純文学作家・福永武彦が正体を隠し、加田伶太郎の名で書いた短編ミステリ全てのほか、以前にまとめられた際の序文や解説文も収録されています。
この序文や解説がとてもおもしろい。中には、福永武彦が加田伶太郎の本のために書いた文、ようは一人二役、自分で自分の本のために書いた序文などもあって、このへんの遊び心にうれしくなると同時に、作者のミステリに対する思いや好みなどもわかって、とても興味深い。
作品のほうは、その序文にあるようにガチガチの本格「推理」小説、人間が描かれていないなどの悪い意味で使われる場合の「パズラー」に分類されるものですが、どれも謎・調査と推理・解決とビシッと決まっていて、読んでいて気持ちよい。
文学者が遊びの心を持ちながらミステリに挑戦した作品集といえます。決して文学者が片手間に書いたミステリなどではありません。
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加田伶太郎全集 (扶桑社文庫 S 5-1) 文庫 – 2001/2/1
福永 武彦
(著)
- 本の長さ588ページ
- 言語日本語
- 出版社扶桑社
- 発売日2001/2/1
- ISBN-104594030807
- ISBN-13978-4594030803
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登録情報
- 出版社 : 扶桑社 (2001/2/1)
- 発売日 : 2001/2/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 588ページ
- ISBN-10 : 4594030807
- ISBN-13 : 978-4594030803
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,078,600位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2011年6月10日に日本でレビュー済み
桃源社版で読んだ。
もちろん、本文庫版も購入し、再読した。
桃源社版は箱入り布装の豪華なもので、重く、しかも古くて活字が小さいため、再読には適していない。
さて、本作は純文学作家福永武彦の書いたミステリ、SF、そして随筆の集成である。
一応、ミステリ作品は、本書に収載されているのが全てのはずである。
何と言っても、その作品の完成度の高さに驚く。
もちろん純文学作家だから、文章や作品構成のうまさは当然なのだが、ミステリとしても一級品の出来なのだ。
不可思議な謎とその論理的な解決という、ミステリの形式がきちんと守られている。
まずは「完全犯罪」。
密室殺人というだけでも嬉しいのだが、これを名探偵が安楽椅子探偵するというのが、実にうれしい。
そして、この名探偵の名前がめいたんていのアナグラムというのも、遊び心満点で楽しい。
ミステリ、特に本格ミステリは、この遊び心が大事なポイントである。
完成度が高くて、しかも遊び心に満ちているという、まさに本格ミステリのお手本のような作品である。
その後の作品は、しかし、やはり変化を求められたためか、少しずつミステリの軸がシフトしていく。
「眠りの誘惑」など、何が起こっているのか、というのが主軸だったりする。
まあ、そのあたりは、著者がミステリ書きに慣れてきたせいであり、「完全犯罪」は肩に力が入りすぎたものともいえないことはない。
しかし、その妙に肩に力の入った、ガチガチの本格作品が、私は一番好きだ。
本書は、けっして純文学作家の手慰みの作品ではない。
著者が正面からミステリの創作に挑み、そして完成させた珠玉の作品集なのである。
惜しむらくは、全てが短編であることだろう。
できれば、「海市」のような長編作品で、本書のクォリティのミステリを残してもらいたかった。
もちろん、本文庫版も購入し、再読した。
桃源社版は箱入り布装の豪華なもので、重く、しかも古くて活字が小さいため、再読には適していない。
さて、本作は純文学作家福永武彦の書いたミステリ、SF、そして随筆の集成である。
一応、ミステリ作品は、本書に収載されているのが全てのはずである。
何と言っても、その作品の完成度の高さに驚く。
もちろん純文学作家だから、文章や作品構成のうまさは当然なのだが、ミステリとしても一級品の出来なのだ。
不可思議な謎とその論理的な解決という、ミステリの形式がきちんと守られている。
まずは「完全犯罪」。
密室殺人というだけでも嬉しいのだが、これを名探偵が安楽椅子探偵するというのが、実にうれしい。
そして、この名探偵の名前がめいたんていのアナグラムというのも、遊び心満点で楽しい。
ミステリ、特に本格ミステリは、この遊び心が大事なポイントである。
完成度が高くて、しかも遊び心に満ちているという、まさに本格ミステリのお手本のような作品である。
その後の作品は、しかし、やはり変化を求められたためか、少しずつミステリの軸がシフトしていく。
「眠りの誘惑」など、何が起こっているのか、というのが主軸だったりする。
まあ、そのあたりは、著者がミステリ書きに慣れてきたせいであり、「完全犯罪」は肩に力が入りすぎたものともいえないことはない。
しかし、その妙に肩に力の入った、ガチガチの本格作品が、私は一番好きだ。
本書は、けっして純文学作家の手慰みの作品ではない。
著者が正面からミステリの創作に挑み、そして完成させた珠玉の作品集なのである。
惜しむらくは、全てが短編であることだろう。
できれば、「海市」のような長編作品で、本書のクォリティのミステリを残してもらいたかった。