大津透、五味文彦、新田一郎、河内祥輔、池亨、堀新といった各時代の権威が勢ぞろいして、政権史を論じています。なぜ「王権」ではなく「政権」といったかというと、この論者の中にははっきりと「王権というのはふさわしくない」「私は王権という術語を使わない」と断っている方がいるからです。つまり、史学界においては、「王権」というコトバは完全に定着していないということです。
といったことはともかく、現時点での政権の捉え方がわかり、貴重です。
特に中世、近世における天皇、公家の権能について、かつては「武家に政権を奪われた」という認識でしたが、かかる見方は「武家政権成立史観」「公武対立史観」と呼ぶべきものであり、「公家」と「武家」との対立関係を土台にした歴史認識であるとされ、近年の研究では、それに替わって、「公武統一政権」「公武結合王権」という概念が提出されており、
「鎌倉幕府の成立によって、…それ以前までの朝廷の支配という体制から変わって、以後は朝廷と幕府が共存しつつ密接に結合する政治体制が構築され」（河内論文）
「武家も公家も当初から相互を必要として結びつき、…お互いに相手を排除して権力の一元化を図ることはない」（堀論文）
という捉え方がなされていることを学びました。
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