内容はほぼビアフラ戦争の経緯が客観的に記されている。「王立特許」なる語句が説明なしに出てきたりと、ちょっと不親切な部分もあるが、概ね言葉も平易でわかりやすい。
ただ不安感をそそられるのは、タイトルやあとがきからして、著者はビアフラ共和国にシンパシーを感じているように見せながら、「『戦争』とは、それがいかなる形態をとろうとも、『殺人行為』にほかならない」としか歴史に対する価値判断をしようとしないところである。ビアフラとナイジェリアのどちらが悪かったか、などは求めないが、どちらの側に、どういった理があり、非があったのか、それを抜きに「戦争は殺人だ」と言ってもあまり意味があるとは思えない。どうして著者がこの本を書きたかったのか、誰に向けて書いたのか、理解に苦しむ。「なにゆえ人類は、お互いの殺戮を繰り返すのであろうか」という表紙にある問いに全く答えようとしていない。不可解である。
戦闘の詳細に多くの記述を割いて、何故そうなったかの論証がない点も疑問が残る。この種の話を書き始めたら、当然主権国家体制や民族自決というテーゼへの疑問に行き着くはずなのにそれもない。論文というより研究ノートといった趣であり、その限りにおいて有益ではある。
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ビアフラ戦争: 叢林に消えた共和国 (ヒストリア 18) 単行本 – 2003/7/1
室井 義雄
(著)
- 本の長さ205ページ
- 言語日本語
- 出版社山川出版社
- 発売日2003/7/1
- ISBN-10463449180X
- ISBN-13978-4634491809
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
アフリカの大国ナイジェリアにおいて勃発した内戦の意味を考える。「兄弟たちの戦争」ともいえるこの戦争では、餓死者を含め二百万人もの犠牲者が出た。なにゆえ人類は、お互いの殺戮を繰り返すのであろうか。
登録情報
- 出版社 : 山川出版社 (2003/7/1)
- 発売日 : 2003/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 205ページ
- ISBN-10 : 463449180X
- ISBN-13 : 978-4634491809
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,196,983位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2009年3月15日に日本でレビュー済み
多数の餓死者を出した悲惨な戦争というイメージのあるビアフラ内戦。
ビアフラ内戦以後も多数の悲惨な戦争や内戦が続き、もはや忘れ去られてしまったかのような感もある。
本書はアフリカの大国ナイジェリアにて発生したビアフラ内戦の経過について記している。
読了後に気になったのは淡々と歴史的経過を記述するだけという姿勢である。会えて価値判断を入れないのも一つの立場である。ただあまりにも客観的すぎて味気なさを感じるのも事実である。勿論、戦争に良い戦争も悪い戦争もないし、イボが良くてハウサが悪いという判官贔屓を期待するわけではないが、無味乾燥すぎる。
著者の姿勢はともかく、餓死者の続出などで世界的に広く報道されたビアフラ内戦がじつはかなり地味な内戦(表現が適切かどうかわからないが)ということに驚かされた。局地的に激しい戦闘もあることはあるのだが、報道されているほどの激しい内戦というイメージはない。
それは著者も記しているように本来ならばすぐに決着したはずの内戦が、外国からの介入や援助により長引いてしまったことにより、ビアフラの人々の不必要な死を招いたということが原因だろう。ダラダラと続く内戦が物資の窮乏を招き、多数の餓死者を出したということだ。
著者のスタンスを改めて推し量ると、ナイジェリアはナイジェリア固有のあり方がある。それを淡々と述べるだけということだろうか。本来はでるはずのなかった多数の餓死者の原因が外国の不必要な介入にあったことと同じように、著者の必要以上の感情や思いは正しい理解を妨げるということであろうか。著者の中でもビアフラ内戦が消化しきれていないことがこのような無味乾燥な記述を生み出したのかもしれない。
ビアフラ内戦以後も多数の悲惨な戦争や内戦が続き、もはや忘れ去られてしまったかのような感もある。
本書はアフリカの大国ナイジェリアにて発生したビアフラ内戦の経過について記している。
読了後に気になったのは淡々と歴史的経過を記述するだけという姿勢である。会えて価値判断を入れないのも一つの立場である。ただあまりにも客観的すぎて味気なさを感じるのも事実である。勿論、戦争に良い戦争も悪い戦争もないし、イボが良くてハウサが悪いという判官贔屓を期待するわけではないが、無味乾燥すぎる。
著者の姿勢はともかく、餓死者の続出などで世界的に広く報道されたビアフラ内戦がじつはかなり地味な内戦(表現が適切かどうかわからないが)ということに驚かされた。局地的に激しい戦闘もあることはあるのだが、報道されているほどの激しい内戦というイメージはない。
それは著者も記しているように本来ならばすぐに決着したはずの内戦が、外国からの介入や援助により長引いてしまったことにより、ビアフラの人々の不必要な死を招いたということが原因だろう。ダラダラと続く内戦が物資の窮乏を招き、多数の餓死者を出したということだ。
著者のスタンスを改めて推し量ると、ナイジェリアはナイジェリア固有のあり方がある。それを淡々と述べるだけということだろうか。本来はでるはずのなかった多数の餓死者の原因が外国の不必要な介入にあったことと同じように、著者の必要以上の感情や思いは正しい理解を妨げるということであろうか。著者の中でもビアフラ内戦が消化しきれていないことがこのような無味乾燥な記述を生み出したのかもしれない。
2007年7月12日に日本でレビュー済み
戦争とは流血を伴う政治である。毛沢東の言葉で有名だが、そこには理も非もなく、双方の自己絶対化から生じる双方の「正義」のぶつかり合いである。けれども、それはマクロな見方に過ぎず、個々の人間に焦点を当てれば、結局は「殺人行為」に他ならない。重要なのは民族や国家という抽象的なものだけに捉われないことである。人間とは何か?なぜ人間は殺戮をくりかえすのか?18世紀の思想家であるジャンジャックルソーの『人間不平等起源論』から始まり現代でも明らかにできていない課題の一つである。著書のあとがきからは著書の想いが伝わってくる。