よく、「経済学は自然科学と違って、道徳や価値観といったものから切り離すことができない、したがって経済学は科学ではない」といった批判を目にする。これはふたつの根本的な理由から的外れであり、批判として成立するといえない。ひとつは、そもそも自然科学も道徳や価値観から自由ではないという点である。これを言っては元も子もなく、生産的な議論にならない。重要なのはもうひとつの方で、そもそも経済学はその道徳や価値観といったものを対象とする学問であるという点である。
また、「経済学における合理的経済人の仮定は非現実的である」との批判も多い。実はこれについては、経済学者もわりと承知しており、行動経済学、実験経済学、計量経済学といった経験論的アプローチの発展に努めているのはこのためである。しかし、何故なお依然として合理性の仮定を完全に捨て切らないのかというと、それはそこから得られる知見が示唆に富むためである。
本書は、意思決定理論の大家イツァーク・ギルボアによる3部作のうち、中間の難易度に位置するものである。決して平易とは言い切れないが、現時点ではこの分野で最良の読み物だろう。上で挙げたふたつの論点、「道徳や価値観」についてどう考えるのか、「合理的選択パラダイムから得られる知見」とは何か、について可能なかぎり誠実に解説されている。ここで「誠実に」というのはつまり、規範的理論と記述的理論との線引きを明確に示すことである。両者の違いは、やはり本文に詳しい。
経済学について、それを学ばないまま印象だけで批判を投げるのは楽でいい。しかし、本書を読み、経済学での未解決問題を明確にした上で議論すると、もっと深い議論ができるはず。また、本書を手掛かりに、経済学の背景となる哲学や倫理学について理解を深めることもできると思う。
平易でないと書いたが、数式や証明の類は基本的に省略されている。興味のある人は、ギルボア氏のウェブサイトにある付録をダウンロードすることができる。ただし、これは日本語訳がないので英語で読まなければならない。せっかくならこちらも訳が欲しい。
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合理的選択 単行本 – 2013/3/9
イツァーク・ギルボア
(著),
松井 彰彦
(翻訳)
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理論経済学の地平を切り拓きつつある研究者が
平易なことばで〈ミクロ経済学〉〈ゲーム理論〉
〈意思決定理論〉のエッセンスを教えてくれる一冊。
数式無しに、社会のあり方についての本質的洞察を与えてくれる
経済学からの贈り物です。
「本書を読めば、明晰かつ専門用語を使わずに、個人の合理的意思
決定についての理論を学びはじめることができます。さらにゲーム
理論、社会選択論、市場均衡についても概観できます。本書の特色
は、リスクと不確実性を強調しているところにあり、標準的な理論
とその限界とが明快に議論されています。強く推薦します」
D・フーデンバーグ(ハーヴァード大学)
「本書は、明快かつ包括的で巧みな経済理論への入門書です。重点
が置かれているのは、あくまで概念であり、数学ではありません。
本書で読者はこの分野の基本的な考え方を身に付けることができま
すし、哲学、心理学、社会学による洞察も扱われています」
A・フリーデンバーグ(アリゾナ州立大学)
平易なことばで〈ミクロ経済学〉〈ゲーム理論〉
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決定についての理論を学びはじめることができます。さらにゲーム
理論、社会選択論、市場均衡についても概観できます。本書の特色
は、リスクと不確実性を強調しているところにあり、標準的な理論
とその限界とが明快に議論されています。強く推薦します」
D・フーデンバーグ(ハーヴァード大学)
「本書は、明快かつ包括的で巧みな経済理論への入門書です。重点
が置かれているのは、あくまで概念であり、数学ではありません。
本書で読者はこの分野の基本的な考え方を身に付けることができま
すし、哲学、心理学、社会学による洞察も扱われています」
A・フリーデンバーグ(アリゾナ州立大学)
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2013/3/9
- ISBN-104622077337
- ISBN-13978-4622077336
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商品の説明
著者について
イツァーク・ギルボア(Itzhak Gilboa)
1963年テル・アビブ生まれ。テル・アビブ大学 Ph.D.(経済学)。
専門は意思決定理論。ノースウエスタン大学ケロッグビジネススク
ール M.E.D.S 教授などを経て、現在、HEC 経営大学院(パリ)経済
学・意思決定科学教授、テル・アビブ大学経済学部教授。エコノメ
トリック・ソサエティ・フェロー。著書『決め方の科学──事例ベ
ース意思決定理論』(シュマイドラーとの共著、勁草書房、2005)
『意思決定理論入門』(NTT出版、2012)ほか。
松井彰彦(まつい・あきひこ)
1962年東京生まれ。ノースウエスタン大学 Ph.D.(M.E.D.S.)。専
門はゲーム理論、社会的障害の経済理論。ペンシルバニア大学経済
学部助教授などを経て、現在、東京大学経済学研究科教授。エコノ
メトリック・ソサエティ・フェロー。著書『慣習と規範の経済学』
(東洋経済新報社、2002)『高校生からのゲーム理論』(ちくまプ
リマー新書、2010)ほか。
1963年テル・アビブ生まれ。テル・アビブ大学 Ph.D.(経済学)。
専門は意思決定理論。ノースウエスタン大学ケロッグビジネススク
ール M.E.D.S 教授などを経て、現在、HEC 経営大学院(パリ)経済
学・意思決定科学教授、テル・アビブ大学経済学部教授。エコノメ
トリック・ソサエティ・フェロー。著書『決め方の科学──事例ベ
ース意思決定理論』(シュマイドラーとの共著、勁草書房、2005)
『意思決定理論入門』(NTT出版、2012)ほか。
松井彰彦(まつい・あきひこ)
1962年東京生まれ。ノースウエスタン大学 Ph.D.(M.E.D.S.)。専
門はゲーム理論、社会的障害の経済理論。ペンシルバニア大学経済
学部助教授などを経て、現在、東京大学経済学研究科教授。エコノ
メトリック・ソサエティ・フェロー。著書『慣習と規範の経済学』
(東洋経済新報社、2002)『高校生からのゲーム理論』(ちくまプ
リマー新書、2010)ほか。
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2013/3/9)
- 発売日 : 2013/3/9
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 240ページ
- ISBN-10 : 4622077337
- ISBN-13 : 978-4622077336
- Amazon 売れ筋ランキング: - 494,406位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 49,128位ビジネス・経済 (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年4月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
同じ著者による「意思決定理論入門」(NTT出版,2012)と比較します。
本書は、内容的にはミクロ経済学寄り、体裁的には概論書風です。従って、市場の理論に興味のある人や、経済学の勉強をしている学生などにはとても有用だと思います。それに対して「意思決定理論入門」は、設例とその解説というスタイルなので読みやすく、内容的には心理学寄りです。従って、ほとんどの一般読者には「意思決定理論入門」のほうが面白く読めるでしょう。
両方を読むなら、先に同書、それから本書という順番がよさそうです。
別の著者カーネマンによる「ファスト&スロー」(早川書房,2012)と比較します。
同書は極めて具体的でわかりやすく、同じ論点について知るのであれば、ギルボアの両著作よりもカーネマンのほうが、少なくとも私のような一般読者には断然おすすめです。例えば、リンダ問題は両方で取り上げられていますが、カーネマンの説明のほうがイキイキしていてすんなり読めます。
ただ、ギルボアを参照すれば、リンダ問題は統計の理解という問題群のひとつであるという体系的見通しを得ることができます。モンティ・ホール問題のように、「意思決定理論入門」では扱われているがカーネマンには出てこない論点もあります。
というわけで、「ファスト&スロー」は星6つ、「意思決定理論入門」は星5つ、それに比べると本書は、私のような怠惰な読者には通読がやや困難で、おそらくは読者を選ぶ本なのだろうという意味で、星4つとさせていただきました。
もとより内容レベルは高度ですし専門的な読者の方にとっては違う評価となるのでしょうが、私とはちょっと相性が悪かったかな、と。
本書は、内容的にはミクロ経済学寄り、体裁的には概論書風です。従って、市場の理論に興味のある人や、経済学の勉強をしている学生などにはとても有用だと思います。それに対して「意思決定理論入門」は、設例とその解説というスタイルなので読みやすく、内容的には心理学寄りです。従って、ほとんどの一般読者には「意思決定理論入門」のほうが面白く読めるでしょう。
両方を読むなら、先に同書、それから本書という順番がよさそうです。
別の著者カーネマンによる「ファスト&スロー」(早川書房,2012)と比較します。
同書は極めて具体的でわかりやすく、同じ論点について知るのであれば、ギルボアの両著作よりもカーネマンのほうが、少なくとも私のような一般読者には断然おすすめです。例えば、リンダ問題は両方で取り上げられていますが、カーネマンの説明のほうがイキイキしていてすんなり読めます。
ただ、ギルボアを参照すれば、リンダ問題は統計の理解という問題群のひとつであるという体系的見通しを得ることができます。モンティ・ホール問題のように、「意思決定理論入門」では扱われているがカーネマンには出てこない論点もあります。
というわけで、「ファスト&スロー」は星6つ、「意思決定理論入門」は星5つ、それに比べると本書は、私のような怠惰な読者には通読がやや困難で、おそらくは読者を選ぶ本なのだろうという意味で、星4つとさせていただきました。
もとより内容レベルは高度ですし専門的な読者の方にとっては違う評価となるのでしょうが、私とはちょっと相性が悪かったかな、と。
2014年11月13日に日本でレビュー済み
大学生くらい向け。高級な本のつくりにしてはちょっとがっかり。
2013年12月16日に日本でレビュー済み
> 経済成長はお金持ちの幸福を最大化するのではなく、
> 貧困者の不幸を最小化することができる・・・
> 私たちは幸せを測ることができるまともな尺度は
> 持ち合わせていないように思われます。
> 反対に、私たちは何が不幸なことかに関してはよりよい考えを持っています。
> ・・・社会政策は幸せの最大化ではなく、
> 不幸の最小化に焦点を当てるべきということになります。
> 貧困者の不幸を最小化することができる・・・
> 私たちは幸せを測ることができるまともな尺度は
> 持ち合わせていないように思われます。
> 反対に、私たちは何が不幸なことかに関してはよりよい考えを持っています。
> ・・・社会政策は幸せの最大化ではなく、
> 不幸の最小化に焦点を当てるべきということになります。