ボッシュシリーズ1作目「ナイトホークス」2作目「ブラックアイス」と順番に読み進めてきていますが、3作目の本作は、これまでの最高傑作ではないでしょうか。非常に面白いです。
Amazonプライムのテレビドラマの面白さにハマり、次回シーズンが始まるまでの待ち遠しさを原作を読むことで埋めようと思い読み始めた本シリーズですが、この三作目にしてテレビドラマを大きく上回る面白さを味わうことができました。
テレビドラマの脚本には、原作者であるマイクル・コナリーも参加しているとのことで、原作をそのままドラマ化することなく、いくつもの作品の要素をとりこんで独自のドラマとしていることから、ドラマを見ているからといって、原作のストーリー展開がよめて興ざめするということは全くなく、かえってテレビドラマとの違いを楽しみながら読み進めることができます。
特に、登場する人物設定に大きな違いがあったりして、その驚きが逆に新鮮で面白いです。
本作「ブラックハート」では、ボッシュが民事裁判の被告となり法廷でのやり取りが行われるというリーガルサスペンス的展開に、同時進行で進む連続殺人事件を絡めてくるあたりが非常に巧く、登場人物もそれぞれキャラクターがたっており、グイグイと物語にのめりこんでいけます。
アメリカの裁判では「正義」と「金」は、双方とも同じものを指しているがゆえ交換可能だという。ゆえに必ずしも「正義」が勝つとは言えないため、先が読めません。
「怪物と戦うものは誰であれ、その過程において、自分が怪物とならぬよう気をつけねばならぬ。深淵を覗き込むとき、その深淵も逆に見つめ返しているのだ」というニーチェの言葉を引用し、ボッシュは深淵に落ち込み怪物になったのだと主張する原告側代理人弁護士。
このニーチェの引用はお見事です。
法廷でのやりとりを通じてボッシュ個人の心の奥底に触れる展開に、マイクル・コナリーの巧さを感じさせます。
また、本作では、前作に引き続き、ボッシュが付き合うようになった女性シルヴィアが登場します。
彼女は、自分がボッシュに対してどこまで訊ねてもいいのかという限界を心得ており、ボッシュにとっても心からくつろげる存在です。
43歳のボッシュと8歳年下のシルヴィア。
この大人の関係が、ボッシュの抱える心の問題を浮き彫りにしてくれます。
このボッシュシリーズの面白さは、事件解決の道筋とあわせ、ボッシュの心の淵を追体験するという部分にもあるように感じます。
本作で、このシリーズに完全にはまりました。
今になってようやく知ったボッシュシリーズ、すでに多くの作品が発表されており、これからこつこつと読んでいくのがとても楽しみになってきました。
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ブラック・ハート 上 (扶桑社ミステリー コ 7-4) 文庫 – 1995/9/1
- 本の長さ344ページ
- 言語日本語
- 出版社扶桑社
- 発売日1995/9/1
- ISBN-104594018181
- ISBN-13978-4594018184
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登録情報
- 出版社 : 扶桑社 (1995/9/1)
- 発売日 : 1995/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 344ページ
- ISBN-10 : 4594018181
- ISBN-13 : 978-4594018184
- Amazon 売れ筋ランキング: - 416,899位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2021年5月21日に日本でレビュー済み
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2010年10月19日に日本でレビュー済み
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ロス市警の孤高の刑事、ハリー・ボッシュの活躍を描くシリーズ第3作。
第1作目「ナイトホークス」で、少し触れられていた「ドールメイカー事件」の全容が本作品で遂に明らかとなります。
11人の女性を殺し、死体に化粧を施すという「ドールメイカー事件」は、容疑者ノーマン・チャーチをボッシュ刑事が射殺したことで、決着したものと思われていた。
ところが、4年後、ノーマンの妻が夫は無実だと告訴。
ボッシュ刑事は法廷に呼び出されることになる。
そんな折、警察に真犯人を名乗る人物のメモが届く。
しかも、そのメモのとおりに新たな死体が発見されたのだった。コンクリート詰めのブロンドの女性−−コンクリート・ブロンド(原題)が。
ドールメイカー事件の真犯人は誰か? という謎を冒頭で提示した本作品は、裁判と捜査が同時並行で進むという展開を取ることで、犯人探しの興味に併せて、裁判の行方はどうなるのか、という興味でも読者を引っ張っていきます。
特に、裁判が刑事裁判ではなく、民事裁判であることにも注目です。
ボッシュ刑事が出廷しているので、彼が有罪か無罪かを争っているようにも見えるのですが、この告訴は、ロサンジェルス市(ロス市警)が市民(ノーマン・チャーチ)の人権侵害をしたのではないかということで、市に賠償責任があるかどうかを争っているのです。
物語後半には、裁判の判決も下されますが、民事裁判であることを踏まえたひねりのある結末になっていることに、大いに納得しました。
もちろん、真犯人は誰かを巡っての展開は二転三転し、最後まで読者を掴んで離さないことは言うまでもありません。
この作品は、1996年の宝島社「このミステリーがすごい!」の海外編第4位にランキングしており、これ以降、著者の作品がしばしばランクインするようになっていったことからも、このシリーズの人気を確固たるものにした作品と言えるのではないかと思います。
第1作目「ナイトホークス」で、少し触れられていた「ドールメイカー事件」の全容が本作品で遂に明らかとなります。
11人の女性を殺し、死体に化粧を施すという「ドールメイカー事件」は、容疑者ノーマン・チャーチをボッシュ刑事が射殺したことで、決着したものと思われていた。
ところが、4年後、ノーマンの妻が夫は無実だと告訴。
ボッシュ刑事は法廷に呼び出されることになる。
そんな折、警察に真犯人を名乗る人物のメモが届く。
しかも、そのメモのとおりに新たな死体が発見されたのだった。コンクリート詰めのブロンドの女性−−コンクリート・ブロンド(原題)が。
ドールメイカー事件の真犯人は誰か? という謎を冒頭で提示した本作品は、裁判と捜査が同時並行で進むという展開を取ることで、犯人探しの興味に併せて、裁判の行方はどうなるのか、という興味でも読者を引っ張っていきます。
特に、裁判が刑事裁判ではなく、民事裁判であることにも注目です。
ボッシュ刑事が出廷しているので、彼が有罪か無罪かを争っているようにも見えるのですが、この告訴は、ロサンジェルス市(ロス市警)が市民(ノーマン・チャーチ)の人権侵害をしたのではないかということで、市に賠償責任があるかどうかを争っているのです。
物語後半には、裁判の判決も下されますが、民事裁判であることを踏まえたひねりのある結末になっていることに、大いに納得しました。
もちろん、真犯人は誰かを巡っての展開は二転三転し、最後まで読者を掴んで離さないことは言うまでもありません。
この作品は、1996年の宝島社「このミステリーがすごい!」の海外編第4位にランキングしており、これ以降、著者の作品がしばしばランクインするようになっていったことからも、このシリーズの人気を確固たるものにした作品と言えるのではないかと思います。
2020年2月8日に日本でレビュー済み
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ハリー・ボッシュ・シリーズ第三作目『ブラック・ハート』上巻を読み終えた。
11人もの女性をレイプして殺した揚げ句、死に顔に化粧を施すことから”ドールメーカー(人形造りな件と呼ばれた)を、ある娼婦のタレコミで知り、急いで容疑者のアパートへ応援もなく一人で行くことになる。
容疑者の部屋のドアをけ破り「フリーズ」と叫んだのに、その男が枕の下へ手を突っ込み何か取り出そうとした。
ボッシュは、その男が銃を手にしたと思い身の危険を感じて発砲した。
その男が手にしていたのは鬘だった。
その部屋には、その男が犯人である証拠が多くあり無実の男に発砲したことにはならなかった。
が、当然ながら警察内務監査の調べを受けたボッシュは、単独行動が問題となり停職処分のうえハリウッド警察へ左遷されていた。
それから4年過ぎた。
こともあろうに犯人の妻が夫は無実だったとボッシュを告訴したのである。
原告側弁護士は、やりてのデボラ・チャーチであり、ボシュの弁護を担当するのが司法務局次長ロッド・ベルクである。
チャーチの巧妙な仕掛けをほどこした執拗な質問で証言者を追求する描写には、ほとんどの読者がこの女が憎たらしくなるだろう。
これに対して未熟で稚拙な弁護をする役人弁護士のベルクには情けなくなるのである。
やきもきするボッシュの心中も穏やかではない。
本書の読みどころがこの法廷でのシーンである。
マイクル・コナリーは、如何にしてこのように読者を虜にするストーリーを考えだすのだろうか?
この法廷シーンがのちにリンカーン弁護士シリーズを生み出すことに繋がったのではないだろうか、と思いながら本書『ブラック・ハート』上巻を読み終えた。
11人もの女性をレイプして殺した揚げ句、死に顔に化粧を施すことから”ドールメーカー(人形造りな件と呼ばれた)を、ある娼婦のタレコミで知り、急いで容疑者のアパートへ応援もなく一人で行くことになる。
容疑者の部屋のドアをけ破り「フリーズ」と叫んだのに、その男が枕の下へ手を突っ込み何か取り出そうとした。
ボッシュは、その男が銃を手にしたと思い身の危険を感じて発砲した。
その男が手にしていたのは鬘だった。
その部屋には、その男が犯人である証拠が多くあり無実の男に発砲したことにはならなかった。
が、当然ながら警察内務監査の調べを受けたボッシュは、単独行動が問題となり停職処分のうえハリウッド警察へ左遷されていた。
それから4年過ぎた。
こともあろうに犯人の妻が夫は無実だったとボッシュを告訴したのである。
原告側弁護士は、やりてのデボラ・チャーチであり、ボシュの弁護を担当するのが司法務局次長ロッド・ベルクである。
チャーチの巧妙な仕掛けをほどこした執拗な質問で証言者を追求する描写には、ほとんどの読者がこの女が憎たらしくなるだろう。
これに対して未熟で稚拙な弁護をする役人弁護士のベルクには情けなくなるのである。
やきもきするボッシュの心中も穏やかではない。
本書の読みどころがこの法廷でのシーンである。
マイクル・コナリーは、如何にしてこのように読者を虜にするストーリーを考えだすのだろうか?
この法廷シーンがのちにリンカーン弁護士シリーズを生み出すことに繋がったのではないだろうか、と思いながら本書『ブラック・ハート』上巻を読み終えた。
2019年3月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今回は過去の2作品とは違い、裁判のシーンが多く、また違う楽しみ方をできました。
Amazonオリジナルシリーズの冒頭も裁判から始まりますが、恐らくこの本の裁判がベースとなっているのでは、と思いました。
Amazonオリジナルシリーズの冒頭も裁判から始まりますが、恐らくこの本の裁判がベースとなっているのでは、と思いました。
2020年8月5日に日本でレビュー済み
1作目『ナイトホークス』でボッシュが左遷された原因となった事件がちらっと説明されているが、本作では事件から4年経て、殺された犯人の家族から訴訟を起こされボッシュが裁判にかけられるところから始まる。
上巻は裁判の場面が多く、下巻はその連続殺人事件の中には別の模倣犯が起こした事件が混在している可能性が生じたことから、その犯人を追うところが中心。
結末は二転三転の大どんでん返し。ちょっとしつこさを感じつつも、読み応えがあった。さすがだ。
本作では、2作目『ブラック・アイス』で知り合ったシルヴィアが恋人になっており、ロマンスも描かれている。なので、このボッシュ・シリーズはやはり順番に読んだ方が理解しやすそう。
ただ、シルヴィアは繊細でちょっとめんどくさい性格だなと、女の私ですら思う。積極的なところはいいが。
表紙カバーのフォトが上下巻でつながっており、エロティックで素敵だ。
ラストシーンはよかった。
“心の深淵”がテーマだと感じた。誰しもが多かれ少なかれ自分だけの秘密をもっているものだし、それをさらけ出す必要はない。ちょっとしたものなら…、犯罪でないのなら…。
上巻は裁判の場面が多く、下巻はその連続殺人事件の中には別の模倣犯が起こした事件が混在している可能性が生じたことから、その犯人を追うところが中心。
結末は二転三転の大どんでん返し。ちょっとしつこさを感じつつも、読み応えがあった。さすがだ。
本作では、2作目『ブラック・アイス』で知り合ったシルヴィアが恋人になっており、ロマンスも描かれている。なので、このボッシュ・シリーズはやはり順番に読んだ方が理解しやすそう。
ただ、シルヴィアは繊細でちょっとめんどくさい性格だなと、女の私ですら思う。積極的なところはいいが。
表紙カバーのフォトが上下巻でつながっており、エロティックで素敵だ。
ラストシーンはよかった。
“心の深淵”がテーマだと感じた。誰しもが多かれ少なかれ自分だけの秘密をもっているものだし、それをさらけ出す必要はない。ちょっとしたものなら…、犯罪でないのなら…。
2016年3月5日に日本でレビュー済み
主人公の刑事が無実の人を殺したとして遺族に訴えられ・・・というお話。
今回は以前の作品に言及されていた猟奇殺人事件を捜査しながら、その裁判で争うことになった刑事ハリー・ボッシュの活躍を描いたお話でした。という訳で連続殺人のサイコ・スリラーと裁判のリーガル・サスペンスを同時に楽しめるなかなか奥の深い作品になっており大いに読ませます。
作品の枝葉の部分でも前作で仲の良くなった女性を絡めたり、主人公のボッシュの過去が裁判で争われたりと作品に厚みを持たせており、シリーズを愛読している者としては格好の展開で楽しめました。
ハードボイルド好きな評論家の池上冬樹氏が著者のコナリーとこのボッシュのシリーズをあまり好きではないそうですが、池上氏が嫌いだと売れない事が多いらしいと聞きますが、コナリーの場合は累計で100万部位売れているということでかなり健闘していると思います。
その嫌いな理由がジェイムズ・エルロイに似ている、類型的、という理由らしいですが、確かにボッシュのキャラとエルロイの出自が似ていますが、これは多分偶然だと思うのであまり深く考えない方がいいと思います。エルロイの小説から情念や灰汁を抜き取って読み易くした様な感じがするのも真実ですが・・・。
ともあれ、本シリーズがハードボイルドの歴史に残るのは確実と思いました。
現代ハードボイルドの力作。機会があったら是非。
今回は以前の作品に言及されていた猟奇殺人事件を捜査しながら、その裁判で争うことになった刑事ハリー・ボッシュの活躍を描いたお話でした。という訳で連続殺人のサイコ・スリラーと裁判のリーガル・サスペンスを同時に楽しめるなかなか奥の深い作品になっており大いに読ませます。
作品の枝葉の部分でも前作で仲の良くなった女性を絡めたり、主人公のボッシュの過去が裁判で争われたりと作品に厚みを持たせており、シリーズを愛読している者としては格好の展開で楽しめました。
ハードボイルド好きな評論家の池上冬樹氏が著者のコナリーとこのボッシュのシリーズをあまり好きではないそうですが、池上氏が嫌いだと売れない事が多いらしいと聞きますが、コナリーの場合は累計で100万部位売れているということでかなり健闘していると思います。
その嫌いな理由がジェイムズ・エルロイに似ている、類型的、という理由らしいですが、確かにボッシュのキャラとエルロイの出自が似ていますが、これは多分偶然だと思うのであまり深く考えない方がいいと思います。エルロイの小説から情念や灰汁を抜き取って読み易くした様な感じがするのも真実ですが・・・。
ともあれ、本シリーズがハードボイルドの歴史に残るのは確実と思いました。
現代ハードボイルドの力作。機会があったら是非。
2021年1月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
重いどうりの感じでストーリーが展開していく。登場人物のキャラクターはもっと考えて欲しい。
2007年4月21日に日本でレビュー済み
マイクル・コナリーの<ハリー・ボッシュ・サーガ>シリーズ第3弾。
’95年、「このミステリーがすごい!」海外編第4位にランクインしている。
本書あたりから、このシリーズは“90年代を代表するハードボイルド”といわれるようになってくる。
ストーリーは、1作目2作目でも語られていた、ボッシュがハリウッド署に左遷されるきっかけとなった、4年前のドールメイカー事件の容疑者射殺シーンから始まる。
ボッシュは今、容疑者の未亡人から「夫は無実であった」との訴訟を起こされている。
おりしも、ドールメイカー事件に酷似した殺人事件が発見される。容疑者は無実だったのか・・・。それとも、模倣犯の仕業か・・・。この件も含めて、原告側の辣腕女性弁護士チャンドラーとボッシュの激しい法廷闘争が繰り広げられる。そして法廷場面と併行してボッシュたちの現在の事件の捜査活動が描かれる。
ちょうど文庫上巻のラスト近くで大きな転回が見られ、ボッシュたちが追う現在の事件も二転三転して、衝撃の真犯人・真相へと、一気呵成に物語は進んでゆく。
本書はリーガルサスペンスの要素に加えて、現在進行形の事件を追う、緊迫感にあふれた警察小説でもある。さらに両方に、ボッシュの恋人や、自身の過去のまつわる孤独の影が色濃く関係してくるのだ。
魅力的な謎があり、困難な事件を捜査し、活劇があって、どんでん返しの末、主人公が勝利する、というだけに終わらない感動がこのシリーズにはある。
読者は、孤高の人ハリー・ボッシュの姿を見て、独特の厳しさと、濃い寂寥感と、深い感動に満たされてしまうのである。「あなたはとても大変な戦いを送っているわ、ハリー。つまり、あなたの人生というものは苦闘の連続なのよ。ひとりの警官として。」
’95年、「このミステリーがすごい!」海外編第4位にランクインしている。
本書あたりから、このシリーズは“90年代を代表するハードボイルド”といわれるようになってくる。
ストーリーは、1作目2作目でも語られていた、ボッシュがハリウッド署に左遷されるきっかけとなった、4年前のドールメイカー事件の容疑者射殺シーンから始まる。
ボッシュは今、容疑者の未亡人から「夫は無実であった」との訴訟を起こされている。
おりしも、ドールメイカー事件に酷似した殺人事件が発見される。容疑者は無実だったのか・・・。それとも、模倣犯の仕業か・・・。この件も含めて、原告側の辣腕女性弁護士チャンドラーとボッシュの激しい法廷闘争が繰り広げられる。そして法廷場面と併行してボッシュたちの現在の事件の捜査活動が描かれる。
ちょうど文庫上巻のラスト近くで大きな転回が見られ、ボッシュたちが追う現在の事件も二転三転して、衝撃の真犯人・真相へと、一気呵成に物語は進んでゆく。
本書はリーガルサスペンスの要素に加えて、現在進行形の事件を追う、緊迫感にあふれた警察小説でもある。さらに両方に、ボッシュの恋人や、自身の過去のまつわる孤独の影が色濃く関係してくるのだ。
魅力的な謎があり、困難な事件を捜査し、活劇があって、どんでん返しの末、主人公が勝利する、というだけに終わらない感動がこのシリーズにはある。
読者は、孤高の人ハリー・ボッシュの姿を見て、独特の厳しさと、濃い寂寥感と、深い感動に満たされてしまうのである。「あなたはとても大変な戦いを送っているわ、ハリー。つまり、あなたの人生というものは苦闘の連続なのよ。ひとりの警官として。」