三島憲一さんの本で教わったのだが、昔の
文学でも、絵画でも、音楽でも、どうも学校では
かつては、歴史のコンテクストぬきで、読者は
作品にそれこそ、ナイーブに直接向き合う、そして
芸術の視点からだけ、観賞する、事が多い。
たまたま、アドルノというドイツの思想家の本を見た
ら、これらは社会の産物なのだから、近代社会のイ
デオロギーをおびている、そこで、例えば、利益を
めざす、商品でもあること、などを考慮しなければ
ならない、
芸術作品は自由と、自発性を目指して作られるもの
なのだが、社会的な拘束を受け、反対に人々を
現状に縛り付ける結果に終わることがある、と。
それから、このアドルノさんは、作品を鑑賞するとき、
社会との関係を見るだけでなく、その作品の中の、
表現の具体的な細部、音楽なら、メロディや作詞の中
にその社会のどういう性格があらわされているかを
みなければならないと、言っているようだ。
そして、この細見さんのこの本は、ドナドナや、ボブ・デ
ィランのうたには、何が表現されているのかを、鮮やかに
示してくれるのである。
ディランの@ハリケーン」は、裁判にかけられたプロボク
サーの歌で、ディランの歌のおかげで、15年後に連邦裁
判所が無実を判決したそうである。
ハリケーンは映画になっている、とのこと、
これも見たいものだ。
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理想の教室 ポップミュージックで社会科 単行本(ソフトカバー) – 2005/6/10
細見 和之
(著)
「ドナドナ」はユダヤ人迫害や虐殺と関係していた。「思い出のグリーングラス」のポイントは? 身近な歌のなかに、どのような社会的な場面や記憶、人々の思いがこめられているか。ジョーン・バエズ、ジャニス・イアン、ボブ・ディラン、友部正人、中島みゆきらの歌を具体的に採りあげ、音楽と社会の関係について考えます。
- ISBN-104622083043
- ISBN-13978-4622083047
- 出版社みすず書房
- 発売日2005/6/10
- 言語日本語
- 本の長さ158ページ
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登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2005/6/10)
- 発売日 : 2005/6/10
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 158ページ
- ISBN-10 : 4622083043
- ISBN-13 : 978-4622083047
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,063,677位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 278位ポピュラー音楽論・理論
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2015年12月4日に日本でレビュー済み
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2015年11月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中島みゆきさんの歌の考察の部分が素晴らしかったです。著者の総括的な中島みゆき論も読んでみたいです。
2009年8月4日に日本でレビュー済み
この本で扱っている歌手は、ジョーン・バエズ、ジャニス・イアン、ボブ・ディラン、(森山良子)、友部正人、中島みゆき。
ジャニスとボブはユダヤ系だし、ジョーンはユダヤ差別に関わる「ドナドナ」を歌った。森山は「日本のジョーン・バエズ」と呼ばれたらしいが、ここで登場するのは訳詞の問題に絡んでで、たぶん著者に彼女への思い入れはない。だからカッコつき。友部はあさま山荘事件、中島はペルー日本大使公邸占拠事件に関する歌で採り上げられる。要するに、どれもこれもプロテストソングってこと。
著者はこの本で、複雑なことはしていない。歌を採り上げ、歌詞を紹介し、その含意を探る、その繰り返し。ただ採り上げる歌手と歌に「偏向」があるワケで、そこにズルさもある。
しかしより本質的なズルさは、著者がさまざまなプロテストソングを共感的に紹介しつつ、自身はプロテストを回避するところにある。例えば中島「4.2.3」について「事件やその背景については、ここではこれ以上お話ししないことにします」と断りをいれ、直後に「ともあれ、この曲はたんにペルーのあの事件と中島さんが向き合っているからというだけでなく、詩的な表現としてもとてもすぐれています」(p147)と話を審美的な方向に逸らしてしまう。
最初からメタな話なら、それも良い。しかしベタを売り物にした構成で、自分だけメタに立つのはズルイだろう。たとえ高校生向けを意識したとしても、あからさまに「偏向」した本を書くからには米国の歌手たちを胸壁と為したりせず、自らの立場を旗幟鮮明にすべきであったように思う。立場があるなら、ね。
ジャニスとボブはユダヤ系だし、ジョーンはユダヤ差別に関わる「ドナドナ」を歌った。森山は「日本のジョーン・バエズ」と呼ばれたらしいが、ここで登場するのは訳詞の問題に絡んでで、たぶん著者に彼女への思い入れはない。だからカッコつき。友部はあさま山荘事件、中島はペルー日本大使公邸占拠事件に関する歌で採り上げられる。要するに、どれもこれもプロテストソングってこと。
著者はこの本で、複雑なことはしていない。歌を採り上げ、歌詞を紹介し、その含意を探る、その繰り返し。ただ採り上げる歌手と歌に「偏向」があるワケで、そこにズルさもある。
しかしより本質的なズルさは、著者がさまざまなプロテストソングを共感的に紹介しつつ、自身はプロテストを回避するところにある。例えば中島「4.2.3」について「事件やその背景については、ここではこれ以上お話ししないことにします」と断りをいれ、直後に「ともあれ、この曲はたんにペルーのあの事件と中島さんが向き合っているからというだけでなく、詩的な表現としてもとてもすぐれています」(p147)と話を審美的な方向に逸らしてしまう。
最初からメタな話なら、それも良い。しかしベタを売り物にした構成で、自分だけメタに立つのはズルイだろう。たとえ高校生向けを意識したとしても、あからさまに「偏向」した本を書くからには米国の歌手たちを胸壁と為したりせず、自らの立場を旗幟鮮明にすべきであったように思う。立場があるなら、ね。
2005年7月16日に日本でレビュー済み
子どもの頃から私は「ドナドナ」が嫌いでした。音楽の時間、歌う時も縦笛で吹く時も嫌いでした。「ドナドナ」=「子牛が売られていく歌」とかわいそうな歌なのに朗らかに合唱するなんて、嫌いでした。
でも忘れられないメロディー「ドナドナ」。本書では、実はこの「ドナドナ」はユダヤ人迫害の歌だと、音楽の成立から謎解きをします。
「歌の持つ社会的背景から時代を読みとろう」というのが本書の目的、そして社会学的アプローチの紹介ということになります。「高校生が読んでわかりやすい」というのがこの「理想の教室」シリーズの一貫したテーマですので、大学の先生はどういうアプローチで研究と向かい合っているか(ひいては高校生が自分の興味と進路を発掘する)、ちょっとポップなアプローチを例にしているのが本書です。
例をあげると、森山良子(といっても私は知らない世代)のヒット曲「思い出のグリーングラス」(日本語版)と同英語版では全くシチュエーションが違う。ここに民族的背景や社会的背景がある(それを無視するとその歌は「売れない」ということ)ことを時代経緯などから考察しています。
他にボブ・ディラン、友部正人(「日本のボブ・ディラン」と呼ばれていたそうです)、中島みゆきを取り上げて、それぞれの歌い手がその曲にどんなメッセージを込めて作詞作曲したのか、考察しています。
その人の人生、社会状態、世相、視点などが社会学の考察となる事が面白いです。
こういう勉強もあるんだ!ということが、特に高校生読者には新鮮に思えるでしょう。廉価ですし、分量も多すぎない。社会学に開眼!お薦めです!
でも忘れられないメロディー「ドナドナ」。本書では、実はこの「ドナドナ」はユダヤ人迫害の歌だと、音楽の成立から謎解きをします。
「歌の持つ社会的背景から時代を読みとろう」というのが本書の目的、そして社会学的アプローチの紹介ということになります。「高校生が読んでわかりやすい」というのがこの「理想の教室」シリーズの一貫したテーマですので、大学の先生はどういうアプローチで研究と向かい合っているか(ひいては高校生が自分の興味と進路を発掘する)、ちょっとポップなアプローチを例にしているのが本書です。
例をあげると、森山良子(といっても私は知らない世代)のヒット曲「思い出のグリーングラス」(日本語版)と同英語版では全くシチュエーションが違う。ここに民族的背景や社会的背景がある(それを無視するとその歌は「売れない」ということ)ことを時代経緯などから考察しています。
他にボブ・ディラン、友部正人(「日本のボブ・ディラン」と呼ばれていたそうです)、中島みゆきを取り上げて、それぞれの歌い手がその曲にどんなメッセージを込めて作詞作曲したのか、考察しています。
その人の人生、社会状態、世相、視点などが社会学の考察となる事が面白いです。
こういう勉強もあるんだ!ということが、特に高校生読者には新鮮に思えるでしょう。廉価ですし、分量も多すぎない。社会学に開眼!お薦めです!