この著者の、これより前の単著は一通り読んでいた。でもそれは好きだからと言うより、「気になった」からだと思う。反発を買いそうな言い方になるけれど、この人の文章を読んでいると「痛々しい」、もっとハッキリ言うと「イタい」と感じる。女性的な「イタさ」の一典型として気になった、という辺りが一番しっくりくる。
この著者の読者なら同意してくれるだろうが、この人の評論は多くの場合、女性の「痛々しさ」や「イタさ」に焦点を合わせている。確かに知的な分析を展開しているように見えるし、実際知的だとは思うのだが、しかし論じる対象である「痛々しさ」あるいは「イタさ」を対象として距離を置いて見るというより、そこに自分自身を探したり、投影したりしている気配がある。
もう少し言い方を変えると、この著者にはシャーマンのようなところがあって、マンガであれ社会的現象であれ出来事であれ、そこに自分が感応できる「痛々しさ」や「イタさ」の徴候を見つけると、その生々しさのままに増幅して文章にしてしまう。だからこの人の文章には、いつも切実さが滲んでいた。
ただし、それゆえの限界もまた、あったように思う。自分の切実さを相対化できていない、という印象がある。だからこの人の書くものは症例研究の体裁で差し出された症状そのもののようになっている。そこには防衛機制が働いている。私はこの人の文章を読んでいると、佐藤亜有子と通じる何かを感じてしまう。
本書の「きわきわ」というタイトルには、私は自己相対化できていないナルシシズムが漂っていると思う。意地の悪い例になるが、田舎町のスナックが「夢で逢えたら」や「いちごみるく」だったり、喫茶店が「独りの時間」や「道化師」だったり、ラーメン屋が「一世風靡」や「くらげが雲になる日」だったりするのと、実は同じなのではないか? その点、先日読んだ和久井香菜子『乙女心のツボ』の自由さとは雲泥の差がある。要するにこの著者は、「乙女心」を拗らせているだけではないだろうか?
ついでにもう一つ付け加えておくが、久しぶりにこの著者の本を読んで、率直言ってつまらなくなったと思った。扱っている話題は相変わらずだが、切実さの熱量がガクンと落ちていて、そうなると議論のありきたりさが露わになってしまっている。この人はもうシャーマンではなくなったのかもしれない。
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きわきわ―― 「痛み」をめぐる物語 単行本(ソフトカバー) – 2013/6/26
藤本 由香里
(著)
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購入オプションとあわせ買い
リストカットの痛みから辛うじて感じる自分の実在、同じように体をモディフィケーションさせることによって確かめる自我の境界、ヒーラーとしかいいようがないセックスワーカーの在り方。美容整形、障害者の性、ホームレスとひきこもり……社会の際や行為の極限から見えてくる、この社会のかたち。まんが、映画、小説、舞台などを題材にしながら、2000年代の日本を照射する。私たちは何を欲して、どこへ行こうとしているのか? 待望の長編評論ついに刊行!
- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社亜紀書房
- 発売日2013/6/26
- 寸法13.1 x 1.8 x 18.8 cm
- ISBN-104750513113
- ISBN-13978-4750513119
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商品の説明
著者について
1959年生まれ。明治大学准教授。評論家。少女まんがの評論やジェンダー論、エッセイなど多彩な文章を発表。著書に『私の居場所はどこにあるの?』(朝日文庫)、『快楽電流』(河出書房新社)、『愛情評論』(文藝春秋)、『少女まんが魂』(白泉社)などがある。
登録情報
- 出版社 : 亜紀書房 (2013/6/26)
- 発売日 : 2013/6/26
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 248ページ
- ISBN-10 : 4750513113
- ISBN-13 : 978-4750513119
- 寸法 : 13.1 x 1.8 x 18.8 cm
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