いつも期待を裏切らない、中井久夫氏のエッセイ集。その文体は、とてつもない知性と理性を感じさせながらも深い優しさと鋭い感受性、洞察力に満ちていて、読むものに満ち足りた時間を与えてくれる。
この10年のエッセイということで、阪神淡路大震災に関する文章が多い。被災者でもあり、治療者でもあった著者の、PTSDに関する考察、災害被災者についての差別の問題、ボランティアの問題など、初めて知る事柄も多く、勉強になる。
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時のしずく 単行本 – 2005/4/21
中井 久夫
(著)
「私の人生は、さまざまな形で私を大きく動かした人々との対人関係の集大成である」。そう記す著者が、あざやかによみがえってくる自らの「記憶」を縦糸に、思い出深い人々との出会いと別れを綴った最新エッセイ集——「これは私の第4エッセイ集ということになる。おおむねは1995年の阪神・淡路大震災以降2002年初めまでのものである。ほぼ60歳代の前3分の2に当たる時期である。あまり世に出回らない雑誌などに載ったものがおのずと集まった。小さい仕事のほうに凝るのは私の癖である」(「あとがき」より)。
これまであまり語られたことのなかった自伝的な事柄と自らの家系に連なる異能の人々についての省察。震災の傷跡からの奇跡的な復興とその問題点。癒し・ボランティア・家族について広大な地平から見通した諸論考。青春時代に心ときめかした読書体験の詳細と日本語についての透徹した考察。そして、その晩年お互い精神的に深く交歓した須賀敦子や若くして夭折した安克昌をはじめとするかけがえのない師・友人・弟子たちとの交遊。5部構成、全34編よりなる、珠玉のエッセイ集成。
これまであまり語られたことのなかった自伝的な事柄と自らの家系に連なる異能の人々についての省察。震災の傷跡からの奇跡的な復興とその問題点。癒し・ボランティア・家族について広大な地平から見通した諸論考。青春時代に心ときめかした読書体験の詳細と日本語についての透徹した考察。そして、その晩年お互い精神的に深く交歓した須賀敦子や若くして夭折した安克昌をはじめとするかけがえのない師・友人・弟子たちとの交遊。5部構成、全34編よりなる、珠玉のエッセイ集成。
- 本の長さ289ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2005/4/21
- ISBN-104622071223
- ISBN-13978-4622071228
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登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2005/4/21)
- 発売日 : 2005/4/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 289ページ
- ISBN-10 : 4622071223
- ISBN-13 : 978-4622071228
- Amazon 売れ筋ランキング: - 235,710位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 4,254位近現代日本のエッセー・随筆
- - 24,842位ビジネス・経済 (本)
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著者について
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1934年生まれ。1959年、京都大学医学部卒業。はじめウイルス研究者。東大分院において精神科医となる。神戸大学名誉教授。1985年、芸術療法学会賞、1989年、読売文学賞(翻訳研究賞)、1991年、ギリシャ国文学翻訳賞、1996年、毎日出版文化賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 ヴァレリー詩集 コロナ/コロニラ (ISBN-13: 978-4622075455 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
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2005年12月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2005年5月10日に日本でレビュー済み
ご本人は「自伝の執筆を勧められたこともある。しかし、自伝を書くには強烈な自己への関心が不足している」(p.287)としているが、ネット上に著作から再構成された自伝らしきものが出回ってしまったために、今回のエッセイ集では「私の歩んだ道」「私が私になる以前のこと」など自分や家族に関することを書いた5編が集められた。自伝的要素の強い「占領期に洋書を取り寄せたこと」「編集から始めた私」なども含めると、中井先生がどんなことを考えてきたのか、その一端を覗かせてもらっているようで、ファンとしては嬉しい限り。
印象に残ったのは、膨大な切手コレクションを見せられて切手収集をあきらめ、それで呉茂一のラテン語独習本二冊を買い求めたという「私の人生の中の本」。それは敗戦直後の中学生の頃で、西欧のエリートたちが学んでいるラテン語を習得すれば、漢学の素養がある分だけ自分は勝てる、という意識からだったという。いじらしいけど、やっぱり違うわな、と思う。京大に入ってまもなくまだ日本語に訳されていないウィトゲンシュタインのTractatus Logico-Philosophicus(論考)を読み「世界は(物質ではなく)事実からなる」という冒頭を「世界をモノの集合と理解する以外の見方がありうることに感動した」というあたりも、なるほどね、と。
統合失調症に関しては、DSM III以降の流れに対して、中井先生は原因を問わないDSM IIIの操作主義には一つの例外があった。それがPTSDである。『通常範囲を超えた人生体験への直接間接の曝露』という『原因』を診断項目に付け加えざるを得ない」(p.65)という批判はこれまでもしてきたが、その意味がようやく理解できた。
印象に残ったのは、膨大な切手コレクションを見せられて切手収集をあきらめ、それで呉茂一のラテン語独習本二冊を買い求めたという「私の人生の中の本」。それは敗戦直後の中学生の頃で、西欧のエリートたちが学んでいるラテン語を習得すれば、漢学の素養がある分だけ自分は勝てる、という意識からだったという。いじらしいけど、やっぱり違うわな、と思う。京大に入ってまもなくまだ日本語に訳されていないウィトゲンシュタインのTractatus Logico-Philosophicus(論考)を読み「世界は(物質ではなく)事実からなる」という冒頭を「世界をモノの集合と理解する以外の見方がありうることに感動した」というあたりも、なるほどね、と。
統合失調症に関しては、DSM III以降の流れに対して、中井先生は原因を問わないDSM IIIの操作主義には一つの例外があった。それがPTSDである。『通常範囲を超えた人生体験への直接間接の曝露』という『原因』を診断項目に付け加えざるを得ない」(p.65)という批判はこれまでもしてきたが、その意味がようやく理解できた。