室町時代の経済がもっと知りたいと思い本書を購入してみました。本書が扱う時代の中心は、主に６代将軍足利義教の時代から豊臣秀吉までの時代です。価格は決して安くないですが、知識のない自分にとっては、室町人の「経済感覚」「精神」「助け合い」「室町人と現代人の共通点」など様々なことを学べました。
参考までに、少しだけ触れると
現代でも様々な場面で「贈与」行為は数多くありますが、誰にどんな物・またはどの程度の物をあげれば良いという基準は存在しますが、室町時代にも贈与の際の基準が決まっていたことには驚きました。ただ、現代と違うのは「贈与品」への取扱い方の違いです。現代では例えば指輪等を貰ったら、それは大事にとっておくことが多いと思われますが、室町時代ではその指輪をまた他人へ贈与することはよくあることであり、最終的に、はじめの贈与者にその指輪が贈与品として戻ってくることがあったことが紹介され、贈与品の循環について語られており、とても面白いものでした。※指輪はあくまでもたとえです。
また、６代将軍足利義教から、家に訪問したい旨の依頼があり、迎える家の家人と将軍家関係者との間の日程調整の折衝が行われたり、家の修築をしたりと、迎える側は大忙し。また調度品などは「買って揃えるのではなく、借りて揃える」という様子が鮮明に記されており、新鮮でした。また、この宴席の準備に奔走していた家来は、現代では特に行いませんが、当時はごくあたり前にやっていたことに付き合い、完全徹夜状態で疲れ切った状態で当日の酒宴に臨み、酒のまわりが早く、借り物の調度品にやってしまいます。しかも将軍様のいる前で。さてどうなったか。結果は現代人の私にとってはとても驚くべきものでした。また、この訪問に臨んだ６代将軍足利義教。ものすごく礼儀正しく、そしてきちんと見るべきものを見ており、訪問が終わってから、迎えてくれた側に対しての心配りなども垣間見えます。私は正直かっこいいと思いました。
その他、
１・銭の流通量が激減した時代、どのようなことがおきたのか。
２・室町時代の市場経済と室町人のしたたかさ。
３・物の特定産地のブランド化がすでにあったこと。
４・室町時代の労働への対価に関する考え方。
５・室町時代の債権と債権回収に関する室町人の考え方。
等、様々なことを学ぶことが出来ました。
本書を読み終えて、経済だけでなく、室町人の考え方の一端を垣間見えることが出来、室町時代の鼓動が感じられ、価格は高かったけど、ものすごく面白かったです。また室町の人々は案外可愛らしくも感じられました。
最後に本書の目次を記します。本書購入の参考になれば幸いです。
（序論）
１・構成と視角
・贈与
・貨幣
・架橋
・価値の生滅と移転
２・若干の理論的問題
・贈り物と商品
・権力と互報性
・原始の刻印
（第一章・中世の贈与）
１・神への贈与―贈与と収取
・年貢本質論
・贈与の在地転嫁―トブラヒ、助成論
２・人への贈与―「例」と「礼」
・贈与社会の実態
・「例」と贈与
・「礼」と贈与
３・贈与と経済
・贈答品の流用、循環
・折紙銭
・献物と売物
（第二章・折紙銭と１５世紀の贈与経済）
１・貨幣の贈与と折紙銭
２・折紙銭の経済的機能
３・折紙銭と室町幕府財政
（第三章・御物の経済―室町幕府財政における贈与と商業）
１・常御所の料足引付―問題の所在
２・贈与としての守護出銭
３・贈答品市場
４・同朋衆と御倉奉行
５・「遣唐扇子」と献物システム
６・「御物」と貴族社会
（第四章・宴会と権力）
１・非ポトラッチ社会と宴会
・宣教師の見た日本の宴会
・宴会をめぐるポトラッチ的諸局面
・宴会の費用負担方法
２・宴会の具体相―「看聞日記」を中心に
・晴の宴会
・褻の宴会
（第五章・銭貨のダイナミズム―中世から近世へ）
１・量産の１０年・どこまでを共有できたか
２・前提としての１４－１５世紀
３・大内氏撰銭令と明銭論争―１５世紀末の動向
４・階層化のメカニズム―１６世紀前半の動向
５・低銭の地位上昇、階層性の収束、精銭の空位化―１６世紀後半の動向
６・寛永通宝の発行と銅資源問題―１７世紀前半の動向
７・貨幣の能動性をめぐって
（第六章・中世における物価の特性と消費者行動）
１・価格概念
２・販売単位と価格変動の諸要因
３・季節間価格差と消費者行動
４・地域間価格差と消費者行動
５・中世における労働観の問題
（第七章・精銭終末期の経済生活）
１・貨幣
２・売買
３・労働
４・贈与
（第八章・借書の流通）
はじめに―手形類をめぐる２つの視角
１・文書機能論の新展開
２・債権流通論の現状
３・信用経済のとらえ方
・信用経済は物々交換（商品貨幣）の時代に発達する
・記号、標章としての信用貨幣
４・借書の流通
・史料の提示
・史料の分類
・借書流通の歴史的位置
終章・中世における債権の性質をめぐって
全３０３Ｐです。
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