都市を巡る橋爪紳也氏の思考を「タワー」「遊園地」「路地と空間」「ビジネスセンター」「水辺空間」「創造都市」の6項目に分けて展開した書でした。それぞれのテーマに合った写真も結構掲載してありますが、全てモノクロです。
橋爪紳也氏は建築史・都市文化論研究者で、ユニークで貴重な著作を世に問うている方です。今まで取り上げてこなかった対象物を通して、近代の歩みを斬新な視点で調査し、検証していく手法は見事だと思っています。
まず、東京タワーと通天閣と名古屋のテレビ塔の「タワー三兄弟」を取り上げています。
筆者の関心の趣くまま、知られざるタワーの成り立ちや姿が浮かび上がってきました。デジタル放送への全面移行により地上波を送信してきたテレビ塔はその役割を終えることになります。25ページに書かれていますが、「時代遅れの産業遺構となるのではなく、むしろ情報化社会にあって、より多様な情報発信の場」として進化する道筋を述べていました。各都市のランドマークとしての風格と存在ぶりは変わっていませんから。
遊園地がどんどん閉園する中で、企業努力で維持している遊園地の紹介や、遊園地とテーマパークの違いについて述べています。筆者は「首都圏域や京阪神で、あいついで遊園地が閉園している今日の状況は、コニーアイランドに由来する米国流の遊園地のあり方を、少なくともこの国の人々は消費し尽くしたということなのだろう」と結論づけていたのが印象に残りました。
他のテーマへのアプローチも一味違うものでした。堅苦しい学術論文の体裁ではありませんので、一般の読者が読んで理解できる内容です。いずれの項目も興味深い内容ばかりですので、広い意味で都市に関心のある人は手にとられてもよいのではないでしょうか。
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