子どもの6人に一人が貧困状態にあるという日本では、経済的貧困に加え、いじめとかの人同士の関係性の貧困、文化の貧困など、若年層の置かれた状態が特に悪化している。そんな状況に胸を痛めた、あるいはそんな子供たちに直に接して困難を知った人たちの中に、私に何かできないだろうかと子ども食堂を始めた人たちがいる。
そんな先駆者たちが、子ども食堂を新たに開くことは難しい事ではないと語ってくれるのがこの本です。
とはいえ、貧困問題に代表される子どもに関する数多の問題をすっぱり解決することが子ども食堂のミッションではない、そんなことはできないとはっきり述べられています。子ども食堂にできることは、子どもを中心としながら地域の人々が集う場を用意し、人々との接点を増やし、人には言えないと思って隠している困難に気づいてあげて、話してもらう。手元で簡単にできることなら手伝う。ここぐらいまでで十分。経済問題などは個人の手に負えはしないので、その解決を仕事としている役所や専門家に繋いであげるだけでいい。役所も専門家もやる気はあるけれど、どこの誰が助けを必要としているかを知る手立てがないので、気づくことを子ども食堂に期待していて、援助もしてくれる。
あなたも子ども食堂ができますよと呼び掛けてくれる、力をくれる本です。
実際に始めると対人関係のストレスなど苦労もあるとは思います。開催側が楽しめばいいという記載はその裏返しなのでしょう。
でも、その苦労を凌駕する楽しさ、うれしさを日々感じていることも十分伝わってきます。
効率向上を求め続けた社会で分断されてしまった地域の人々、ご近所関係を、食を入り口に結びなおそうという試みだと言えるかもしれません。
夢と希望を語って呼びかけてくれる良書です。どんな方でも、年齢・性別・職業の有無を問わず、地域社会の問題に少しでも関心があれば手に取ることをお勧めします。
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