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遠い場所の記憶 自伝 単行本 – 2001/2/21
- 本の長さ351ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2001/2/21
- ISBN-104622032066
- ISBN-13978-4622032069
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商品の説明
商品説明
著者はつねづね「パレスチナ人の側の物語が決定的に不足している」ことを訴えてきた。だから死ぬ前に、迫害と収奪の痛みを記憶するパレスチナ人として、パレスチナの物語を「わたし」の中から紡ぎ出さねばならない。それが彼のいう「使命」なのだろう。
しかし、エドワードはいわゆる「パレスチナ人」ではなかった。1935年、イギリス委任統治下のエルサレムで生まれ、やはりイギリスの植民地だったカイロで幼児教育を受けるのだが、父からはいつも「お前はアメリカ市民だ」といわれて育った。父のワーディーは1911年、ブルガリアと戦争を始めたオスマン・トルコの徴兵を避けてアメリカに逃げ、第1次世界大戦に米軍兵士として参戦した功績が認められて米市民権を得た。「エドワード」という非アラブ的名前は、「アメリカ市民」を自負する父が、アラブの中に「決然と小さなヨーロッパのまがいものをつくろうとした」結果なのである。それでもエドワードは、欧米人でもアラブ人でもない「うさん臭いまでに不確かな」アイデンティティーをかぶりながら、欧米人からはしっかり差別され、やがてパレスチナを追われていく。
かくさまざまにパレスチナを踏みしだいて行った歴史の轍をたどりながら、エドワードが探しているのは、「エドワード」の下に潜む本当の「わたし」なのである。しかし、それはアイデンティティーという「堅牢な固体としての自己」ではなく、「流れつづける一まとまりの潮流」のようなものだという。マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』にも似た、記憶への遠い旅の記録である。(伊藤延司)
著者からのコメント
2001/9/11の米自爆テロ事件をきっかけにイスラムやアラブ世界に対する関心が急速に盛り上ってきました。しかし残念なことに、それはイスラムやアラブを「テロリズム」(=「われわれの」自由や民主主義の敵)と同一視するという非常に危険な風潮を背景としたものです。確たる証拠も示されぬままアメリカの報復戦争に世界中が巻き込まれようとしている現在、サイードが長いあいだ訴え続けて来たことに耳を傾けることがこれまでにも増して重要になっていると思われます。
この事件のおこる前、パレスチナ問題に関連してサイードがしきりに強調していたのは、イスラエルによる情報操作の威力とそれに積極的に対抗していくことの必要性です。「和平プロセス」の名のもとに間断なく続いてきた土地収奪とアパルトヘイトの果てに、昨年秋からの新たなインティファーダによりパレスチナはすでに事実上の戦争状態になっていました。しかし、合衆国では相変わらず(武装ヘリで爆撃している)イスラエルは被害者であり、(投石する)パレスチナ人に脅かされているという、現実から大きく乖離したイメージがまかり通っています。
この背景にはアメリカにおけるイスラエル支持派のプロパガンダがおおいに奏功しており、その根幹をなすのがメディアによる表象を通じたパレスチナ人(あるいはアラブ)からの人間性の剥奪、すなわち情味も理性も氏素性も欠落した「人間らしくない」生きもの、人を殺すのも殺されるのも平気な狂信の徒というイメージの確立です。テロリスト=アラブという無茶な等式も、こういうステレオタイプが出来上がっていればこそ成立しうるものです。
しかし、このようなイメージは、「人間として」のパレスチナ人(アラブ)の本当の声が人々に届けば、もちこたえることはできません。だからこそ、パレスチナ人の「物語」が表に出ることは許されず、彼らが自己を物語ろうとする試みはことごとく妨害されてきたのです。この自伝は、そのような背景を踏まえたものとして読まれる必要があります。ときにはあからさまなまでの徹底した「個人的エピソード」の連続からは、ひとりのパレスチナ系アラブの「普通の人間」としての物語を遺しておきたいという意図が痛いほどに感じられます。
内容(「MARC」データベースより)
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2001/2/21)
- 発売日 : 2001/2/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 351ページ
- ISBN-10 : 4622032066
- ISBN-13 : 978-4622032069
- Amazon 売れ筋ランキング: - 591,093位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 108位イギリス・アメリカの思想
- - 1,049位西洋哲学入門
- - 31,860位歴史・地理 (本)
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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サイードというと「経歴詐称」という問題が指摘されているが、悪意あるメディアの捏造だということである。この本で最も興味を惹かれたのが、サイードがパレスチナの擁護者として活動するようになったきっかけがユダヤ教のラビのひとことだったという下りである。この部分を読んだだけでも、ユダヤ人を一緒くたにしてはならない(当然、立派な人もたくさんいる!)こと、サイードもそのことをきちんと認識していたことがわかる。わたくしにはこの部分だけでも価値があった。
故郷と呼べる場所もなく、両親からも無条件の愛情をもらっていたとはいい難いサイード、晩年は無数の見知らぬひとびとの大きな支持は彼に届いていたのだろうか。