本書で最も注目すべき記述は、911サバイバーとしてPTSDに苦しみ日本へ帰国した著者が、「きくちゆみ」の依頼で母がホームステイさせた放射能の専門家「ロレーン」の通訳をつとめ、劣化ウラン弾の危険性を訴えて回る箇所にある。通訳の依頼が来た当初は「内容が専門的すぎてちんぷんかんぷんです」（p150）と断ろうとするほどこの分野の素人だったのに、一度通訳した後は「そして真実は恐ろしいものだった」（p154）と信じ込んでしまっているのだ。
「きくちゆみ」「ロレーン」の名前は、奥菜秀次「陰謀論の罠」p12に出てくるし、lauren moret HAARP で検索してみる（HAARPについては、と学会「トンデモ本の世界X」p130参照）のも良いだろう。
著者は多くの著作で、政府は嘘をつく、大手メディアに騙されるな、自らの頭で考え直感で「真実」を見つけろ、と説いている。確かに、政府は嘘をつくことがあるし、大手メディアが間違った報道をしていることもあるだろう。それでも、素人が自らの頭で考えて直感で「真実」を見つけることは危険だと、このエピソードは教えてくれる。「真実」にこだわらず、情報を得るたびに「仮説」をアップデートするくらいに考えるのが良いのではないだろうか。
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