何気なく習慣で日記を付けている人は多いと思うが、もし仮にそれらが何百年後に発見されたとしたら…?
それは当時の事件や世相を知る為の貴重な資料となり得る事は間違いない。
ましてや中世の有力者達の日記ともなると、元々子孫に受け継ぐもの、即ち後世に残す事を目的としたものである。
儀式やしきたりについてのマニュアルとして、或いは日次記、軍記として…その価値には計り知れないものがあり、正しく「宝の山」と言っても過言ではない。
然しながら今現在、それらを読みたいと熱望しても意外にも叶わない事が多い。
何故なら、広く読み親しまれている物はほんの一握りに過ぎず、実は大半が入手困難な物が多いのだ。
そして、こうした残念な状況を見事に打開してくれたのが本書である。
本書は中世前期から戦国期に至るまで、全部で16の日記を取り上げている。
それぞれの日記について各執筆者が自由に論じるという形式であるが、日記を通して歴史的背景を語るものもあれば、記した本人の人物像に迫るものもあり、更には日記から垣間見える当時の生活に焦点を当てたものまであって、その多彩な切り口が非常に面白い。
また、コラムとして各時代に関する丁寧な説明や見解が示されており、実に行き届いた配慮がなされている。
更に、本書の最も優れている点は、こうした形式の本はとかく各執筆者が自由気ままに論を展開して無秩序になりがちだが、全くそうした混乱がない所である。
例えば、本書は院政期を生きた藤原宗忠の『中右期』で始まり、保元の乱で散った藤原頼長の『台記』へと引き継がれ、乱後の摂関家を支えた平信範の『兵範記』に続く…という具合に、それぞれが重なり合いながらも実は綺麗な一本の線で繋がっている。
一見独立しているように見えがちな日記も、実は延長線上に見事に食い込まれており、心憎いばかりの編集がなされているのだ。
まさに、その名の通り『日記で読む日本中世史』として、私達は日記と共に歴史を歩む事が出来るのである。
中々入手出来ない日記を取り上げた斬新さ、それぞれの論の新鮮さ、更には編集の丁寧さと親切さ…どれを取っても申し分なく、久しぶりに「自信を持って太鼓判を押せる」名著である。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
日記で読む日本中世史 単行本 – 2011/11/20
- ISBN-10462305778X
- ISBN-13978-4623057788
- 出版社ミネルヴァ書房
- 発売日2011/11/20
- 言語日本語
- 寸法15 x 2.1 x 21 cm
- 本の長さ332ページ
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
出版社より
![]() |
![]() |
![]() |
|
---|---|---|---|
論点・日本史学 | 日本の歴史 近世・近現代編 | 日本の歴史 古代・中世編 | |
カスタマーレビュー |
5つ星のうち4.5
30
|
5つ星のうち4.4
3
|
5つ星のうち2.0
1
|
価格 | ¥3,960¥3,960 | ¥3,080¥3,080 | ¥3,850¥3,850 |
書籍紹介 | 本書は、広く日本の歴史に興味をもつ読者を対象に、これまでの日本史研究において注目されてきた様々な論点を網羅することで、具体的なかたちで歴史学の魅力を伝えるテキスト。各時代の見取り図を示す〈総論〉に続き、各項目は〈議論の背景〉〈論点〉〈探究のポイント〉の三パートから構成され、語句説明やクロスリファレンスも充実。歴史研究の面白さを体感できる好評書、待望の第三弾! | この列島で展開した400年の歴史 江戸幕府、黒船来航、明治維新、太平洋戦争、高度経済成長……日本の近世・近現代史の流れがよくわかる、待望の通史。 江戸幕府成立から明治維新、太平洋戦争から現代に至るまで、日本ではいかなる歴史が展開し、どのような人々が活躍したのか。最新の政治・外交史の研究成果や、文化史、思想史、文学などの隣接領域の動向も踏まえ、歴史の流れを容易に把握できるよう叙述。日本史のさらなる理解のための全体像を読者に提示する。日本近世・近現代史の待望の通史。 | ヤマト王権成立から戦国時代までの1200年 ヤマト王権成立から律令体制の確立、摂関期から院政期、そして武家政権から戦国時代に至るまで、日本ではいかなる歴史が展開し、どのような人々が活躍したのか。本書では、日本史研究の最新成果や、文化史、思想史、文学など隣接領域の動向も踏まえて、歴史の流れを容易に把握できるよう叙述。日本史のさらなる理解のための全体像を読者に提示する。日本古代・中世史の待望の通史。 |
商品の説明
著者について
1958年東京都生まれ。愛知学院大学文学部教授。著書「日記の家」「王朝日記論」ほか
登録情報
- 出版社 : ミネルヴァ書房 (2011/11/20)
- 発売日 : 2011/11/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 332ページ
- ISBN-10 : 462305778X
- ISBN-13 : 978-4623057788
- 寸法 : 15 x 2.1 x 21 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 765,517位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中4.6つ
5つのうち4.6つ
7グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2020年7月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
気に入った内容は、タイトルの様です。資料でなく読み物なので本文の文字をもう少し大きくして読み易くしないと読者が苦労します。その点評価を-1☆としました。
2016年5月2日に日本でレビュー済み
いち中世史ファンとしてとても楽しませてもらいました。中世史に関する本を読んでいて基礎資料たる日記が気になっていました。「日記の家」や日記が相続・売買の対象として重視されていたことなど、これまで薄々感じていたことが、明確になりました。構成について言えば、16の日記が取り上げられていますが、各日記に割り振られた分量がほぼ一定で、それも素人の私でも飽きることのない量でした。第Ⅰ部から第Ⅲ部まで各部の最初にその時代の解説がされており、理解を助けてくれました。内容としては、例えば『民経記』に「その儀のなかで正しい作法の順序より早く笏を手に取ってしまった」『言継卿記』に「今日、根代にて人夫これを雇う。たいがい女なり。」など、その時代の実態・気分が日記に反映されており、今後も中世史を読むにあたって参照したいと思います。