「毎日新聞」東京版に連載していた「立川志の輔のピーピングふしあなから世間」から代表作を纏めたコラム集。NHKでも長寿番組も持つ志の輔師匠らしく、居住まいを正して教養あるお話を伺いながら笑いの中に浸れる一冊です。志の輔師匠の落語を長年聴いて来ていますが、師匠の新作落語への情熱、品の良い笑い、一人舞台の様に観客を引き込む芸の凄さ、そして毎回期待を裏切らない質の高さ、その秘密を本書で垣間見れます。師匠の落語を聞いているとその質の高さからコラムの質の高さも期待してしまうのでしょうが、忙しい時間の中で締切に追われながら、字数制限のある文章を書くのは至難の業、コラムの中には「もう少し練って頂けた方が」というものもありますが、自分には十分に楽しめました。「鳴かぬなら鳴くのを探そうホトトギス」のコラム等は、文章としても、さすが志の輔師匠と感じてしまいます。
落語を聴くのに最も適した「寄席」という場所と違う空間を探しに行かなければならなった立川流の噺家たち。そして、逆に新たな空間に適した落語をこしらえざるを得ず、その面白さにハマった志の輔師匠。そして、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した際に亡くなった玉置宏さんから「初めっから寄席に出ない経歴だから、ひっとして伝統というものの端の方にいるなんて思っていたかもしれないけれど、それはとんでもない思い違いだと教えてくれた賞なんだよ」と言われ、感激される師匠。この辺りが、教養高く一人芝居的な志の輔らくごの自負だし秘密なのかなと思いました。師匠談志が亡くなる年齢まであと10年。志の輔師匠の落語もさらに変わり、志の輔師匠らしい個性を一層極めた落語の世界を作り上げて頂けたらと思います。
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