２０００年の本だが、初版１９９３年で版を重ねている。２名の著者は神戸大学と摂南大学の教授。
曰く・・・
証券取引法の究極の目的は投資者の保護であり、具体的には、事実を知らされないことによって被る損害からの保護と不公正な取引によって被る損害からの保護、である。
過去、企業は、高い株価をもとに時価発行による資金調達（主として転換社債）を行い、それによって得た資金を再び財テクとして証券会社等を通じて証券市場に投入して株価を押し上げるという循環構図があった。証券会社はエクイティ・ファイナンスによって多額の引受手数料をもらい、その調達資金の運用を委ねられることで膨大な売買手数料を稼ぐ（営業特金）。株価の右肩上がりがこのスキームの前提。バブルが崩壊すると、損失を被った企業は証券会社に損失補填を要求する。大口顧客の要求を拒みがたい証券会社は、この要求に応じた。
戦後に再開された証券取引では、売買取引はすべて実物取引だっったが、実物取引だけでは需給のアンバランスが出てきて、公正な価格で取引されないことになって市場が安定しない。安定させるために、高いと思ったら株がなくても売る、安いと思ったら金が無くても買う、という仮需給を導入する必要がある。こうして、信用取引制度ができる。
証取法は商法の特別法としての面がある。商法は、すべての株式会社を規制するが、多数の投資家によって株式保有される大会社については商法の規定だけでは不十分であるため、証取法は投資家保護のために詳細な規定を定める。ただし、証取法は市場そのものの規制にウエイトをおいているため、商法の特別法ともいいきれない。
商法上のディスクロージャーは、株主名簿上の株主に対して行われる。証取法のディスクロージャーは、投資者が対象。
法律上は、会社は商法と証取法にしたがってディスクロージャーすればいいのだが、証券取引所に上場している会社は証券取引所の決めたきめ細かい開示政策に拘束される。
大量保有報告は、株を買い集めた者が自発的に行う。義務の履行を保証するのは刑事罰。株式を大量取得しながら表面に表れず、機を見て売り抜けていくだけの者は報告せず、摘発することも難しい。保有株を会社に買い取らせようとする者は、姿を表さざるをえないので、この場合は大量保有報告制度は十分効果がある。
みたいな話。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
この商品には新版があります:
