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スパイラル 単行本 – 2007/12/1

4.6 5つ星のうち4.6 3個の評価

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購入オプションとあわせ買い

嘘か、真か、幻か。めくるめく男と女の攻防を描いた、
ボーダーレス・サスペンスの傑作だ。----新堂冬樹(作家)

これは男と女が出会ったときにおきる化学反応の一部始終を、
隔離された別荘を舞台に描ききった作品である
----池上冬樹(「asta*」1月号より)

深い森の別荘に閉じ込められた、片桐春彦と東城秋生。出口のない緊張空間で欲望が結びついたとき、二人の運命は衝撃の結末へと動き出す----。

東城秋生は、ある朝目覚めると、見知らぬベッドの上にいた。そこへ現れたのは仕事相手の片桐春彦。片桐は前の晩、泥酔した秋生にせがまれて、自分の別荘に連れてきたというが、秋生には記憶がない。疑念が交錯する中、嵐のため帰路は絶たれてしまう。私は、監禁されているのだろうか?

閉ざされた空間で、二人の危険な駆け引きがはじまる----。

気鋭の著者による、渾身の書き下ろし小説

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商品の説明

著者からのコメント

if
このような状況に追い込まれたら、あなたならどうしますか?

男と女の心理の相違。己の想像力が及ぶ領域。他者とは、真の意味で理解し合えるのか。
この小説のテーマは、そんな様々なクェスチョンです。
もしも、あなたがこの状況に遭遇したなら、どのように感じ、どのように想像し、どのような行動をとるでしょうか。

抜粋

   1 迷路

     Sat.

 閉じた瞼の裏が、赤く発光していた。体内を侵略するような強さだった。
 少しずつ目を開けた。その睫毛の隙間から、今度は透明な白が飛び込んできた。
 東城秋生は、光のほうに視線を動かした。窓から太陽光が降り注いでいた。その眩しさに一瞬、眉を顰めた。
 横になった躰を支えているものは、いつもと少し感触が違っていた。背中や腰に感じる強いスプリング。わずかに湿ったシーツ。マットレスからは微かに黴の匂いがする。広さからするとダブルベッドのようだ。
 自分の部屋ではなかった。
 上半身を起こすと、痛みがこめかみを刺した。鉛を詰め込んだように頭が重い。頭骨の内側に、何か固いものがぶつかる感覚がある。
 ここは、どこなのだろう----。
 ゆっくりと辺りを見回した。視界はまだ、曇りガラス越しに見るようにぼんやりとしている。
 アンティーク調の壁紙。窓の隅に纏められた、黒いベルベットのカーテン。古びたトルコ調柄の絨毯。他には何もなかった。
 発光する視界の中で、見覚えのあるものを見つけた。枕元に置かれた、A4サイズの書類が入る黒革のバッグ。壁のコートハンガーに掛けられている、ライトグレーのパンツスーツと黒いブラウス。どちらも自分のものだ。
 秋生は自分の躰を見た。黒いキャミソール型のインナー、ブラジャーとショーツ。身に着けているのは、それだけだった。
 どういう状況におかれているのか、全く理解ができなかった。ここでこうして眠るまでの経緯に、記憶はなかった。なぜ、自分はここにいるのか。
 突然、鼓膜に音が忍び込んだ。ドアをノックする音。
「目が覚めた?」
 男の声。振り返った。
 ドアの前に人影があった。秋生は視線を上げ、その顔に焦点を合わせた。それは、よく知っている人物だった。
 片桐春彦、仕事の相手。昨夜、この男と飲んでいた。金曜の夜、六本木のバーで。
 秋生は肩まで布団を掛け直した。咄嗟のことに言葉が出なかった。
 片桐は、四十歳にしては引き締まった体躯をしていた。無駄を嫌うような躰に、品のいい小さな顔がついている。そしてその顔はいつも、柔らかさと鋭さを併せ持っていた。共存する対極の印象。決して美形でもスタイルがいいわけでもなかった。だが、どこか人を惹き付ける雰囲気のある男。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ ポプラ社 (2007/12/1)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2007/12/1
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 222ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 459110009X
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4591100097
  • カスタマーレビュー:
    4.6 5つ星のうち4.6 3個の評価

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カスタマーレビュー

星5つ中4.6つ
5つのうち4.6つ
3グローバルレーティング

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上位レビュー、対象国: 日本

2008年1月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
人間(男女)の心理というものは、かくも複雑で微妙で不安定なものなのか....。
人間関係というものは、一見安定した関係を維持していても、実際はこんなものなのかも知れない。
小説としては、一気に読みきれる軽快さが感じられるが、その人間心理の動きをリアルに浮き彫りにする描写力には、とても感心した。
また、作者自身の人生観、人間観をも垣間見たような気がする。
やはり、この「複雑で微妙で不安定さ」こそが、真理なのかもしれない。
読者各位の人生観も、一考の余地ありでは?
5人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2007年12月13日に日本でレビュー済み
小説前半から主人公の秋生にイラつかされてしまいました。
その上、秋生だけでなく相手の片桐にも嫌悪感を覚える始末。
実はこの感覚こそ、作者の術中にはまってしまった証なのでは?と思わされることに。
気が付けば、秋生の心理状態と片桐言動1つ1つから目が離せない。
中盤以降からは、もう止めることができず一気に読みきってしまいました。
あれだけ登場人物にムカついていたにも関わらず、この読後感の良さはなんなのだろう?
6人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2007年12月6日に日本でレビュー済み
なぜ、ワインを用意してから読まなかったのかと、ひどく後悔した。
もしくは、なぜ、家にはワインがないのだろうと。

444/222P の小説である。
2回読んでこそ、この物語は完結するからである。
巧みな表現で 丁寧に綴られている文章の中、主人公の不安と希望が
繰り返し、酔いのように読み手を翻弄するのだ。

片桐と秋生の関係は一見、大人で常にゲームのよう。

しかし、ゲームの終了はいつなのか、どんな結末が待っているのか
さっぱり分からず、まるで薄氷の上にいるような
スリリングでギリギリの駆け引きに、どんどん取り込まれてしまうのだ。
作者は、まったくいいタイトルをつけたものだと思う。

読み進めていく途中、そのスリリングな駆け引きをどう受け取るかは
読み手の生き様によって、大きく変わるに違いない。

もし、あなたにパートナーがいるならば、是非結末の前に
感想を述べあうといい。

必ず、それぞれの人生が投影されている事に、
驚きとおもしろさを感じるだろう。

もし、これを読んでこの本を手にする人は、ワインを用意してから
読むのだろうか?
その事が、ちょっと悔しくて羨ましい。
7人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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