日本の歴史、或いは建築史や美術史を紐解く時、必ず最初に出て来るのは「古代」である。
だが、この時代が謂わば日本の「幕開け」であるにも拘らず、実は、その全貌は全く明らかになっていない。
何故なら、文書や資料が残された後世とは違い、この時代に関してだけは地道な発掘調査と出土品から、その姿を推測するしか方法が無いからである。
そこで、当時の住居や生活、そして集落の形態から文化交流に至るまでを幅広く検証する事に依って、この謎に満ちた「古代」という時代に一歩近付こうと試みたのが本書である。
本書は先ず、柱、屋根、床等の具体的な部分に着目しながら古代住居の構造を解説する所から始まる。
誰もがよく知っている竪穴式住居や高床式に加え、平地式住居についても解説しながら、当時の様々な住居の姿を紹介して行くのだ。
勿論、単に建築物としてだけではなく、例えば、台所、応接室、トイレ等、所謂「生活空間」としての住居についても論じており、取り分け、この時既にベッドが存在していた事を明らかにしているのには大いに驚かされた。
そして本書は、次第に「一軒の家」から「集落」へと移って行く。
発掘された墓地から推察出来る当時の家族像、住居空間の使い分けと男女の住み分け、村長の家、或いは祭場やゴミ捨て場をも含有した村全体の姿など等、日々の生活が垣間見えるようで、非常に面白い。
更には、個々の住居が集まって村落を成し、家族や他人との往来が生じ、ついには外交までもが生まれる…と言う社会構造のあり方をも考えさせられる内容なので、実に感慨深かった。
尚、本書は発掘調査に基く考察は勿論の事、『万葉集』や『魏志倭人伝』の記述を採用したり、或いは、諸外国の村落等も例に挙げながら話題を展開して行くので、とかく難しくなりがちな考古学分野を親しみ易い目線で取り上げようという配慮が見られる。
また、要所要所に配されたコラムも効果的で、読者を飽きさせないように様々な工夫が凝らされている点も好印象だ。
更には最終章で正倉院を取り上げたり、弥生時代の楼閣に言及したりしながら海外交流にも着眼しているので、その話題性は単なる「古代住居」には留まらない。
特に「環境全体の中での集落」というものを考える事に依って、私達の日々の生活は常に環境や風土と密接に関りながら営まれるものなのだ…という事実を以って締め括っている所は圧巻でもあり、実に見事なエピローグだと実感した次第である。
私はこれまで、考古学というと、どうにも難解で敷居が高いものだと感じていた。
現に、過去にもこうした考古学的分野の書籍を読んだ事はあるが、恥ずかしながら歯が立たない事が多く、興味を失いかけていたのである。
然しながら、本書はそうした「難解な書物」とは明らかに一線を画している。
これ程までに楽しく、解り易く、親近感を覚えながら考古学に接したのは初めてだ。
依って、考古学の関心のある方は言う迄もなく、私のように「考古学はどうも…」と敬遠している方にも是非とも読んで頂きたい。
古代住居の構造、古代人の生活、日本の歴史と文化の萌芽としての時代…何処から切り込んでも面白く、飽きる事のない名著である。
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古代住居のはなし (歴史文化セレクション) 単行本 – 2006/10/1
石野 博信
(著)
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- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社吉川弘文館
- 発売日2006/10/1
- ISBN-104642063021
- ISBN-13978-4642063029
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登録情報
- 出版社 : 吉川弘文館 (2006/10/1)
- 発売日 : 2006/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 256ページ
- ISBN-10 : 4642063021
- ISBN-13 : 978-4642063029
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,013,534位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 14,724位日本史一般の本
- カスタマーレビュー:
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2015年1月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2021年10月19日に日本でレビュー済み
※ネタバレ含む
タイトル通り、日本の古代住居について、写真やイラストを多用した解説をしてくださっています。
海人の生活や根の腐りやすい竪穴式の住居や移動式住居など、消し去られていった生活模様は、現代からではもう想像することしか出来ないので、日本だけでなく、海外の住居との類似点や、菊型は人間ではなく家畜用として海外にもあるのでおそらく同じなど、安易な想像だけに頼らない海外との比較があって安心する。
お手洗い状況がシンポジウムで盛り上がったなどといった、そういったコラム的な内容も自然と入っていて良いですね。
ただ、過去のご自分の書籍からの掲載や、イベントの解説、シンポジウムといった、いろいろなところからの転載で成り立っているので、同じことを何度も目にしてしまうところがちょっとだけもどかしさがあります。
とは言え、非常に興味深くかつ、資料性の高い良書だと思います。
-
<内容>
内容説明
古代の人びとは、どのような家に住み、どのような生活をしていたのであろうか。
全国各地の遺跡の発掘成果をもとに、住居の構造や村のしくみを解き明かす。
対外交流にも注目して、日本人の住まいと暮らしの原点を探る。
目次
1 古代の家と村(住居の構造とくらし;住居と集落;イエとムラのしくみ)
2 弥生・古墳時代の村と家地(弥生ムラの営み;弥生・古墳時代の家地の変遷)
3 古代建築と対外交流(古代建築からみた渡来人の波;正倉院建築の源流;環境と交流の住居史)
タイトル通り、日本の古代住居について、写真やイラストを多用した解説をしてくださっています。
海人の生活や根の腐りやすい竪穴式の住居や移動式住居など、消し去られていった生活模様は、現代からではもう想像することしか出来ないので、日本だけでなく、海外の住居との類似点や、菊型は人間ではなく家畜用として海外にもあるのでおそらく同じなど、安易な想像だけに頼らない海外との比較があって安心する。
お手洗い状況がシンポジウムで盛り上がったなどといった、そういったコラム的な内容も自然と入っていて良いですね。
ただ、過去のご自分の書籍からの掲載や、イベントの解説、シンポジウムといった、いろいろなところからの転載で成り立っているので、同じことを何度も目にしてしまうところがちょっとだけもどかしさがあります。
とは言え、非常に興味深くかつ、資料性の高い良書だと思います。
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<内容>
内容説明
古代の人びとは、どのような家に住み、どのような生活をしていたのであろうか。
全国各地の遺跡の発掘成果をもとに、住居の構造や村のしくみを解き明かす。
対外交流にも注目して、日本人の住まいと暮らしの原点を探る。
目次
1 古代の家と村(住居の構造とくらし;住居と集落;イエとムラのしくみ)
2 弥生・古墳時代の村と家地(弥生ムラの営み;弥生・古墳時代の家地の変遷)
3 古代建築と対外交流(古代建築からみた渡来人の波;正倉院建築の源流;環境と交流の住居史)
2016年9月30日に日本でレビュー済み
何かの本やWEBの知識で得ていた住居に関する歴史が、新しい(1980年代以降)の発見で変わっているのを知りました。
私が知識獲得したのは1990年代以降、おそらく21世紀に入ってからだろうと思うのですが、古代の実態も、書籍によっては古い知識で書かれているのだなぁと、当たり前のことにいまさら驚きます。
この本は1冊の書籍として書き下ろされたものではなくて、1980年代なかごろからのいくつかの発表をバインドしたものですから、同じことも出てきたり、視点や考察が違ったりしていますが、それもまあ面白いです。国際性や地域交流、地域の独自性の原因と渡来推察、邪馬台国の所在にまで話が及んでいるので、この本をトリガーにして自分の関心事の方向の書籍をさがしてみようなかと思います。
私が知識獲得したのは1990年代以降、おそらく21世紀に入ってからだろうと思うのですが、古代の実態も、書籍によっては古い知識で書かれているのだなぁと、当たり前のことにいまさら驚きます。
この本は1冊の書籍として書き下ろされたものではなくて、1980年代なかごろからのいくつかの発表をバインドしたものですから、同じことも出てきたり、視点や考察が違ったりしていますが、それもまあ面白いです。国際性や地域交流、地域の独自性の原因と渡来推察、邪馬台国の所在にまで話が及んでいるので、この本をトリガーにして自分の関心事の方向の書籍をさがしてみようなかと思います。