満洲国は所詮、傀儡に過ぎなかったのか。それとも見果てぬ夢であり続けるのか。あるいは多民族共栄に向かうべき今後に教訓を遺しているのか。本書は、そのいずれなのかを様々な角度から追跡している。結論は、"見果てぬ夢"ではなかった、それはウソと教えてくれる。では傀儡なのか、そう傀儡だ、けれど粗大ゴミに出すのは惜しい。学びのヒント、有益な事例がありそう、、、だが本書に、今後の教訓が豊かに示されているとは言い難い。
なるほどと、感じさせられた幾つかの有益な事例を、以下に挙げておく。
① 王道楽土の変容
満洲国のキャッチフレーズは王道楽土と民族協和=五族協和。民族協和は、元々少数派の在満邦人が漢族との対等を求めて主張したもの。それを、建国後には指導民族日本人の下に他の民族が服従すべきことに変容させた。同様に王道楽土も、日満一体の道義国家建設理念に置き換えられ、遂には惟神の道の重視となった。惟神の道とは、日本人にもよく分からない、日本発祥の世界統一の原理らしい。皇道とか八紘一宇などの言葉はここから捻り出された。満洲建国がいつの間にか民族自決でなか、日本民族による世界統一の大事業の一環に嵌められたといえる。
② 日本語が第一国語
王道楽土という統治理念が変容したため、1937年の新学制で、それまで外国語の一つだった日本語が、日満一徳一心の精神に基づき国語の一つとされた。それだけでなく、漢語、モンゴル語を抑え第一国語と定められた。人口比率が僅か5%未満の日本人の言語が第一国語とされたのだ。
③ 満洲国に国民はゼロ
満洲国国民がゼロだったのは、国籍法が定められていなかったから。ではなぜ定められてなかったか? それは日本国籍を離れて満洲国籍に移ることを峻拒し続けた在満日本人の心であった(山室信一『キメラ』)。
これに対し本書は、当時の日本の国籍法が自己の志望によって外国籍を取得した場合、日本国籍は失うと規定していたから、と述べている。つまり二重国籍を認めれば、ゼロにはならなかったろう、という話。
ではなぜ二重国籍を認めなかったのか?
立法議会を作りたくなかったからだ、という(鈴木貞美『満洲国』)。満洲国建国に際して、立法院を一つの柱として掲げていた。しかし、民族協和のタテマエの下では、どう工夫しても民族人口比率が露になる。圧倒的多数の漢族がいずれは主導する国になるだろう。下手に国民など作らず、総務庁中心の行政権で引っ張って行けば良い。だから、国籍法も作らないほうが良い、となったというのだ。
二重国籍をあたかもスパイ活動したかの様に騒ぎ、それに慌てふためいて弁解する、そんな国には夢の満洲国など出来ようはずがない。二重国籍を多様性、可能性と受け取れる民族には、いつ変身できるのか?
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満洲国: 民族協和の実像 ハードカバー – 1998/12/1
塚瀬 進
(著)
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- 本の長さ254ページ
- 言語日本語
- 出版社吉川弘文館
- 発売日1998/12/1
- ISBN-104642077529
- ISBN-13978-4642077521
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内容(「MARC」データベースより)
日本のために存在した満洲国。その虚構に満ちた歴史には、今日の日本人が顧みるに足る日本人の限界・問題点が凝集している。満洲という地域の特徴を明らかにし、満洲国統治の実態とその矛盾について考察する。
登録情報
- 出版社 : 吉川弘文館 (1998/12/1)
- 発売日 : 1998/12/1
- 言語 : 日本語
- ハードカバー : 254ページ
- ISBN-10 : 4642077529
- ISBN-13 : 978-4642077521
- Amazon 売れ筋ランキング: - 692,015位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2006年7月23日に日本でレビュー済み
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満洲国を理解するのには、入門書としてとても良い。学部の1,2年生あたりに読ませたら概要が分かって良いと思う。
しかし、満洲国の多民族状況と現在日本が多民族国家化していることと同列に論じるのには問題あり。
満洲国は日本が人工的に作り出した国家もどきにすぎないのだから。
しかし、満洲国の多民族状況と現在日本が多民族国家化していることと同列に論じるのには問題あり。
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2015年2月23日に日本でレビュー済み
何年も前に読んで知人にプレゼントしたので本は残っていませんが、
町内運動会、地域の溝掃除を強いるのに対し、冷めた態度であった理由など、
虚構を追っかけた無駄な努力とは、どういう意味かが解った本です。
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