論文を書くたびに英語に苦しめられる。そのたびに、どうして科学がヨーロッパで生まれたのかを恨むとともに、その理由に考えを廻らせる。この問いは、科学史最大の問いであるとともに、科学論にとっても重要な問題である。大学紛争で物理への道を閉ざされた著者は、迷網な文献精査と、卓抜な構成力でこの問いに答えようと、一連の著作を発表して来た。前作の『磁力と重力の発見』では、科学の側から見た発展の歴史を追った。本書では、科学の発展を支えた文化的背景について、特に、14・15世紀のルネサンスと17世紀の科学革命の間の時代に、科学革命の準備が文化の革命として、進んでいたことをしめして、科学がヨーロッパで生まれた背景に迫っている。
著者は、16世紀のヨーロッパで、実学の俗語(各国語)による出版(それは、しばしば精細な木版の説明図を伴っていた)と、実学ならではの定量性や実験主義に特徴づけられる文化革命と言うべきものが進んでいたことを、絵画建築に始まり、外科学、博物学、鉱山学、実用数学など、様々な分野の出版物を例示して、示している。それらは、大学の外で始まったのであったが、それが、17世紀に、特にイギリスで、大学の内部に取り込まれ、中世以来の大学の伝統であったスコラ学の論証主義と融合して、科学が発生した、と結論づけている。
つまり、活版印刷による実学知識の共有化と、スコラ学の論証主義が科学を生み出したのだ。江戸時代の日本が、あれだけ進んだ文化を持ちながら、ついに体系的な科学を生み出さなかったのはなぜか、を考える時、この結論は極めて納得のいくものである。
本書は結論だけでなく、随所に科学史を考える上のヒントに満ちていて、大部にも関わらず、まったく飽きなかった。大変お薦め。
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一六世紀文化革命 2 単行本 – 2007/4/17
山本 義隆
(著)
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『磁力と重力の発見』から四年、待望の山本義隆・書き下ろし
作品が出来上がった。大佛次郎賞受賞ほか絶賛を博した前作につづき、本書の
主題は活版印刷の草創期、一六世紀ヨーロッパの科学と技術と芸術。大学アカデ
ミズムや人文主義者を中心としたルネサンス観に対し、商人や技術者の実践に
焦点をあてる。文書偏重から経験の重視へ、ラテン語から俗語による出版へ、教
会による支配を中心に厳然たる差別構造があった時代に、いったい何が起こり、
どのような結果を次の世紀にもたらしたか。綿密な文献を読み込み新たなルネサ
ンス像を提示した本書は、われらの時代への批判でもある。全2巻同時刊行。
作品が出来上がった。大佛次郎賞受賞ほか絶賛を博した前作につづき、本書の
主題は活版印刷の草創期、一六世紀ヨーロッパの科学と技術と芸術。大学アカデ
ミズムや人文主義者を中心としたルネサンス観に対し、商人や技術者の実践に
焦点をあてる。文書偏重から経験の重視へ、ラテン語から俗語による出版へ、教
会による支配を中心に厳然たる差別構造があった時代に、いったい何が起こり、
どのような結果を次の世紀にもたらしたか。綿密な文献を読み込み新たなルネサ
ンス像を提示した本書は、われらの時代への批判でもある。全2巻同時刊行。
- ISBN-104622072874
- ISBN-13978-4622072874
- 出版社みすず書房
- 発売日2007/4/17
- 言語日本語
- 本の長さ430ページ
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登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2007/4/17)
- 発売日 : 2007/4/17
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 430ページ
- ISBN-10 : 4622072874
- ISBN-13 : 978-4622072874
- Amazon 売れ筋ランキング: - 76,371位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 167位ヨーロッパ史一般の本
- - 8,587位科学・テクノロジー (本)
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2008年3月10日に日本でレビュー済み
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2009年1月26日に日本でレビュー済み
新しく発見された事実をラテン語が取り込まなかったことにより、学術言語として俗語が用いられるようになると、技術者による知識の開放が始まり、権威偏重から経験重視へ、定性的議論から定量的計測へと学術領域は展開していった。
しかし、技術者によって始まった一六世紀文化革命・言語革命は、一七世紀になると有閑エリート層の手に奪い取られていき、数々の発見は体系化され、一七世紀科学革命として結実することになる。
天文学・地理学などにおける発展や、一七世紀科学革命をリードするイングランドでの一六世紀の様子、言語の世界における変化などが、一七世紀科学革命につながって行く様を描いている。
しかし、技術者によって始まった一六世紀文化革命・言語革命は、一七世紀になると有閑エリート層の手に奪い取られていき、数々の発見は体系化され、一七世紀科学革命として結実することになる。
天文学・地理学などにおける発展や、一七世紀科学革命をリードするイングランドでの一六世紀の様子、言語の世界における変化などが、一七世紀科学革命につながって行く様を描いている。
2007年6月13日に日本でレビュー済み
6章「軍事革命と機械学・力学の勃興」は期待を裏切りません。大砲の威力は、それまでの城壁都市の意味を失わせるとともに、スペインにはレコンキスタの勝利をもたらします(p.393)。そして重い大砲を素早く移動させるとともに、発射される砲弾を最も長く飛ばすための研究は機械学を発展させています。山本さんは前著でもプトレマイオスがの地理学と天文学の否定が新たな知の地平を切り開いたと語っていますが、その先鞭をつけたひとりはニュールンベルグのレギオモンタナス。職人の多かったニュールンベルグを拠点に天文台を建設し、印刷工房まで自前で持ち、しかも地動説を受けいれていたようです(p.457)。
また、ポルトガルのエンリケによるアフリカ北岸セウタの攻略と略奪は、さらなる遠隔地へと向かわせますが、赤道に近くなると北極星は見えなくなり、新たな緯度決定の方法が求められるようになります(p.462)。そうなると、太陽を中心とした惑星運動の正しい理解が必要になってくるのですが、その時代に大活躍したのがチコ・ブラーエ。彼は観測精度の向上につとめ、観測機器の改良につとめるとともに、地道な定点観測を30年以上続け、自然科学の精度を高めていきますが、そこに流れているのは職人的な継続性の思想(p.492)。こうして精度を高めることによって基礎的な物理学の発展は促されるのですが、そこに決定的な役割を果たしたのは、ヨーロッパの後進国であり、プラグマチックなイングランドだったというのが8章。アルマダとの戦闘に勝利した船乗りたちは、海上での船速測定法で簡便な方法を思いついたります。そして「知は力なり」(Ipsa scientia potestas est)という言葉が雄弁に語るフランシス・ベーコンを生み出します。
また、ポルトガルのエンリケによるアフリカ北岸セウタの攻略と略奪は、さらなる遠隔地へと向かわせますが、赤道に近くなると北極星は見えなくなり、新たな緯度決定の方法が求められるようになります(p.462)。そうなると、太陽を中心とした惑星運動の正しい理解が必要になってくるのですが、その時代に大活躍したのがチコ・ブラーエ。彼は観測精度の向上につとめ、観測機器の改良につとめるとともに、地道な定点観測を30年以上続け、自然科学の精度を高めていきますが、そこに流れているのは職人的な継続性の思想(p.492)。こうして精度を高めることによって基礎的な物理学の発展は促されるのですが、そこに決定的な役割を果たしたのは、ヨーロッパの後進国であり、プラグマチックなイングランドだったというのが8章。アルマダとの戦闘に勝利した船乗りたちは、海上での船速測定法で簡便な方法を思いついたります。そして「知は力なり」(Ipsa scientia potestas est)という言葉が雄弁に語るフランシス・ベーコンを生み出します。
2007年6月11日に日本でレビュー済み
現代文明を決定付けたヨーロッパにおける近代初期の一連の動きを大胆かつ緻密に論考した大著。前作「磁力と重力の発見」から前巻に続いて、完結を見る。
伝統的には文学、芸術、科学、医学などと分けられる分野を大胆に再構築し、これらの一連の分野における当時のヨーロッパの潮流に大胆に迫る。人文主義や科学革命、出版革命によって成立した近代を近代たらしめるパラダイムやスキームが我々現代日本人を含め、全世界を覆っている。本書はそれを相対化し、その本質に迫る。我々が自明とみなすことがそうでないことが示され、知的興奮に満ちている。
様々な分野で現代文明か行き詰まりを見せる中、本書の示す現代文明の相対化は必ずや有益であろう。
伝統的には文学、芸術、科学、医学などと分けられる分野を大胆に再構築し、これらの一連の分野における当時のヨーロッパの潮流に大胆に迫る。人文主義や科学革命、出版革命によって成立した近代を近代たらしめるパラダイムやスキームが我々現代日本人を含め、全世界を覆っている。本書はそれを相対化し、その本質に迫る。我々が自明とみなすことがそうでないことが示され、知的興奮に満ちている。
様々な分野で現代文明か行き詰まりを見せる中、本書の示す現代文明の相対化は必ずや有益であろう。
2007年5月20日に日本でレビュー済み
実に大胆な科学史の仮説を設定して、文献を読み込み、科学史空白時十六世紀は印刷革命の成熟とともに俗語としての地域言語による印刷刊本の登場が、学問と科学の普及に貢献し、庶民に学問と科学的知識が様々な面で十七世紀科学革命を準備する基盤になったことを大胆に文献学的に論証した画期的な議論。ただ細部の考察も緻密で、端倪すべからざる見識に満ちている。議論を認識論におけるリアリズムの意義に焦点を絞り、芸術家の認識論から始めたのは卓越した見識である。科学と芸術は一見すると対立概念に見える。しかし対立ではなく相補関係にある。その典型はダ・ビンチであり、デューラーなのである。注、書誌、索引も充実している。但しページ立ては2巻を通す。本書は英訳されるべきである。