著作権の本は従来から数多く出版されていてある意味では充実しているのだろうが、いざというときに「これが知りたい」という「この一冊」を探し出すのは難しい。それこそ、基本を知らないと選ぶことさえ満足にできない有り様だ。
医者でない人が医学の入門書を見つけるのが困難なように、著作権という込み入った法律の本も、素人にはなかなか手が出ないのが現状だと思う。
この本は著作権に対して得体の知れない敷居の高さを感じている人にとって、まことに適した教科書と言えるだろう。とりわけ、気に入った文面が「はじめに」に記載されている。要約すると、「著作権は、著作者の権利を守って創作意欲を高めつつも、著作物に対して一定の利用の自由を確保するという配慮がある」としている。
こうした著作物にまつわる権利者側と利用者側の両側の公平な視座で、冷静ながらもわかりやすく書いている本はなかなか見つからなかった。この本は読者の知りたい欲を巧みに掘り出しながら、その欲に丁寧に応えている。文面が難解な部分もそれなりにあるが、それでも繰り返し読み込むとわかるレベルである。
ページの順に全て読むよりも、必要な部分をかいつまんで読んで断片的ながらも知識武装するのに役立つ。体系的な理解と運用は専門家に任せるにしても、その専門家と少しでも建設的な議論をするための教科書として大変良くできている本である。
最近の判例を多く取り入れた第2版が近頃出版された。著者の気配りがうかがえる。売れている証拠だろう。

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著作権法入門 単行本(ソフトカバー) – 2009/10/29
人の創作活動は,日常生活やビジネスにとって欠かせないものであり,著作権法に対する理解の重要性も益々高まっている。本書は,初めて著作権法を学習する人に最適の入門書。具体的事案を多用したわかりやすい解説により,著作権法とは何かを興味深く学ぶことができる
- ISBN-104641143730
- ISBN-13978-4641143739
- 出版社有斐閣
- 発売日2009/10/29
- 言語日本語
- 本の長さ310ページ
登録情報
- 出版社 : 有斐閣 (2009/10/29)
- 発売日 : 2009/10/29
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 310ページ
- ISBN-10 : 4641143730
- ISBN-13 : 978-4641143739
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,302,483位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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鳥取市生まれ、神戸市出身
1996年 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了
2007年-現在 神戸大学大学院法学研究科教授
専門は知的財産法
個人サイト: https://sites.google.com/site/shimanamiryo/
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
まず私は弁護士でも法律の専門家でもありません。
本書を読むきっかけは、遺産相続審判の中で相手方が教科書の著作権をよこせと言ってきたこと、その抗弁用に基本知識を得る為でした。よって、仕事柄ソフトの著作権に関しては神経質なのですが、書籍になると全くの素人であり、その入門用としては充分でした。
しかし、裁判の難しいところは、抗弁にしろ、意見書等にしろ、独特の「言い回し」があるようです。また、私のような素人、というより一般社会では通用しないような日本語表現がなされ、その意味は色々解釈でき、それを明確に、誤解の無い様に追求しても、弁護士というものは曖昧(要はいざという時の責任逃れ)にしか答えないものだということを感じました。そこにはテレビドラマのようなカッコイイ姿など、到底ありません。
いずれにせよ、最終的には裁判官の判断によるもので、原則は変わらなくても一般論は通じないことがわかりました。
つまり、本を読んで法律、原則を理解しても、判決とは必ずしも結びつかない場合もあるということです。
本書の欠点と言えば、共同著作物であり、かつ、教科書のような特殊な著作物の扱いに関し、少し補足が必要であると感じました。ちなみに、その件は出版社(社内法的部門)に教えて頂きました。
本書を読むきっかけは、遺産相続審判の中で相手方が教科書の著作権をよこせと言ってきたこと、その抗弁用に基本知識を得る為でした。よって、仕事柄ソフトの著作権に関しては神経質なのですが、書籍になると全くの素人であり、その入門用としては充分でした。
しかし、裁判の難しいところは、抗弁にしろ、意見書等にしろ、独特の「言い回し」があるようです。また、私のような素人、というより一般社会では通用しないような日本語表現がなされ、その意味は色々解釈でき、それを明確に、誤解の無い様に追求しても、弁護士というものは曖昧(要はいざという時の責任逃れ)にしか答えないものだということを感じました。そこにはテレビドラマのようなカッコイイ姿など、到底ありません。
いずれにせよ、最終的には裁判官の判断によるもので、原則は変わらなくても一般論は通じないことがわかりました。
つまり、本を読んで法律、原則を理解しても、判決とは必ずしも結びつかない場合もあるということです。
本書の欠点と言えば、共同著作物であり、かつ、教科書のような特殊な著作物の扱いに関し、少し補足が必要であると感じました。ちなみに、その件は出版社(社内法的部門)に教えて頂きました。
2014年1月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著作権法を解説した本の中では最高の本で、名著だと思います。初心者には多少分かりづらいと思いますが、難しい内容を分かりやすい表現で解説しています。私は、この本で、著作権でのモヤモヤが、かなり晴れました。難しいことを難しく説明することは簡単ですが、この本のように「難しいことを簡単に説明する」には、内容を深く理解した人にしかできないと改めて感じさせてくれる本です。
2013年11月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
難しい法律用語がたくさん出てきますが、素人でもわかりやすく解説されています。困ったときにすぐに引けるのも便利です。
2013年8月8日に日本でレビュー済み
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学生時代に著作権法をまったく勉強していなかったので,とっつきにくいイメージがありましたが,すっと入っていけました!
2011年6月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とてもわかりやすくまとまっていて、読みやすい本でした。
薄いしハードではないので持ち運びにも便利です。
また、例題となっている判例も最新判例でした。
薄いしハードではないので持ち運びにも便利です。
また、例題となっている判例も最新判例でした。
2011年1月15日に日本でレビュー済み
すごい本が出てきたな、と思わず唸ってしまった、まさに薄くも最高水準の本です。
・創作性について従来の通説をカバーしつつ、中山先生の「選択の幅」概念をコラムで紹介
・田村教授をはじめとする近時の有力説である創作的表現説をフォロー
・著作権の利用について有形的再製・提示・提供という3分類を示す
・共同著作物について「事実上の」共同性が必要という指摘
・引用の5要件説を紹介し、「主従関係」と「正当な範囲」との違いを図表でフォロー
・「公衆送信」「一時的蓄積」などの概念の整理
など、今までは個別の論文に当たらねば把握できなかった有力説をコンパクトに、かつ、出し惜しみせず紹介しています。
ステップアップの記事もいい。例えば、「漫画喫茶の漫画の貸し出しを著作権法上、正当化できるか」など他の教科書類では余り書かれていない、しかし著作権法を学ぶ人なら気になる日常の興味点までフォローされています。
3人の執筆者は、著作権法を各大学で教える若手有力学者です。有力説を紹介する際にも、必ず通説の議論をフォローしています。
惜しい点は、建築の著作物の記載がやや荒いこと、複合的権利制限規定(43条など)の紹介が少ないこと、でしょうか。
ただ、この薄さでここまで有力説をフォローしつつ概観を示せた素晴らしい本があったでしょうか。ここ数年の書物でも間違いなくTOPレベルの「当たり作」だと思います。著作権法の初心者、既に学ばれた方も、一度は必ず読むべき書物です。
今後は、中山先生の「著作権法」と並び、著作権法の座右の銘に挙げられるに値する書物だと思います。
・創作性について従来の通説をカバーしつつ、中山先生の「選択の幅」概念をコラムで紹介
・田村教授をはじめとする近時の有力説である創作的表現説をフォロー
・著作権の利用について有形的再製・提示・提供という3分類を示す
・共同著作物について「事実上の」共同性が必要という指摘
・引用の5要件説を紹介し、「主従関係」と「正当な範囲」との違いを図表でフォロー
・「公衆送信」「一時的蓄積」などの概念の整理
など、今までは個別の論文に当たらねば把握できなかった有力説をコンパクトに、かつ、出し惜しみせず紹介しています。
ステップアップの記事もいい。例えば、「漫画喫茶の漫画の貸し出しを著作権法上、正当化できるか」など他の教科書類では余り書かれていない、しかし著作権法を学ぶ人なら気になる日常の興味点までフォローされています。
3人の執筆者は、著作権法を各大学で教える若手有力学者です。有力説を紹介する際にも、必ず通説の議論をフォローしています。
惜しい点は、建築の著作物の記載がやや荒いこと、複合的権利制限規定(43条など)の紹介が少ないこと、でしょうか。
ただ、この薄さでここまで有力説をフォローしつつ概観を示せた素晴らしい本があったでしょうか。ここ数年の書物でも間違いなくTOPレベルの「当たり作」だと思います。著作権法の初心者、既に学ばれた方も、一度は必ず読むべき書物です。
今後は、中山先生の「著作権法」と並び、著作権法の座右の銘に挙げられるに値する書物だと思います。
2010年10月3日に日本でレビュー済み
書名からは、初心者向けの読み物や教科書を想像するが、いい意味で裏切られる。
著作権法は、幼児が描いた絵も立派な著作物であることから分かるように、極めて身近な法律だが、
その解説書に書かれたことを、いざ現実に当てはめようとすると、様々な疑問が湧き起こる。
著作権法の解説書が時代遅れだったり、著者が敢えて現実から目をそむけたりしているからだ。
しかし、この本は新進気鋭の著作権法学者3人が、真摯に現実と向き合って書いた労作である。
現代社会と著作権法の関わり合いを概説し、伝統的な著作物だけでなくデジタル著作物も扱っている。
さらに、著作権法研究の最新動向も、法の抱える問題点・課題を織り交ぜコンパクトにまとめている。
著作権法が実生活に身近なものとして生き生きと描かれており、興味をもって読める。
初心者には荷が重いが、入門書、概説書を読んだ後なら、平易に書かれており、すんなり読める。
学生、研究者、法曹関係者、実務家にも幅広くお薦めしたい。
著作権法は、幼児が描いた絵も立派な著作物であることから分かるように、極めて身近な法律だが、
その解説書に書かれたことを、いざ現実に当てはめようとすると、様々な疑問が湧き起こる。
著作権法の解説書が時代遅れだったり、著者が敢えて現実から目をそむけたりしているからだ。
しかし、この本は新進気鋭の著作権法学者3人が、真摯に現実と向き合って書いた労作である。
現代社会と著作権法の関わり合いを概説し、伝統的な著作物だけでなくデジタル著作物も扱っている。
さらに、著作権法研究の最新動向も、法の抱える問題点・課題を織り交ぜコンパクトにまとめている。
著作権法が実生活に身近なものとして生き生きと描かれており、興味をもって読める。
初心者には荷が重いが、入門書、概説書を読んだ後なら、平易に書かれており、すんなり読める。
学生、研究者、法曹関係者、実務家にも幅広くお薦めしたい。