企業の人事・採用担当者として本書を興味深く読んだ。
本書の最大の特徴は随所に統計的な裏付けを与えつつ(ただし
一部牽強付会と思われる箇所あり)学生と直接触れ合う大学の
「教官」としての立場から得た、著者の経験的感覚的な分析を
加えているところであろう。
特に以下の指摘は「なるほど」と思えるものだ。
・学生が「バイト」経験で目にする「正社員」の労働条件の苛烈
さから、シューカツ戦線をそもそも放棄していることがあるのでは
・学校が「就職あっせん所」としての能力を失ってきていること
と、「学校文化」の規範的強制力が失われていることは同期している
現状の、「正社員」では「燃え尽き」て、「ハケン社員」では
「使い捨てられる」若者の労働環境に対する、著者の提示する処方箋
は大きく以下の二点。
1.「組合」の復権により、使用者側への抵抗力を増すことで、労働
条件を適正化させる。
2.職業教育(これが個別技能を育成させる「職能教育」を指している
わけではないことは注意が必要だろう)の充実により、若者へ働くこと
に対する希望・展望を与えること。
それぞれの議論は「誤っている」とまでは言い難い。(人事担当者とし
ては正直にいって「○○ユニオン」系に対する胡散臭さは拭いきれない
のであるが)
ただし、本書に決定的にかけているのは、「燃やし尽くし」「使捨て」
ている側の、労働力のディマンドサイドたる企業に対する目配りだ。
よっぽどの悪徳企業を除いては、好きこのんで「燃やし尽くし」ている
わけでも「使い捨て」ているわけではない。そう「せざるをえない」のだ。
日本企業がそれで不当に利益(=搾取)をあげているわけではないことは
近年の個々の企業の決算書をみても、日本のGDP成長率をみても明らかだ。
(※ちなみに、大企業が中心であるが、労働時間については近年、大幅に
改善傾向にある。また、モーレツ社員やら過労死やらの語源をみてみても、
苛烈な労働環境で働く正社員の姿は、何も近年に限った話ではない)
企業のHR管理がなぜ現状のようになってしまったのか、ディマンドサイド
の切実さを理解しないことには、本書の提案も画に描いた餅となることは言う
までもないことで、結局はお上の「法規制」頼みになってしまうことだろう。
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若者が働くとき: 「使い捨てられ」も「燃えつき」もせず 単行本 – 2006/2/1
熊沢 誠
(著)
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- ISBN-104623045935
- ISBN-13978-4623045938
- 出版社ミネルヴァ書房
- 発売日2006/2/1
- 言語日本語
- 本の長さ220ページ
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登録情報
- 出版社 : ミネルヴァ書房 (2006/2/1)
- 発売日 : 2006/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 220ページ
- ISBN-10 : 4623045935
- ISBN-13 : 978-4623045938
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2019年9月23日に日本でレビュー済み
この本は、労働問題研究の第一人者の熊沢誠氏が若者の労働について論じたものである。本書全体の内容をざっと要約してみよう。
熊沢氏によれば、日本の若者が投げ込まれる労働市場では、フリーターと正社員が地つづきの存在になっている。つまり、働きすぎて燃え尽きた正社員の将来の姿が、安い賃金で使い捨てられるフリーターなのだ。社会のひどい構造は、このように必ず個人の受難として現われてくる。しかし、若者自身が社会構造について深く学んでいなければ、なかなか批判精神は身につかない。状況の中に問題を発見し、それを解決しようと試みるためには、どうしても批判精神が必要なのだ。
この本ではまた、労働市場全般の厳しい状況が指摘されるだけでなく、若者が離職する原因になる具体的状況も細かく検討されている。つまり、仕事内容・労働条件・(職場の人間関係も含めた)労働環境をめぐる具体的な状況が問われている。若者の労働を論じる類書には、このような着眼点がないと言えよう。この着眼点の具体的な切れ味については、実際に読んで確かめていただきたい。
熊沢氏のそういう独自の視点から導き出される答えは、定着できる職場と継続できる仕事こそが若者には何よりも必要ということである。さらに付け加えれば、安定した職場および仕事が成り立つためには、若者自身が仕事内容・労働条件・労働環境を改善したいときに発言できる仕組み、たとえば労働組合などがなくてはならないのだ。この仕組みの具体的な内容についても、実際に読んで確かめていただきたい。
そして本書の最後は、「若者よ、使い捨てられるな、燃え尽きるな」という温かいメッセージで締めくくられている。
このような『若者が働くとき』という本は、若者の労働を知りたいときの必読書なのだ。
熊沢氏によれば、日本の若者が投げ込まれる労働市場では、フリーターと正社員が地つづきの存在になっている。つまり、働きすぎて燃え尽きた正社員の将来の姿が、安い賃金で使い捨てられるフリーターなのだ。社会のひどい構造は、このように必ず個人の受難として現われてくる。しかし、若者自身が社会構造について深く学んでいなければ、なかなか批判精神は身につかない。状況の中に問題を発見し、それを解決しようと試みるためには、どうしても批判精神が必要なのだ。
この本ではまた、労働市場全般の厳しい状況が指摘されるだけでなく、若者が離職する原因になる具体的状況も細かく検討されている。つまり、仕事内容・労働条件・(職場の人間関係も含めた)労働環境をめぐる具体的な状況が問われている。若者の労働を論じる類書には、このような着眼点がないと言えよう。この着眼点の具体的な切れ味については、実際に読んで確かめていただきたい。
熊沢氏のそういう独自の視点から導き出される答えは、定着できる職場と継続できる仕事こそが若者には何よりも必要ということである。さらに付け加えれば、安定した職場および仕事が成り立つためには、若者自身が仕事内容・労働条件・労働環境を改善したいときに発言できる仕組み、たとえば労働組合などがなくてはならないのだ。この仕組みの具体的な内容についても、実際に読んで確かめていただきたい。
そして本書の最後は、「若者よ、使い捨てられるな、燃え尽きるな」という温かいメッセージで締めくくられている。
このような『若者が働くとき』という本は、若者の労働を知りたいときの必読書なのだ。
2006年4月20日に日本でレビュー済み
この本の長所
分析。若者の就職難を正社員まで絡めた視点から現実を的確に暴き出している。すなわち、非正規雇用として企業が使い捨てしていたり、労働現場における不当な厳しさに耐えきれずやむを得ずニートになる人がいる一方で、労働基準法などまるでないかのような正社員の環境の悪さを正当に指摘している。
この本の短所
1、p118からの若者批判。自分探しは若者が勝手にやっているというより企業側が求めているという側面が強い(各種就職本・自己啓発本を見れば容易にわかる)、「しんどい」のを肯定するだけではやはり状況は変わらないのでは、といった批判が可能だと思う。
2、提言。職業教育を学校でやるのははたして可能か疑問(高校段階では相手にされない可能性が高いし(企業ははたして高卒にシフトするか?)、大学段階で体系的・専門的学問のほかに職業教育に費やせるのか疑問だから)。
結論
長所星5つ、短所星2つだが、読み進めるにつれて短所が目に付いたので、短所寄りの星3つ。
分析。若者の就職難を正社員まで絡めた視点から現実を的確に暴き出している。すなわち、非正規雇用として企業が使い捨てしていたり、労働現場における不当な厳しさに耐えきれずやむを得ずニートになる人がいる一方で、労働基準法などまるでないかのような正社員の環境の悪さを正当に指摘している。
この本の短所
1、p118からの若者批判。自分探しは若者が勝手にやっているというより企業側が求めているという側面が強い(各種就職本・自己啓発本を見れば容易にわかる)、「しんどい」のを肯定するだけではやはり状況は変わらないのでは、といった批判が可能だと思う。
2、提言。職業教育を学校でやるのははたして可能か疑問(高校段階では相手にされない可能性が高いし(企業ははたして高卒にシフトするか?)、大学段階で体系的・専門的学問のほかに職業教育に費やせるのか疑問だから)。
結論
長所星5つ、短所星2つだが、読み進めるにつれて短所が目に付いたので、短所寄りの星3つ。
2006年2月21日に日本でレビュー済み
「働けない若者」が社会問題になっている。『ニートって言うな』という新書も出た。政府の施策は混迷している。若者労働の分野で議論と施策が錯綜しているのだ。本書は、その混乱状況に整理をつける提言として時宜にかなっている。
著者は、1938年生まれ、長く労働問題で先鋭的な発言を続けながら教員生活をも続けてきた。いま、教員を退任して在野の労働研究家に転じる節目に、若者へのメッセージを贈ろうと本書を著した。自身への励ましの意味もあろう。
さらには、従来、若者労働を専門にしてこなかった経緯から、いま一番問題にしたいのがその若者労働だとして一里塚を立て、新たな戦闘を始めようとしているようだ。
本書は、1999年から有志で続けてきたという「職場の人権」研究会の成果を背景にし、未来の社会を託す若者たちに良い労働を贈りたいと、労働組合の人たちには立ち上がれと、若者たちにはしんどい労働があっても「したたかに」働き、余暇をも楽しみ、生き抜けと呼びかけ、企業経営者たちには、労働法、社会保障ルールを守れと迫る。政府の施策にも目配りがしてあり、注文もつけている。
長く労働について経営者任せの気味があった日本で、企業自体が従来の労働施策では立ち行かなくなる時期にある。『新卒ゼロ社会』という新書も出ている。大きく事態が動き始めている。経営陣自体が労働側と真摯に向き合わねばならない状況にある。本書がそうした現在に道筋をつけてくれるかと期待する。多くの人々に読まれてほしい。
著者は、1938年生まれ、長く労働問題で先鋭的な発言を続けながら教員生活をも続けてきた。いま、教員を退任して在野の労働研究家に転じる節目に、若者へのメッセージを贈ろうと本書を著した。自身への励ましの意味もあろう。
さらには、従来、若者労働を専門にしてこなかった経緯から、いま一番問題にしたいのがその若者労働だとして一里塚を立て、新たな戦闘を始めようとしているようだ。
本書は、1999年から有志で続けてきたという「職場の人権」研究会の成果を背景にし、未来の社会を託す若者たちに良い労働を贈りたいと、労働組合の人たちには立ち上がれと、若者たちにはしんどい労働があっても「したたかに」働き、余暇をも楽しみ、生き抜けと呼びかけ、企業経営者たちには、労働法、社会保障ルールを守れと迫る。政府の施策にも目配りがしてあり、注文もつけている。
長く労働について経営者任せの気味があった日本で、企業自体が従来の労働施策では立ち行かなくなる時期にある。『新卒ゼロ社会』という新書も出ている。大きく事態が動き始めている。経営陣自体が労働側と真摯に向き合わねばならない状況にある。本書がそうした現在に道筋をつけてくれるかと期待する。多くの人々に読まれてほしい。