驚いた。談志の『現代落語論』(1965年)、志らくさんの『全身落語家読本』(2000年)に続き、立川流からまた理論的に突出した落語論が提示された。しかも、志らくさんの論があくまでも談志の「教え」に基づき、それをさらに独自展開させたものであったのに対し、本書は、いちから徹底して考え直している感じがする。落語を聴き、自ら演じ、あるいは創作して演じ、お客さんの反応を観察するなかで、落語とは何なのかを、自らの身体と頭脳で、改めて問い直している印象があるのだ。
嬉しかった。著者が評者とほぼ同世代だからである。著者の笑いに対する感性や、他のポップカルチャーに対する構えや、何より落語(家)に対するスタンスが、ものすごい共感できてしまう。自分と近い年齢の落語家で、「こいつ、わかってんなー」と思える人を、はじめて見つけられたような気がする。現代の他の笑いの表現と競合できなければ厳しい。だが一方で、落語の固有性に対するこだわりがなければ、意味がない。そうした強い思いから発せられる彼の落語論や、まくらや噺の創作は、斬新で面白いだけでなく、今後もこの落語家さんと同じ時代を生きることへの期待感すらわかせてくれる。
本書の読後すぐに、ネットにあがっている彼の創作ネタ、「ぞおん」を聴いた。技術はいかにも未熟である。だが、噺の内容は文句なく素晴らしい。「番頭さんがゾーンに入ってます」(笑)。発想としても、フレーズとしても、いい。落語の落語たるゆえんを追求し、その本質に従った爆笑ネタを創造する才覚をもった彼の未来には、おそらく、談志の語っていたイリュージョンの世界のその先に届く芸が、あるいは待っているのではないか。

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現在落語論 単行本 – 2015/12/18
立川 吉笑
(著)
ついに出た、「落語論」の新機軸(イノベーション)!!
ユニークな活動で注目される談志の孫弟子が、落語の面白さをイチからお教えします。
「立川談志の『現代落語論』からちょうど半世紀というこの節目に、あの頃の家元と同じく30歳前後の自分が『現在落語論』というタイトルでこの本を書く。
16歳で落語の門を叩き、すぐに頭角を現し、27歳で真打となり、メディアでも売れに売れて落語界に確固たる地位を築いていた当時の談志と、26歳で落語の門を叩き、二ツ目になったばかりの自分とを比べることなどできるわけがない。
ただ、現在を生きる落語家であるぼくには、これまでの先輩方がそうしてこられたように、受け継がれてきた落語の面白さを、色あせないようにたえず磨きつづけていく責任があるのだ」
――「まえがき」より
<目次>
●第一章 落語とはどういうものか
何にもないから何でもある
落語の二面性── 伝統性と大衆性
古典落語と新作落語
マクラは何のためにあるのか
●第二章 落語は何ができるのか
省略の美学
使い勝手のよさ
古典落語を検討する
●第三章 落語と向き合う
志の輔の新作落語
談笑の改作落語
擬古典という手法
ギミックについて
●第四章 落語家の現在
吉笑前夜
「面白いこと」への道
落語界の抱える二つのリスク
落語の未来のために
ユニークな活動で注目される談志の孫弟子が、落語の面白さをイチからお教えします。
「立川談志の『現代落語論』からちょうど半世紀というこの節目に、あの頃の家元と同じく30歳前後の自分が『現在落語論』というタイトルでこの本を書く。
16歳で落語の門を叩き、すぐに頭角を現し、27歳で真打となり、メディアでも売れに売れて落語界に確固たる地位を築いていた当時の談志と、26歳で落語の門を叩き、二ツ目になったばかりの自分とを比べることなどできるわけがない。
ただ、現在を生きる落語家であるぼくには、これまでの先輩方がそうしてこられたように、受け継がれてきた落語の面白さを、色あせないようにたえず磨きつづけていく責任があるのだ」
――「まえがき」より
<目次>
●第一章 落語とはどういうものか
何にもないから何でもある
落語の二面性── 伝統性と大衆性
古典落語と新作落語
マクラは何のためにあるのか
●第二章 落語は何ができるのか
省略の美学
使い勝手のよさ
古典落語を検討する
●第三章 落語と向き合う
志の輔の新作落語
談笑の改作落語
擬古典という手法
ギミックについて
●第四章 落語家の現在
吉笑前夜
「面白いこと」への道
落語界の抱える二つのリスク
落語の未来のために
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社毎日新聞出版
- 発売日2015/12/18
- 寸法13 x 1.9 x 18.8 cm
- ISBN-104620323454
- ISBN-13978-4620323459
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商品の説明
著者について
立川吉笑(たてかわ・きっしょう)
落語家。1984年生まれ、京都府出身。高校卒業後、お笑い芸人を目指し活動。2010年11月、立川談笑に入門。わずか1年5ヵ月のスピードで二ツ目に昇進。「立川流は〈前代未聞メーカー〉であるべき」をモットーに、気鋭の若手学者他をゲストに迎えた『吉笑ゼミ』の主宰や、2015年には両国国技館で高座を務め(J-WAVE開局25周年企画)、全国ツアーも開催するなど、業界内外の注目を集める。メディアへの露出も増えており、現在、NHK Eテレ『デザインあ』、スカパー! 寄席チャンネル『立川流 ver.3.01』などにレギュラー出演中。
落語家。1984年生まれ、京都府出身。高校卒業後、お笑い芸人を目指し活動。2010年11月、立川談笑に入門。わずか1年5ヵ月のスピードで二ツ目に昇進。「立川流は〈前代未聞メーカー〉であるべき」をモットーに、気鋭の若手学者他をゲストに迎えた『吉笑ゼミ』の主宰や、2015年には両国国技館で高座を務め(J-WAVE開局25周年企画)、全国ツアーも開催するなど、業界内外の注目を集める。メディアへの露出も増えており、現在、NHK Eテレ『デザインあ』、スカパー! 寄席チャンネル『立川流 ver.3.01』などにレギュラー出演中。
登録情報
- 出版社 : 毎日新聞出版 (2015/12/18)
- 発売日 : 2015/12/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 240ページ
- ISBN-10 : 4620323454
- ISBN-13 : 978-4620323459
- 寸法 : 13 x 1.9 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 246,100位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年6月29日に日本でレビュー済み
Youtubeで落語に興味を持ち、最近になって末広亭と池袋演芸場に行った初心者です。
この本を読んでみますと、古典や枕、座布団についてなど、当たり前だと思っている事に改めて気づかさせてくれます。
落語は演者だけでなく、客も作り上げていくものなんだなと思いました。
この本を読んでみますと、古典や枕、座布団についてなど、当たり前だと思っている事に改めて気づかさせてくれます。
落語は演者だけでなく、客も作り上げていくものなんだなと思いました。
2019年10月5日に日本でレビュー済み
立川流の若手が集まった落語会で初めて聴いた吉笑さんは、同時に演者であった談志師匠最後の弟子の談吉さんともまた異なる異空間へと誘うような噺をしており、異彩を放っていたのが印象的だった。
著者は、いわゆる四天王といわれる立川流を本格派落語集団として盛り上げてきた師匠方の次の世代にあたる。
家元談志亡き今、これからの落語のあり方や、そして吉笑さん自身の自己分析を徹底的に研究し尽くしながら、現代においてマッチする噺家としてどう、噺をつくればよいのか、演じればよいのか追求している。
天才肌かとおもっていたけど、才能は勿論だが本書を読んで相当な努力家であることもわかった。
つつみかくさず実直な想いが綴られているとも感ぜられ好感ももてる。
大師匠談志の名著へのオマージュのようなタイトルだから手に取りにくい人もあるかもしれないが、
落語入門者、高座へ足を運んだことのない方にこそ読んでもらい、落語に親しみを持って貰える、そんな一冊にもなりえる。
立川流は筆が立つ噺家が多いが著者もその中の1人で、ここに新たな素晴らしい本が世に放たれた。
著者は、いわゆる四天王といわれる立川流を本格派落語集団として盛り上げてきた師匠方の次の世代にあたる。
家元談志亡き今、これからの落語のあり方や、そして吉笑さん自身の自己分析を徹底的に研究し尽くしながら、現代においてマッチする噺家としてどう、噺をつくればよいのか、演じればよいのか追求している。
天才肌かとおもっていたけど、才能は勿論だが本書を読んで相当な努力家であることもわかった。
つつみかくさず実直な想いが綴られているとも感ぜられ好感ももてる。
大師匠談志の名著へのオマージュのようなタイトルだから手に取りにくい人もあるかもしれないが、
落語入門者、高座へ足を運んだことのない方にこそ読んでもらい、落語に親しみを持って貰える、そんな一冊にもなりえる。
立川流は筆が立つ噺家が多いが著者もその中の1人で、ここに新たな素晴らしい本が世に放たれた。
2017年3月22日に日本でレビュー済み
油断できない高座を務める筆者のことだ。
タイトルとあとがきは、読者に提示されたギミックであろう。
著者にとっての現在は読者にとっては過去であるからだ。
表現方法として筆者は「ぼく」という一人称を選んだ。
この文体で問題意識というか、
疑問というか、迷いというか、決意を散りばめているのだから、
これはもう「落語論」と銘打たれてはいるが
若い二つ目落語家を主人公にした青春小説として読める。
青春には彷徨と疾走、
暴走と蹉跌は付き物だ。
若者は相反するものを抱え込まずにはいられない。
華麗なる暴走を筆者に期待しているのだ。
タイトルとあとがきは、読者に提示されたギミックであろう。
著者にとっての現在は読者にとっては過去であるからだ。
表現方法として筆者は「ぼく」という一人称を選んだ。
この文体で問題意識というか、
疑問というか、迷いというか、決意を散りばめているのだから、
これはもう「落語論」と銘打たれてはいるが
若い二つ目落語家を主人公にした青春小説として読める。
青春には彷徨と疾走、
暴走と蹉跌は付き物だ。
若者は相反するものを抱え込まずにはいられない。
華麗なる暴走を筆者に期待しているのだ。
2015年12月27日に日本でレビュー済み
まず目次を見た段階で興味津々。まさか落語論で“ギミック”というワードが出てくるとは思わなかった。“擬古典”って考え方も面白そう。
落語は漫才やコントに近いかと思いきやさにあらず、第二章には“情報を「隠す」ことができる”とか“自由自在な入れ子構造”と題された項があって、本格ミステリのほうに近いんじゃないか―と思って読んでたら、ご本人もそのことに言及されてました。
マクラや新作落語を惜しげもなく載せたパートもあって、“吉笑のネタ帳”と呼んでもいいくらい。読んでて面白いのだから、実際に聞いたらもっと面白いんだろうなぁ。談笑師匠に入門したくだりでは当時の日記も載ってたりで、ダイレクトに感情が伝わってきました。赤裸々な内容に笑ったり涙腺が緩んだり。ヨーロッパ企画が与えた影響に「なるほど」と納得したり、落語界が抱えるリスクに「うーん」と考えさせられたり。いろんな面白さが詰まった本でした。
私自身は落語に詳しいわけではないので「落語論」を評価できる立場にはないのかも知れないけど、とにかくグイグイ読ませてくれたし、吉笑さんの落語を聞きたい!!って思わせてくれたので、星5つです。
落語は漫才やコントに近いかと思いきやさにあらず、第二章には“情報を「隠す」ことができる”とか“自由自在な入れ子構造”と題された項があって、本格ミステリのほうに近いんじゃないか―と思って読んでたら、ご本人もそのことに言及されてました。
マクラや新作落語を惜しげもなく載せたパートもあって、“吉笑のネタ帳”と呼んでもいいくらい。読んでて面白いのだから、実際に聞いたらもっと面白いんだろうなぁ。談笑師匠に入門したくだりでは当時の日記も載ってたりで、ダイレクトに感情が伝わってきました。赤裸々な内容に笑ったり涙腺が緩んだり。ヨーロッパ企画が与えた影響に「なるほど」と納得したり、落語界が抱えるリスクに「うーん」と考えさせられたり。いろんな面白さが詰まった本でした。
私自身は落語に詳しいわけではないので「落語論」を評価できる立場にはないのかも知れないけど、とにかくグイグイ読ませてくれたし、吉笑さんの落語を聞きたい!!って思わせてくれたので、星5つです。
2016年4月22日に日本でレビュー済み
ハナコソにも出てた吉笑さんですね。二つ目でこういう本を書くのはプレッシャーがあったでしょうし、自分がネタを作る方法論を書くなんて大丈夫だろうかと思ってしまいますが、才能豊かな若手がいることは落語ファンにとって嬉しいですね。私は彼より一回りぐらい上の世代ですが、平成の名人が誕生するのをリアルタイムで見届けるのが夢です。吉笑さん、頑張れ。
2017年7月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
主人に頼まれて購入しました。
サインが入っていました。
分かりやすい!納得!と楽しそうに読んでます。
サインが入っていました。
分かりやすい!納得!と楽しそうに読んでます。