュ地方のボーヌ生まれ。1975年にトゥール大学より哲学で博士号を取得。1982年から2006年までパリ国立高等鉱業学校教授、その後、2017年までパリ政治学院で教授を務めた。現在は、同学院名誉教授。主な日本語訳に、『科学が作られているとき──人類学的考察』(川崎勝・高田紀代志訳、産業図書、1999年)、『科学論の実在──パンドラの希望』(川崎勝・平川秀幸訳、産業図書、2007年)、『虚構の「近代」──科学人類学は警告する』(川村久美子訳、新評論、2008年)、『法が作られているとき──近代行政裁判の人類学的考察』(堀口真司訳、水声社、2017年)、『近代の〈物神事実〉崇拝について──ならびに「聖像衝突」』(荒金直人訳、以文社、2017年)、近著に、Face à Gaïa: Huit conférences sur le nouveau régime climatique (La Découverte – Les Empêcheurs, 2015)、Où atterrir?: Comment s'orienter en politique (La Découverte, 2017)などがある。
伊藤 嘉高(イトウ ヒロタカ)
1980年生まれ。2007年、東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。山形大学大学院医学系研究科助教、講師を経て、2018年から新潟医療福祉大学医療経営管理学部講師。主な論文に`Working condition of nurses in Japan: awareness of work-life balance among nursing personnel at a university hospital', Journal of Clinical Nursing,20: 12–20, 2010、`Employment status among non-retired cancer survivors in Japan', European Journal of Cancer Care, 24 (5): 718–23, 2015、翻訳にJ. アーリ『社会を越える社会学』(吉原直樹監訳、法政大学出版局、2006年)、J. アーリ『グローバルな複雑性』(吉原直樹監訳、法政大学出版局、2014年)、J. アーリ『モビリティーズ』(吉原直樹と共訳、作品社、2015年)。
(Bruno Latour)
1947年、フランス東部ブルゴーニュ地方のボーヌ生まれ。1975年にトゥール大学より哲学で博士号を取得。1982年から2006年までパリ国立高等鉱業学校教授、その後、2017年までパリ政治学院で教授を務めた。現在は、同学院名誉教授。主な日本語訳に、『科学が作られているとき──人類学的考察』(川崎勝・高田紀代志訳、産業図書、1999年)、『科学論の実在──パンドラの希望』(川崎勝・平川秀幸訳、産業図書、2007年)、『虚構の「近代」──科学人類学は警告する』(川村久美子訳、新評論、2008年)、『法が作られているとき──近代行政裁判の人類学的考察』(堀口真司訳、水声社、2017年)、『近代の〈物神事実〉崇拝について──ならびに「聖像衝突」』(荒金直人訳、以文社、2017年)、近著に、Face à Gaïa: Huit conférences sur le nouveau régime climatique (La Découverte – Les Empêcheurs, 2015)、Où atterrir?: Comment s'orienter en politique (La Découverte, 2017)などがある。
伊藤 嘉高(イトウ ヒロタカ)
1980年生まれ。2007年、東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。山形大学大学院医学系研究科助教、講師を経て、2018年から新潟医療福祉大学医療経営管理学部講師。主な論文に`Working condition of nurses in Japan: awareness of work-life balance among nursing personnel at a university hospital', Journal of Clinical Nursing,20: 12–20, 2010、`Employment status among non-retired cancer survivors in Japan', European Journal of Cancer Care, 24 (5): 718–23, 2015、翻訳にJ. アーリ『社会を越える社会学』(吉原直樹監訳、法政大学出版局、2006年)、J. アーリ『グローバルな複雑性』(吉原直樹監訳、法政大学出版局、2014年)、J. アーリ『モビリティーズ』(吉原直樹と共訳、作品社、2015年)。
登録情報
- 出版社 : 法政大学出版局 (2019/1/11)
- 発売日 : 2019/1/11
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 577ページ
- ISBN-10 : 4588010905
- ISBN-13 : 978-4588010903
- 寸法 : 13.8 x 3.4 x 19.6 cm
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著者について
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新潟大学人文学部准教授。東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座講師など経て、現職。
専門は、地域社会学、医療社会学、科学社会学。医療、福祉、防犯、防災、環境、観光などを媒介にした地域社会の構築に資する調査研究に取り組む。翻訳も。
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2019年2月4日に日本でレビュー済み
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2019年2月3日に日本でレビュー済み
「社会的なもの」(the social)とはいったいなんでしょうか。
概念的な広狭からまずは文化(culture)について一言しておきます。
人類学の成果等によると、そもそも文化とは次の2項に分かれます。
即ち、自然文化(文明)としての固有環境での生活技術体系(natural civilization)と、
法社会技術としての現地小社会の統合(social institution)です。
概念的には社会は文化よりも狭く、文化の中に含まれ、やはり進化します。
(詳細は『文化人類学15の理論』など)
その流れはあたかも回路のように還流しており、固有の自然を普遍文化へとつなぐ架け橋なのです。
前者はその点具体的ですが、後者はかなり抽象的です。
そこで、「社会的なもの」を紡ぎ出すということは、高度な抽象性の発揮を意味し、
その一例としては「日本国憲法」などもありえます。
本書はいわゆる「アクターネットワーク理論」の入門書として、
社会的動因間をコネクトすることによって、
一社会の全体像がつかめるようにするという発想に出たものであり、
抽象度・応用度の高い理論だと思います。つまり、社会というマクロな人間集団は日々、
諸個人の意志からは疎外された思いもよらぬ挙動を見せるわけなので、
その規定因子のいくつかを抽出し、
ヨコにつなげば社会的動態論(social dynamics)が展開できると信じます。
そうした動態論に関心の向きに本書をおすすめしておきます。
概念的な広狭からまずは文化(culture)について一言しておきます。
人類学の成果等によると、そもそも文化とは次の2項に分かれます。
即ち、自然文化(文明)としての固有環境での生活技術体系(natural civilization)と、
法社会技術としての現地小社会の統合(social institution)です。
概念的には社会は文化よりも狭く、文化の中に含まれ、やはり進化します。
(詳細は『文化人類学15の理論』など)
その流れはあたかも回路のように還流しており、固有の自然を普遍文化へとつなぐ架け橋なのです。
前者はその点具体的ですが、後者はかなり抽象的です。
そこで、「社会的なもの」を紡ぎ出すということは、高度な抽象性の発揮を意味し、
その一例としては「日本国憲法」などもありえます。
本書はいわゆる「アクターネットワーク理論」の入門書として、
社会的動因間をコネクトすることによって、
一社会の全体像がつかめるようにするという発想に出たものであり、
抽象度・応用度の高い理論だと思います。つまり、社会というマクロな人間集団は日々、
諸個人の意志からは疎外された思いもよらぬ挙動を見せるわけなので、
その規定因子のいくつかを抽出し、
ヨコにつなげば社会的動態論(social dynamics)が展開できると信じます。
そうした動態論に関心の向きに本書をおすすめしておきます。
2020年6月27日に日本でレビュー済み
本書の記述は、初期のLAN(ローカルエリアネットワーク)方式の1つであった「トークンリング」方式を想起させる。
社会ネットワーク理論において、情報ネットワーク理論の実際・記載を、より参照・参考とする動きが、もっと怒っても良いように感じる。
(個々のアクターの「意思」が重要視される場合は、これに限らないかもしれないが)
このANTにしても、人文科学・社会科学の枠内にとどまる応用であるように見えるところは、残念。
特に今後、AIやビッグデータと、人間・非人間の動き・相互作用を記述していく時には、情報科学との融合が必要になってくるであろう。
本書およびANTがその先駆になるかどうかは、まさに「集合知」としての「学際知」をどこまで追求していけるかによるものと感じる。
社会ネットワーク理論において、情報ネットワーク理論の実際・記載を、より参照・参考とする動きが、もっと怒っても良いように感じる。
(個々のアクターの「意思」が重要視される場合は、これに限らないかもしれないが)
このANTにしても、人文科学・社会科学の枠内にとどまる応用であるように見えるところは、残念。
特に今後、AIやビッグデータと、人間・非人間の動き・相互作用を記述していく時には、情報科学との融合が必要になってくるであろう。
本書およびANTがその先駆になるかどうかは、まさに「集合知」としての「学際知」をどこまで追求していけるかによるものと感じる。