本書はマーク・ロスコ(1903-1970)が1940年代前半に書いたと推察される芸術論で、出版されずに長い間うもれていた草稿を、ロスコの息子であるクリストファー・ロスコ氏が編集し、2006年に刊行(原著)されたものです。
本書が記された頃、ロスコはまだ、現在彼のスタイルとして知られている抽象絵画は描いておらず、自分の様式を確立しようと模索する苦しい時期にありました。そのようななかで、ロスコは絵画制作を一時中断し、本書の執筆に取り組むことになります。
本書では既存の芸術様式やそれにまつわる事柄、たとえば、リアリティ、官能性、造形性、空間、主題と題材、神話、モダン・アート、プリミティヴィズム、国民芸術などについて語られており、ロスコ自身の作品や方法については言及されておりません。
とはいえ、ここではロスコがどのような芸術を重視し、どういった芸術に批判的なのかといったことが詳細に語られており、ロスコの率直な芸術観をうかがうことができます。
たとえば、序文でクリストファー氏も述べていますが、ロスコは古典古代やルネッサンスに憧れを抱いており、何度も言及する一方で、大衆から無視されることからくる反発からか、大衆芸術人気への苛立ちを見て取ることができます。
また、ロスコは官能性を非常に重視しており、ものの外観を個別的にとらえる方法では人に訴えることはできないと考え、官能性こそがリアリティの指標で、「すべての概念はまず官能性という最高の計器に照らして検討されなければならない」(p.40)と述べられています。
本書は未完ですが、ある程度の分量(本文217ページ)にわたって緻密な論述がなされており、なかにはロスコののちの変化を先取りするような内容もあります。ロスコの芸術を考えるうえで、重要な一冊といえるでしょう。
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ロスコ 芸術家のリアリティ 単行本 – 2009/2/19
■本書は、復刊して新本在庫がございます。定価6,048円(本体5,600円)2016年3月
現代抽象絵画を代表する作家マーク・ロスコ(1903-70)。
様々な色の矩形が浮かぶ独自の様式に至る以前、ロスコ自ら綴った草稿を
編んだのが本書である。1940年代前半、自身の芸術がいまだ確立しない苦しみの中に
あったロスコは、一時的に絵筆を置き、それに替えてペンを執った。そこに残されたのは、
画家としてではなくオブザーバーとして造形芸術を語り、現代と古代のあいだをわたりながら
記された、美術の〈リアリティ〉の系譜である。
数年後に再び画布に向かった時、彼の作品は、現在ロスコの到達点として認められる
純粋な抽象画へと変化を遂げる。挫折であると同時に、ロスコがロスコになる転回点ともなった
時代の貴重なテキスト――死後永らく埋もれていた草稿が今、60余年の時を経てその息子の手によって甦る。
現代抽象絵画を代表する作家マーク・ロスコ(1903-70)。
様々な色の矩形が浮かぶ独自の様式に至る以前、ロスコ自ら綴った草稿を
編んだのが本書である。1940年代前半、自身の芸術がいまだ確立しない苦しみの中に
あったロスコは、一時的に絵筆を置き、それに替えてペンを執った。そこに残されたのは、
画家としてではなくオブザーバーとして造形芸術を語り、現代と古代のあいだをわたりながら
記された、美術の〈リアリティ〉の系譜である。
数年後に再び画布に向かった時、彼の作品は、現在ロスコの到達点として認められる
純粋な抽象画へと変化を遂げる。挫折であると同時に、ロスコがロスコになる転回点ともなった
時代の貴重なテキスト――死後永らく埋もれていた草稿が今、60余年の時を経てその息子の手によって甦る。
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2009/2/19
- ISBN-104622074354
- ISBN-13978-4622074359
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商品の説明
著者について
マーク・ロスコ
Mark Rothko
1903年、ロシア(現ラトヴィア)のドヴィンスクに生まれる。1913年に家族とともにアメリカへ移住。1923年よりニューヨークに居を移し、当地で抽象表現主義の代表的な作家として制作を続けた。 1940年代後半より独自の様式を確立し、絵画表現に新たな領域を拓いた。1970年に自死。回顧展がこれまでに、ニューヨーク近代美術館、ワシントン・ナショナル・ギャラリー、グッゲンハイム美術館、日本では川村記念美術館(千葉)など世界各国の美術館で催された。
クリストファー・ロスコ
Christopher Rothko
1963年、マーク・ロスコと二番目の妻メルとの間に生まれる。精神療法士、作家。現在、ニューヨーク在住。
Mark Rothko
1903年、ロシア(現ラトヴィア)のドヴィンスクに生まれる。1913年に家族とともにアメリカへ移住。1923年よりニューヨークに居を移し、当地で抽象表現主義の代表的な作家として制作を続けた。 1940年代後半より独自の様式を確立し、絵画表現に新たな領域を拓いた。1970年に自死。回顧展がこれまでに、ニューヨーク近代美術館、ワシントン・ナショナル・ギャラリー、グッゲンハイム美術館、日本では川村記念美術館(千葉)など世界各国の美術館で催された。
クリストファー・ロスコ
Christopher Rothko
1963年、マーク・ロスコと二番目の妻メルとの間に生まれる。精神療法士、作家。現在、ニューヨーク在住。
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2009/2/19)
- 発売日 : 2009/2/19
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 240ページ
- ISBN-10 : 4622074354
- ISBN-13 : 978-4622074359
- Amazon 売れ筋ランキング: - 668,237位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 44,410位アート・建築・デザイン (本)
- - 107,460位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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