スラッファは、実質賃金と生産条件が現実の物量タームで規定されている時には生産価格と利潤率を決定するのに十分なものとなり、何らの需要の理論も要求されない、との立場をとる。そこからマーシャル批判が生まれ立場的にマルクス(転形問題を参照)に近くなる。マルクスと違うのは搾取を強調していない点だ。標準商品という概念は価値形態論を可逆的に捉えるということだ。以下本書邦訳目次。
『商品による商品の生産——経済理論批判序説——』ピエロ・スラッファ (Piero SRAFFA)
1962年邦訳初版
目 次
復刊によせて
訳者のことば
序 文
第一部 単一生産物産業と流動資本
第一章 生存のための生産
一 二生産物
二 三コないしそれ以上の生産物
三 一般的な場合
第二章 剰余を含む生産
四 利潤率
五 利潤率の例
六 基礎的生産物と非基礎的生産物
七 術語上の注釈
八 生存賃金と剰余賃金
九 生産物から支払われた賃金
一〇 労働の量と質
一一 生産方程式
一二 自己補填的体系における国民所得
第三章 生産手段に対する労働の割合
一三 国民所得の割合としての賃金
一四 国民所得全体が賃金にあてられるばあいの価値
一五 生産手段に対する労働の割合における多様性
一六 「欠損の産業」と「剰余の産業」
一七 分水線を示す割合
一八 バランスを回復する価格変化
一九 生産手段に対する生産物の価格比
二〇 生産物間の価格比
二一 くりかえされる割合
二二 バランスを保つ比率と極大利潤率
第四章 標 準 商 品
二三 「不変の価値尺度」
二四 完全な合成商品
二五 このような商品の構成一例
二六 標準商品の定義
二七 等しい百分率の超過
二八 生産手段に対する純生産物の標準比率
二九 標準比率と利潤率
三〇 標準体系における賃金と利潤率との関係三一 あらゆる体系に拡大された関係
三二 例
三三 標準商品の構成——q体系
三四 単位としての標準国民所得
三五 非基礎財の除外
第五章 標準体系の一意性
三六 前置き
三七 標準体系への変形は常に可能である
三八 何故一意性の問題が生ずるのか
三九 あらゆる賃金水準における正の価格
四〇 ゼロの賃金における生産方程式
四一 正の乗数の一意的な組合せ
四二 正の乗数はRの最低の値に対応する
四三 標準生産物はそれと同値の労働量によって置きかえられる
四四 独立変数としての賃金ないしは利潤率
第六章 日付のある労働量への還元
四五 生産費の側面
四六 「還元」の定義
四七 分配の変化にともなう個々の項の運動の型
四八 項の集計量の運動
第二部 多生産物産業と固定資本
第七章 結 合 生 産
四九 価格の下落率は賃金の下落率を超過できない
五〇 二つの結合生産物に対する二つの生産方法、あるいはそれらの結合生産物を生産するための一つの方法とそれらを第三の商品の生産に使用するための二つの方法
五一 普遍的な結合生産物の体系
五二 標準体系構成上の複雑さ
第八章 結合生産物をふくむ標準体系
五三 負の乗数 一、使用の割合と両立できない生産の割合
五四 負の乗数 二、結合的に生産された基礎財と非基礎財
五五 負の乗数 三、特殊な原料
五六 標準商品の負の構成要素の解釈
五七 基礎財と非基礎財、新定義の必要
五八 非基礎財の三つの型
五九 第三の型の例
六〇 一般的な定義
六一 非基礎財の消去
六二 基礎的方程式の体系
六三 標準体系の構成
六四 Rの最低の値だけが経済的に意味がある
六五 非基礎的生産物に対する租税は利潤率と他の生産物の価格とを無影響のままに残す
第九章 結合生産の他の効果
六六 二つの過程によって結合的に生産された二商品に投ぜられた労働量
六七 ただ一つの過程によって結合的に生産された二商品に投ぜられた労働量
六八 日付のある労働量への還元は一般的に可能ではない
六九 賃金の変化にさいしてあらゆる価格が正に止まる確実性はない
七〇 負の労働量
七一 価格の下落率はもはや賃金の下落率によって制限されない
七二 これが意味するもの
第一〇章 固 定 資 本
七三 一種の結合生産物としての固定資本
七四 異なった生産物とみなされる異なった経過年数をもつ機械
七五 年金の方法によって計算された耐久的用具に対する年々の費用
七六 結合生産方程式の方法によって計算された同じ費用
七七 方程式の方法はより一般的である
七八 異なった用途における同じ用具の異なった減価
七九 目付のある労働量への還元は固定資本については一般に不可能である
八〇 r=0ならば、機械の帳簿価値は経過年数につれていかに変化するか
八ー 一部分消耗した機械に「含まれた」労働量
八二 r>0ならば、帳簿価値は経過年数につれていかに変化するか
八三 あらゆる経過年数の機械の完全な組合せの帳簿価値のrの変化に応ずる変動
八四 標準体系における固定資本
第一一章 土 地
八五 地代を稼得する自然資源の非基礎的生産物に対する類似性
八六 差額地代
八七 単一の品質の土地に対する地代
八八 「外延的」ならびに「内包的」収穫逓減に対する地代の関係
八九 農産物の多数性
九〇 「単一生産物体系」と「多生産物体系」の区別の改訂
九一 準地代
第三部 生産方法の切換え
第一二章 生産方法の切換え
九二 簡単な場合、非基礎的生産物
九三 基礎的生産物——方法と体系の双方の切換え
九四 利潤率の上昇が常により高い標準比率への切換えに導くための条件
九五 体系から体系への一系列の切換えを通じて(それらが単一生産物体系だと仮定すれば)より高い利潤率には賃金の下落が対応する
九六 多生産物体系における方法の切換え
付録 A 「小体系」について
付録 B 自己再生産的な非基礎財に関する注
付録 C 「基礎的体系」の工夫
付録 D 文 献 引 証
一 重農主義者とリカードにおける循環的過程としての生産
二 標準的価値尺度と「支配労働」
三 極大利潤率
四 結合生産物としての残余の固定資本
索 引
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商品による商品の生産 復刊: 経済理論批判序説 単行本 – 1978/5/1
- 本の長さ158ページ
- 言語日本語
- 出版社有斐閣
- 発売日1978/5/1
- ISBN-104641062471
- ISBN-13978-4641062474
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登録情報
- 出版社 : 有斐閣 (1978/5/1)
- 発売日 : 1978/5/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 158ページ
- ISBN-10 : 4641062471
- ISBN-13 : 978-4641062474
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2005年6月18日に日本でレビュー済み
最初に個人的な感慨を述べて恐縮ですが、この書物は私にとって経済学的な意味での、いわば「お宝」となっており、従って、「星印」による評価ができないのが正直なところです。加えて、浅学の故、限られた字数の中で「万人受け」するレビューを書くことも、これまた非常に難しいと考えています。
ただ、「『商品による商品の生産』は、限界理論批判の書であると同時に、一般均衡論批判の書でもある」(塩沢由典『市場の秩序学』P.94)ということだけは付記しておきたいと思います。
また、スラッファ経済学に関する解説や解釈については、例えば訳者の一人である菱山泉氏の『スラッファ経済学の現代的評価』(京都大学学術出版会)や、L.マインウェアリング氏の『価値と分配の理論-スラッファ経済学入門』(日本経済評論社)などの優れた著書も出版されています。スラッファの経済学に関心のある方は、是非こうした碩学の研究書にも眼を通していただきたいと考えております。
「寡黙な経済学者」(前掲書P.81)であるスラッファが世に問うたこの理論書は、当然、経済学史的にみても非常に大きなインパクトを与えていると私は確信していますが、他方、入手が大変困難となっている書物でもあります。「幻の名著」とならぬような出版界の配慮を切に願う次第です。
Amazonで購入
最初に個人的な感慨を述べて恐縮ですが、この書物は私にとって経済学的な意味での、いわば「お宝」となっており、従って、「星印」による評価ができないのが正直なところです。加えて、浅学の故、限られた字数の中で「万人受け」するレビューを書くことも、これまた非常に難しいと考えています。
ただ、「『商品による商品の生産』は、限界理論批判の書であると同時に、一般均衡論批判の書でもある」(塩沢由典『市場の秩序学』P.94)ということだけは付記しておきたいと思います。
また、スラッファ経済学に関する解説や解釈については、例えば訳者の一人である菱山泉氏の『スラッファ経済学の現代的評価』(京都大学学術出版会)や、L.マインウェアリング氏の『価値と分配の理論-スラッファ経済学入門』(日本経済評論社)などの優れた著書も出版されています。スラッファの経済学に関心のある方は、是非こうした碩学の研究書にも眼を通していただきたいと考えております。
「寡黙な経済学者」(前掲書P.81)であるスラッファが世に問うたこの理論書は、当然、経済学史的にみても非常に大きなインパクトを与えていると私は確信していますが、他方、入手が大変困難となっている書物でもあります。「幻の名著」とならぬような出版界の配慮を切に願う次第です。
2015年6月14日に日本でレビュー済み
20世紀イタリアの経済学者スラッファの主著。1960年に発表されたが、それまでの30年をかけて思索と推敲を重ねたものと著者自身が言明している。訳者の言葉と、用語索引、4つの附論が付けられた。訳文というよりは内容自体が難解で、10のグラフと3ページにつき1箇所の割合で数式が挿入されている。たまにだが1ページ全部が数式になっているところもある。
スラッファの目的は、理論経済学の先入観から脱却させることだったので、その先入観とはどのようなものであったかという経済理論上の知識がない人は、本書を読む前に同じスラッファの翻訳書である『経済学における古典と近代』を入手することをおすすめします。
スラッファの目的は、理論経済学の先入観から脱却させることだったので、その先入観とはどのようなものであったかという経済理論上の知識がない人は、本書を読む前に同じスラッファの翻訳書である『経済学における古典と近代』を入手することをおすすめします。
2008年2月17日に日本でレビュー済み
経済学の古典的名著です。タイトルですごく気に入りました。
30年前に、あちこちの書籍で引用されているのに、絶版になっていました。
古本屋さんを2年間探し回って購入しました。
当時、自分の研究のテーマは、次の3つでした。
リカーシブコール、自己組織化、商品による商品の生産。
商品を使って、商品を生産する場合に、どのような仕組みとして定義、議論ができるか。
興味深い題材だと思いました。
30年前に、あちこちの書籍で引用されているのに、絶版になっていました。
古本屋さんを2年間探し回って購入しました。
当時、自分の研究のテーマは、次の3つでした。
リカーシブコール、自己組織化、商品による商品の生産。
商品を使って、商品を生産する場合に、どのような仕組みとして定義、議論ができるか。
興味深い題材だと思いました。
2007年11月15日に日本でレビュー済み
このPCは経済ってどんなだろう、その理論ってどんなだろうって興味を持ってる人が
入門書として読むことお薦めの本だな。
本は読者を想定しながら書かれるものらしいが、スラッファはどんな人を対象に、どんな
ものを狙っていたのだろうと不思議におもうよ。
経済分析の基礎が広く読まれ、アローやドブリューの理論がもうじき出てくるほどの
経済学で使う数学が難しくなってくるころに、あまり数学的でない本を出版する
意義なんてあったのかってね?
資本論争でこのPCはよく引用されたから、「その後の経済学に与えた影響は大きかった」
なんてことも言えないな。そんな論争なくったって、経済学は発展したはずだから。
スラッファってリカードの解釈をPCに書かれた考えで編集してるから、学説史的には
重要だといえてもリカード学説史家なんて少数だからなぁ。
PCは今の経済学をやろうとするとき、読まなくてもいい本だな。だからと
言ってつまらない本だと言えるかというとそれはちがう
。特異な世界が登場して、それを分析する手腕がおもしろい。「神(スラッファ)は
死んだ」なんて言い捨てて、PCなんて読んでも無駄、と言い切る人の気持ちも
理解できない。
ティプトリーJr.の本が楽しめるように、気軽な気持ちで読んで楽しめる本だ。
人生を掛けて読む本じゃない。たくさんある良書のなかの一冊だがずいぶんおもしろい本
だな。
で、スラッファブームが去って久しい今、どんな人に向いた本か?
それは冒頭に書いたように、経済学を始めた初心者が理論について触れるにはいい本
だと言いたいな。生産量も決められない中途半端な理論が、理論の檜舞台に上る日が
来ることなんか未来永劫ありえない。でも読むと、沈んだ夕日の美しさが実感できるんだな。
経済学にたいして及ぼした影響なんて関係ない。PCはそれ自体で楽しめる本なんだ
たぶんね
入門書として読むことお薦めの本だな。
本は読者を想定しながら書かれるものらしいが、スラッファはどんな人を対象に、どんな
ものを狙っていたのだろうと不思議におもうよ。
経済分析の基礎が広く読まれ、アローやドブリューの理論がもうじき出てくるほどの
経済学で使う数学が難しくなってくるころに、あまり数学的でない本を出版する
意義なんてあったのかってね?
資本論争でこのPCはよく引用されたから、「その後の経済学に与えた影響は大きかった」
なんてことも言えないな。そんな論争なくったって、経済学は発展したはずだから。
スラッファってリカードの解釈をPCに書かれた考えで編集してるから、学説史的には
重要だといえてもリカード学説史家なんて少数だからなぁ。
PCは今の経済学をやろうとするとき、読まなくてもいい本だな。だからと
言ってつまらない本だと言えるかというとそれはちがう
。特異な世界が登場して、それを分析する手腕がおもしろい。「神(スラッファ)は
死んだ」なんて言い捨てて、PCなんて読んでも無駄、と言い切る人の気持ちも
理解できない。
ティプトリーJr.の本が楽しめるように、気軽な気持ちで読んで楽しめる本だ。
人生を掛けて読む本じゃない。たくさんある良書のなかの一冊だがずいぶんおもしろい本
だな。
で、スラッファブームが去って久しい今、どんな人に向いた本か?
それは冒頭に書いたように、経済学を始めた初心者が理論について触れるにはいい本
だと言いたいな。生産量も決められない中途半端な理論が、理論の檜舞台に上る日が
来ることなんか未来永劫ありえない。でも読むと、沈んだ夕日の美しさが実感できるんだな。
経済学にたいして及ぼした影響なんて関係ない。PCはそれ自体で楽しめる本なんだ
たぶんね
2006年7月8日に日本でレビュー済み
1960年に刊行された本書『商品による商品の生産』は、原著では100ページに満たない小著である。とはいえ、本書が現代の経済学に与えたインパクトはきわめて大きなものがあった。1870年代のジェヴォンズ革命によって、産出量や生産要素比率などの「変化に焦点を絞る」限界的接近方法が席巻したが、本書で採用されているのは、そうした「生産規模の変化だとか「要素」の割合だとかに依存しないような経済体系の性質に、もっぱら係わっている」(1頁)。副題に添えられた「経済理論批判序説」の内容もこの点に関係している。とりわけスラッファ理論の意義は、それが古典派経済学やマルクス理論にどのような影響を及ぼしたのかという観点から議論されてきたが(ことに転形問題論争におけるスラッファ標準商品論の役割など)、それが有する理論的・思想史的含意は、依然として十分に解き明かされてはいないのではないか。ケンブリッジ大学でリカード全集の編纂に協力したマルクス理論家ドッブは、本書を高く評価し、「スラッファ革命」という名称を用いているが、問い直されてよいのは「革命」の意味内容である。近代経済学正統派、新リカード学派そしてマルクス学派の競合関係をより顕在化させた、上記の転形問題論争におけるスラッファ理論の位置は一様ではないのであって、特にスラッファ自身がマルクス価値論には全く言及しなかったことによって、マルクス学派にとってスラッファ理論はいわば諸刃の剣となっている。技術的・形式的な視点からの体系的整備のみではおそらく不十分であり、各学派が有する社会哲学やイデオロギー、そして社会科学としての経済学の課題をどのように認識するのかといった方法論上の問題へと派生してゆくに違いない。経済原論や経済学史といった講義においても、スラッファはなかなか登場してこないのが現状ではないか。スラッファをめぐる論争の旅はまだ終っていない。
2004年1月20日に日本でレビュー済み
限界革命以降地位を落としていた古典派経済学的な手法の再評価。
私の学部時代、経済思想史の教授が本書を非常に強く推薦していた。
私の学部時代、経済思想史の教授が本書を非常に強く推薦していた。