前作の「ボウエン・ミステリー あの薔薇を見てよ」より、
さらに内容が多様になっている印象です。
ただ、前回よりは意味の解釈が難しい話があるような気がします。
「そしてチャールズと暮らした」
一見、エリートでルックスも悪くなく、
理想の夫と見えたチャールズだったが、
彼の身内の話から徐々に明らかにされていく、
夫の正体とは。
何となく、主人公のこれからの結婚生活を危ぶんでしまうような、
重苦しさを湛えた話です。
「バレエの先生」
これも、ボウエン流の、「最も美しいものの中に、最も醜悪なものが潜む」
という事でしょうか？
「相続ならず」
怪しい運転手プロスコもそうなんですが、
主人公の刹那的で退廃的で危うい感じのダヴィナといい、
彼女がつるんでいる、自堕落で無目的な感じの仲間達といい、
どことなく不吉な予感を孕んだ感じがする
話でした。序盤から凄い展開がある訳でもないんですが。
私はどちらかというと、健全な常識人といった感じの、
マリアンの方に感情移入して読んだので尚更でした。
「悪魔の恋人」
現在は妻となり母となり、平穏な生活を送っている主人公に数十年後に届く、
消息不明になっていたかつての婚約者からの一通の手紙、
などというと、感傷的なムードが漂いそうですが、
これはいろいろと怖いです。
「幸せな秋の野原」
これは題名も綺麗ですし、ストーリー自体は、現在の館の住人であるメアリーと過去の住人である、
サラの記憶が時を越えて結びつく、という何かファンタジーが入っているような感じで、
いまいち理解しにくい部分もあるのですが、
晩秋の美しい自然描写といい、儚い初恋といい、何か詩情を湛えた美しい物語
という感じです。
「蔦がからまる階段」
母の親友で初恋の女性リリアンの、ドロドロと渦巻く「女」に圧倒されてしまった、
少年の悲劇？という感じでしょうか。
「あの日一日が闇の中に」
無垢と経験の葛藤ですか、
これは普遍的なテーマなのかもしれないですね。
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