知的財産法は何のためにあるのか? なぜコピーは制限されまたは禁じられるのか? 一般的には、この理由は創作者の権利を保護することで、イノベーションに対する意欲を与えるためと説明される。
これに対し著者らは、知財法がカバーし切れていない場面で、イノベーションを促進する現象が起きていることを説明し、知財法がイノベーション促進のための唯一無二の方策ではないと説いている。
具体的な業界としては、著作権法や特許法によって創作者の権利が必ずしも守られない3つの業界(ファッション、外食、お笑い)について詳述し、
別の4つの業界(アメフト、金融、フォント、データベース)についても軽くこの観点から洞察している。
結論部では、上記の事例研究から得た6つの特徴(トレンドとサイクル、社会規範、パフォーマンス、オープン性、先行者利益、ブランド)が、たとえコピーが行われても創作者がイノベーションをし続ける要因になっていると指摘する。また、創作者は概して楽観的で得られる利益を高く見積りがちなこと、創作をするための費用は技術により低廉化していることも、コピーによるイノベーションに対する負の影響を低下すると説いている。
最後には、最も違法コピーにより悪影響を受けていると思われる業界、すなわち音楽産業が、こうした教訓から得られることを示唆して本を結んでいる。
著者らは必ずしも現行の知財制度を否定しているわけではない。むしろ明確に知財法の廃止を訴える別の書籍(『〈反〉知的独占』)には、反対の立場をとっている。知財法の重要性を前提としつつ、それが機能しない場面でもイノベーションをもたらす社会的機能があるのだから、両者は組み合わせた方がいい。それにより、真に豊かな創作が可能な世界が生まれると言いたいのだろう。
上述した6つの特徴は示唆に富んでいるし、事例紹介として出てきたフランスの料理人やアメリカのコメディアンたちの生態は単純に興味深かった。文章的にも専門系の翻訳書としては標準的なものだったと思う。
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パクリ経済――コピーはイノベーションを刺激する 単行本 – 2015/11/26
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「驚いたことに,創造性はしばしばコピーと共存できる.そして条件次第では,
コピーが創造性の役に立つことさえあるのだ…この本でとりあげる産業の多くは
驚くほど巨大で興味深い.その仕組みと,そしてなぜそれが破綻しないかを理解
するのは魅力的だ.さらにそこから,音楽や映画といったコピーの蔓延,増加に
直面してますます苦労を強いられている他の産業に役立つ教訓を引き出したい」
(はじめに).
郊外のショッピングモールから街のビストロまで,パクリはあらゆる場所にあふ
れている.「コピーは創造性を殺す」「法律によるコピー規制がイノベーション
には欠かせない」――通常はこう考えられている.しかし,コピーは絶対に悪な
のだろうか?
本書は,創造性がコピーによってむしろ活性化する場合があることを,ファッシ
ョン,レストラン,アメフト,コメディアン,マジシャン,フォント,データベ
ース産業など米国で一般的にコピーが合法とされている産業の豊富なケーススタ
ディで明らかにする.
なぜそれらの業種は繁栄しているのか? インセンティブとイノベーションの関係
から6つの教訓を探り,知的財産ルールの未来を指し示す.
「コピーと創造性が共存できるという,耳寄りな知らせだ.豊富なケーススタ
ディが気づかせてくれるのは,一貫した知財政策は本質的に保護と模倣のトレー
ドオフを生むということだ」
ハル・ヴァリアン(Google社チーフ・エコノミスト)
「イノベーションがどのように生まれるのかについて,政策立案者はいまだ根本
的に理解を誤っている.創造性にはどのような法が必要かを理解しようとする,
非常に重要な試みだ」
ローレンス・レッシグ(ハーヴァード・ロー・スクール教授)
コピーが創造性の役に立つことさえあるのだ…この本でとりあげる産業の多くは
驚くほど巨大で興味深い.その仕組みと,そしてなぜそれが破綻しないかを理解
するのは魅力的だ.さらにそこから,音楽や映画といったコピーの蔓延,増加に
直面してますます苦労を強いられている他の産業に役立つ教訓を引き出したい」
(はじめに).
郊外のショッピングモールから街のビストロまで,パクリはあらゆる場所にあふ
れている.「コピーは創造性を殺す」「法律によるコピー規制がイノベーション
には欠かせない」――通常はこう考えられている.しかし,コピーは絶対に悪な
のだろうか?
本書は,創造性がコピーによってむしろ活性化する場合があることを,ファッシ
ョン,レストラン,アメフト,コメディアン,マジシャン,フォント,データベ
ース産業など米国で一般的にコピーが合法とされている産業の豊富なケーススタ
ディで明らかにする.
なぜそれらの業種は繁栄しているのか? インセンティブとイノベーションの関係
から6つの教訓を探り,知的財産ルールの未来を指し示す.
「コピーと創造性が共存できるという,耳寄りな知らせだ.豊富なケーススタ
ディが気づかせてくれるのは,一貫した知財政策は本質的に保護と模倣のトレー
ドオフを生むということだ」
ハル・ヴァリアン(Google社チーフ・エコノミスト)
「イノベーションがどのように生まれるのかについて,政策立案者はいまだ根本
的に理解を誤っている.創造性にはどのような法が必要かを理解しようとする,
非常に重要な試みだ」
ローレンス・レッシグ(ハーヴァード・ロー・スクール教授)
- 本の長さ392ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2015/11/26
- ISBN-104622079402
- ISBN-13978-4622079408
商品の説明
著者について
カル・ラウスティアラ(Kal Raustiala)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法律学教授.デューク大学を卒業
後,ハーヴァード・ロー・スクールで法務博士号(J.D.)を,カリフォルニア大
学サンディエゴ校で政治学の博士号(Ph.D.)を取得.専門分野は国際法,国際
関係,知的財産.著書 “NGOs in International Treaty-Making," in The
Oxford Guide to Treaties (Oxford University Press, 2012); Does the
Constitution Follow the Flag?: The Evolution of Territoriality in
American Law (Oxford University Press, 2009).
クリストファー・スプリグマン(Christopher Sprigman)
ニューヨーク大学法学部教授.ペンシルヴェニア大学を卒業後,シカゴ大学ロー
・スクールで法務博士号(J.D.)を取得.専門分野はコピーライト,知的財産,
法と経済学,特許,商標.
山形浩生(やまがた・ひろお)
1964年東京生まれ.東京大学都市工学科修士課程およびMIT不動産センター修士
課程修了.大手調査会社に勤務,途上国援助業務のかたわら,翻訳および各種の
雑文書きに手を染める.著書『第三の産業革命――経済と労働の変化』(角川イ
ンターネット講座10,2015)ほか.訳書ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房,
2014)メネズ『無敵の天才たち』(翔泳社,2014)ほか.
森本正史(もりもと・まさふみ)
翻訳家.訳書ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房,2014)ケンリック『野蛮
な進化心理学』(白揚社,2014)ほか.
山田奨治(やまだ・しょうじ)
国際日本文化研究センター教授.専門分野は情報学,文化交流史.著書『日本の
著作権はなぜこんなに厳しいのか』(人文書院,2011)『コモンズと文化』(東
京堂出版,2010)『〈海賊版〉の思想』(みすず書房,2007)ほか.
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法律学教授.デューク大学を卒業
後,ハーヴァード・ロー・スクールで法務博士号(J.D.)を,カリフォルニア大
学サンディエゴ校で政治学の博士号(Ph.D.)を取得.専門分野は国際法,国際
関係,知的財産.著書 “NGOs in International Treaty-Making," in The
Oxford Guide to Treaties (Oxford University Press, 2012); Does the
Constitution Follow the Flag?: The Evolution of Territoriality in
American Law (Oxford University Press, 2009).
クリストファー・スプリグマン(Christopher Sprigman)
ニューヨーク大学法学部教授.ペンシルヴェニア大学を卒業後,シカゴ大学ロー
・スクールで法務博士号(J.D.)を取得.専門分野はコピーライト,知的財産,
法と経済学,特許,商標.
山形浩生(やまがた・ひろお)
1964年東京生まれ.東京大学都市工学科修士課程およびMIT不動産センター修士
課程修了.大手調査会社に勤務,途上国援助業務のかたわら,翻訳および各種の
雑文書きに手を染める.著書『第三の産業革命――経済と労働の変化』(角川イ
ンターネット講座10,2015)ほか.訳書ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房,
2014)メネズ『無敵の天才たち』(翔泳社,2014)ほか.
森本正史(もりもと・まさふみ)
翻訳家.訳書ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房,2014)ケンリック『野蛮
な進化心理学』(白揚社,2014)ほか.
山田奨治(やまだ・しょうじ)
国際日本文化研究センター教授.専門分野は情報学,文化交流史.著書『日本の
著作権はなぜこんなに厳しいのか』(人文書院,2011)『コモンズと文化』(東
京堂出版,2010)『〈海賊版〉の思想』(みすず書房,2007)ほか.
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2015/11/26)
- 発売日 : 2015/11/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 392ページ
- ISBN-10 : 4622079402
- ISBN-13 : 978-4622079408
- Amazon 売れ筋ランキング: - 594,953位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 38,372位投資・金融・会社経営 (本)
- - 58,296位ビジネス・経済 (本)
- カスタマーレビュー:
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2017年1月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
デザインなどのコピーは、オリジナルを創った人、社会に有益な側面もあることを解いた本である。
文章が冗長で、訳も難しかったのであろう、途中から斜め読みになり、最終的にまともに読めたのは「結論 コピーと創造性」と「解説」のみであった。重要な指摘もどこかに書いてあるかもしれないが、「コピーには有益な面がある」というのを解くだけにしても、小さい文字で350ページ余りびっしり書くだけの本ではない。
文章が冗長で、訳も難しかったのであろう、途中から斜め読みになり、最終的にまともに読めたのは「結論 コピーと創造性」と「解説」のみであった。重要な指摘もどこかに書いてあるかもしれないが、「コピーには有益な面がある」というのを解くだけにしても、小さい文字で350ページ余りびっしり書くだけの本ではない。
2016年2月10日に日本でレビュー済み
そもそも、ビジネスは「真似」から始まるという。
先輩を真似、他社を真似……、「学ぶ」は「真似ぶ」から生まれたとも言う。
もちろん知的所有権などの盗用は「パクリ」であって、
それなりの制裁が課されて然るべきだと思う。
しかし……アイデア、戦略、デザインなどは、果たしてどこまでが「盗用」なのだろう。
本にしてもそうだ。ヒットした本が生まれると、
あっという間に「同工異曲」の本が書店に並ぶ。
それらのなかには、コピペでつくったような、明らかなパクリ本もあるが、
「うーむ、そう来たか」と1番目を唸らせるものもある。
真似する以上、そこまでのものをつくるべきだろう。
「一番手を超えてやる」という気概のない真似を、「パクリ」というのだ。
松下電器(現パナソニック)が「まねした電器」といわれたように、
ヒットした商品に自分たちなりの付加価値をつけ、さらに改良するのは、
「盗用」とは言えないだろう。
ものを作る以上は、
●どこにもなかったものを作ってみせる!
●似たようなものはあるが、クオリティ面でそれを超えている
……このどちらかであるべきだろう。
しかし最近は、ほんのちょっとしたことでも商品登録したり、著作権を主張することが
多くなった。これは、ある意味で「守り」ではないのか。
「真似られるものなら、やってみろ!」
という作り手の気概こそ大事ではないかと思う。
もちろん本書は知的財産の権利を否定する本ではない。
しかし、制限のないところにより新しいものも生まれるとも言う。
また、日米では考え方がまったくと言っていいほど違う。
模倣は、日本人の得意とするところである。
そしてその「模倣」こそ、文化や経済を発展させてきたと言うことを、
改めて考えさせてくれる本でもある。
だが、関係ないが少し高価ではある……。
先輩を真似、他社を真似……、「学ぶ」は「真似ぶ」から生まれたとも言う。
もちろん知的所有権などの盗用は「パクリ」であって、
それなりの制裁が課されて然るべきだと思う。
しかし……アイデア、戦略、デザインなどは、果たしてどこまでが「盗用」なのだろう。
本にしてもそうだ。ヒットした本が生まれると、
あっという間に「同工異曲」の本が書店に並ぶ。
それらのなかには、コピペでつくったような、明らかなパクリ本もあるが、
「うーむ、そう来たか」と1番目を唸らせるものもある。
真似する以上、そこまでのものをつくるべきだろう。
「一番手を超えてやる」という気概のない真似を、「パクリ」というのだ。
松下電器(現パナソニック)が「まねした電器」といわれたように、
ヒットした商品に自分たちなりの付加価値をつけ、さらに改良するのは、
「盗用」とは言えないだろう。
ものを作る以上は、
●どこにもなかったものを作ってみせる!
●似たようなものはあるが、クオリティ面でそれを超えている
……このどちらかであるべきだろう。
しかし最近は、ほんのちょっとしたことでも商品登録したり、著作権を主張することが
多くなった。これは、ある意味で「守り」ではないのか。
「真似られるものなら、やってみろ!」
という作り手の気概こそ大事ではないかと思う。
もちろん本書は知的財産の権利を否定する本ではない。
しかし、制限のないところにより新しいものも生まれるとも言う。
また、日米では考え方がまったくと言っていいほど違う。
模倣は、日本人の得意とするところである。
そしてその「模倣」こそ、文化や経済を発展させてきたと言うことを、
改めて考えさせてくれる本でもある。
だが、関係ないが少し高価ではある……。
2020年5月5日に日本でレビュー済み
「コピーはイノベーションを刺激する」という表題に惹かれて読んでみたが、とにかく難解である。『創造性がコピーによってむしろ活性化する場合があることを・・・米国で一般的にコピーが合法とされている産業の豊富なケーススタディで明らかにする(背表紙より)』ことについて肝心のケーススタディが、米国では常識的なことやお茶の間であたりまえに観られている番組のことかもしれないが、日本人にはどうもピンとこない。わかりやすくするための喩えが余計にわかりにくさを助長しているという悪循環に陥っており、とにかく結論だけ先に読もう、という気になってしまう点が大変残念であった。論理の元になっているケーススタディや判例には可能な限り元文献への案内が記載されているので、主として著作権問題の事例集としての利用価値はあるかも、とは思いました。
2016年6月14日に日本でレビュー済み
知的財産権の保護強化は本当にイノベーションを促進するのか?
特許権や商標権による保護の必要性などもちろん理解できるのだが、著作権をめぐる訴訟のわかりにくさに辟易していた読者としては、本書は実に痛快であった。本書は「(分野によっては)パクリ(knockoff)が産業を活性化させる」という観点から、いろいろと実例(独創的ファッション、料理レシピ、コメディのネタなど)を挙げている。これらの分野なら、オリジナルと区別がつかないような真似を許してはマズいが、区別がつく程度のパクリなら、あとは大衆のセンスに任せればいいのではないか。オリジナルを上回るようなパロディが出てきてくれるならその分野は活性化する。
さらに、ITのオープンソースや金融商品開発(デリバティブ)なども、オープンだからこそイノベーションの成果が広まる。
ただし、巻末解説にある通り、本書はあくまでも米国の法規制・法文化を前提に書かれた本である。日本の「著作権法」は、米の「Copyright Act」とはつくりがかなり違うようだし、そもそも「争いごとは訴訟で決着をつければいい」という考え方だからこそ、米国ではリスクをとって、イノベーションを現実のビジネスに繋げやすいのだと思う。日本では「政府が制度を整えるまで動きにくい」という案件が多いのではなかろうか。巻末解説を巻頭に置いてくれていれば、途中モヤモヤしないで済んだのになあと思った。これから読む人は、解説(わずか6ページ)を先に読むのをおすすめします。
特許権や商標権による保護の必要性などもちろん理解できるのだが、著作権をめぐる訴訟のわかりにくさに辟易していた読者としては、本書は実に痛快であった。本書は「(分野によっては)パクリ(knockoff)が産業を活性化させる」という観点から、いろいろと実例(独創的ファッション、料理レシピ、コメディのネタなど)を挙げている。これらの分野なら、オリジナルと区別がつかないような真似を許してはマズいが、区別がつく程度のパクリなら、あとは大衆のセンスに任せればいいのではないか。オリジナルを上回るようなパロディが出てきてくれるならその分野は活性化する。
さらに、ITのオープンソースや金融商品開発(デリバティブ)なども、オープンだからこそイノベーションの成果が広まる。
ただし、巻末解説にある通り、本書はあくまでも米国の法規制・法文化を前提に書かれた本である。日本の「著作権法」は、米の「Copyright Act」とはつくりがかなり違うようだし、そもそも「争いごとは訴訟で決着をつければいい」という考え方だからこそ、米国ではリスクをとって、イノベーションを現実のビジネスに繋げやすいのだと思う。日本では「政府が制度を整えるまで動きにくい」という案件が多いのではなかろうか。巻末解説を巻頭に置いてくれていれば、途中モヤモヤしないで済んだのになあと思った。これから読む人は、解説(わずか6ページ)を先に読むのをおすすめします。
2019年2月27日に日本でレビュー済み
テーマや扱うトピックは面白いし、読みたくなるが、文章がやや読みづらい。これは翻訳だからというよりも、もともとの原本も読みづらい本であるのかもしれない。内容的には新書サイズでもまとめられる気がする。ただ、小さい文字で書かれた分厚い本に抵抗感がない人であれば面白く読めると思う。
2021年1月21日に日本でレビュー済み
著者のラウスティアラとスプリグマンは法学者だが、この本の内容は経済学だ。著者はデータとエビデンスによって、社会通念上、悪とおもわれている商品コピーが、実は創造のインセンティブを阻害せず、むしろ経済活動の活性化に寄与している部分があると指摘している。
日本の法学者ではこのようなチャレンジングな内容は書くことはできないだろう。巻末の山田奨治による解題は、まさに興醒めを催す、日本人の発想によるステレオタイプな感想だ。山田氏は、この本の本質を理解せず、日本と米国との法律のたてつけの相違点を過剰にクローズアップしている。日本と米国の法律が違うことくらい読者はわかっている。この本の本質は、財やサービスの模倣が時には社会全体の効用を向上させるという経済面なのだ。これには国籍は関係なく、経済にビルトインされている普遍的な特徴で、ラウスティアラとスプリグマンは、豊富な事例を用いて、その証明に成功している。
日本の法学者ではこのようなチャレンジングな内容は書くことはできないだろう。巻末の山田奨治による解題は、まさに興醒めを催す、日本人の発想によるステレオタイプな感想だ。山田氏は、この本の本質を理解せず、日本と米国との法律のたてつけの相違点を過剰にクローズアップしている。日本と米国の法律が違うことくらい読者はわかっている。この本の本質は、財やサービスの模倣が時には社会全体の効用を向上させるという経済面なのだ。これには国籍は関係なく、経済にビルトインされている普遍的な特徴で、ラウスティアラとスプリグマンは、豊富な事例を用いて、その証明に成功している。
2016年2月11日に日本でレビュー済み
> なぜそれらの業種は繁栄しているのか? インセンティブとイノベーションの関係
> から6つの教訓を探り,知的財産ルールの未来を指し示す.
ここにも書いてあるように"業種"として繁栄するための教訓が記載されている書籍です。
"企業"として繁栄するためにはそれらの教訓をどう自社に生かすか考える必要はありますが、
そこを考える上でとても参考になる書籍でした。
> から6つの教訓を探り,知的財産ルールの未来を指し示す.
ここにも書いてあるように"業種"として繁栄するための教訓が記載されている書籍です。
"企業"として繁栄するためにはそれらの教訓をどう自社に生かすか考える必要はありますが、
そこを考える上でとても参考になる書籍でした。