パトQのダルース夫妻シリーズ中の一作。「パズル」シリーズ第三作。「悪女パズル」という邦題は原題そのままだが、言い得て妙である。第二次世界大戦中を舞台にしており、実際、1945年に発表されている。
世界的な富豪女性ロレーヌのネヴァダ州の別荘に、三組の離婚寸前の夫妻、ロレーヌの従兄弟と婚約者、そしてロレーヌの婚約者が集まるという状況の中、女性連続殺人事件が起き、招待されたダルース夫妻が探偵役として活躍するというもの。女性六人vs男性六人の登場人物で、女性だけが次々と殺されるという趣向である。登場する女性達は「悪女」と言う程の強烈な個性は無いのだが、離婚寸前等の状況の作り方や、隠された事実から生まれる複雑な人間関係の設定が巧みで、物語を錯綜化するのに成功している。全体を六部構成にして、各部にその章で殺される女性の名前をタイトルに付けているという稚気も微笑ましい。題名及び連続殺人という設定に反して、戦時中に書かれたものとは思われない程、全編明るいムードが漂っている。作者が、緊迫したサスペンスを狙ったのなら成功とは言えないと思う。これは一人称の語り手ダルースが、妻以外の登場人物には本質的に無関心なため、描写に迫真性を欠く事による。作中に大きなトリックはなく、犯行計画の杜撰さには呆れるが、登場人物間の複雑な関係や愛憎の描写で、読む者の眼を逸らしてしまうのである。この辺が、作者の手腕か。
肩の凝らないパズラーとして楽しい読書タイムが過ごせる佳作。
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悪女パズル (扶桑社ミステリー ク 19-1) 文庫 – 2005/10/1
- 本の長さ380ページ
- 言語日本語
- 出版社扶桑社
- 発売日2005/10/1
- ISBN-104594050484
- ISBN-13978-4594050481
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登録情報
- 出版社 : 扶桑社 (2005/10/1)
- 発売日 : 2005/10/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 380ページ
- ISBN-10 : 4594050484
- ISBN-13 : 978-4594050481
- Amazon 売れ筋ランキング: - 553,139位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2006年6月19日に日本でレビュー済み
読む前から期待が高かったのだが、その期待にものの見事にこたえてくれた作品。
人間関係の中からと物証の中、両面からのアプローチによる謎解き、見事です。
この作品には、黄金時代によくあった、殺人の手法についてのアンチテーゼも含まれているように感じたのだが、これは考えすぎた見方だろうか?
人間関係の中からと物証の中、両面からのアプローチによる謎解き、見事です。
この作品には、黄金時代によくあった、殺人の手法についてのアンチテーゼも含まれているように感じたのだが、これは考えすぎた見方だろうか?
2006年5月13日に日本でレビュー済み
パズルシリーズ第四作!なんですが、前三作は入手困難なので読んでません。でも独立した内容なので問題なく読めました。
次々に殺されていく妻たち…読み進めるとよけいに分からなくなってくる動機。それぞれの夫だけでなく誰もが怪しく見えてきます。
ロレーヌがちょっとエキセントリックで初めはついてくのがやっとでしたが、早く犯人が知りたくて後半は一気に読めました。
パズルと言うだけあって、ぐちゃぐちゃになったピースがラストでぴったり収まる感じが良かったです。
次々に殺されていく妻たち…読み進めるとよけいに分からなくなってくる動機。それぞれの夫だけでなく誰もが怪しく見えてきます。
ロレーヌがちょっとエキセントリックで初めはついてくのがやっとでしたが、早く犯人が知りたくて後半は一気に読めました。
パズルと言うだけあって、ぐちゃぐちゃになったピースがラストでぴったり収まる感じが良かったです。