エリーとマイア。有名進学校のパーシー学院に転校してきた十五歳。教室を探していたエリーはマイアとぶつかり、出会います。
エリーは、マイアを一目見て思います。「彼の髪にふれてみたい。彼の顔にふれてみたい」だって、「初めて会ったという気がしなかったのです」
恋におちるって、こういうこと。
マイアだって同じです。「その子のことはわかるような気がするんだ。心の中が見えて、なんでもわかるみたいな」
二人とも、家族の問題で悩んでいます。
エリーが幼い頃、母親は二度、家出をしました。主婦業と母親業だけの人生に満たされず、このままでは心が死んでしまうと思ったのです。もう十五歳ですから、その時の母親の気持ちがわからないわけではありません。でも、エリーは思っています。母親を「一〇〇パーセント信頼することは、もうない」と。
マイアは父親が有名な映画監督、母親が小説家。父親が恋人を作ったために両親は離婚しました。以来、母親は小説を書いていません。父親は罪悪感からマイアをパーシーに入学させてくれました。彼は父親を喜ばせるため、それを受け入れました。そのかわり、一緒に暮らすのは母親に決めました。それでも行ったり来たりは気が重い。そして、マイアにとって何より大変なのは、いつも有名監督と作家の息子と見られてしまうことです。パーシーへの転校は、マイアがただのマイアになるためでもありました。
そうして二人は出会ったのです。
でも、二人はなかなか近づきません。それは、エリーが白人で、マイアが黒人だったから。
マイアは思っています。「白人ばかりの中で、自分はいったい何をしているんだろう?」
エリーは気づきます。どうして今まで黒人は、「私たちのまわりにはいなかったのでしょう?」
彼らは恋の魔法だけに身をすことはできません。一歩をみ出すには、自分のスタンスをはっきりさせないといけないのです。
でも、恋は恋。二人はついに近づきます。
「彼の手が私の手をりました。(略)あたたかくて、やさしくて、いい気分です」「やがてマイアのくちびるが私のくちびるに重なりました。その感触は、彼の手と同じようにやさしくてあたたかでした」「その瞬間、すべてが静かで、世界は完璧なものになっていました」
ドキドキしますね。ちょっとうらやましいかも。
しかし、人々の視線は、言葉は、二人に突き刺さります。二人はその原因を自分たちのこととしても受け止めます。マイアは、自分の肌の色が黒いのを常に忘れたことがないのに、エリーは自分の肌の色を日頃気にしていない点などを。
この現代の『ロミオとジュリエット』もまた悲劇で終わるのですが、困難な恋に船出した、この二人の姿を通して、差別の意味を考えさせられる一冊です。
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あなたはそっとやってくる 単行本 – 2008/3/1
- 本の長さ223ページ
- 言語日本語
- 出版社あすなろ書房
- 発売日2008/3/1
- ISBN-10475152206X
- ISBN-13978-4751522066
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登録情報
- 出版社 : あすなろ書房 (2008/3/1)
- 発売日 : 2008/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 223ページ
- ISBN-10 : 475152206X
- ISBN-13 : 978-4751522066
- Amazon 売れ筋ランキング: - 734,519位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 7,209位英米文学研究
- カスタマーレビュー:
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イメージ付きのレビュー
4 星
それでも
さまざまな社会問題を織り込みながら、現代に生きるティーンエイジャーたちを描き出して来たジャクリーン・ウッドソン。本作もその例に漏れません。分類はヤングアダルトですが、どんな世代のひとも考えなければならないテーマです。「初恋」のすばらしさやつらさを描きたかった。という著者のことばどおり、切なくて苦しくて悲しい、それでもなお、ひとがひとを好きになるということのすばらしさが伝わって来ます。現実は差別と偏見に満ちあふれ、主人公ふたりの前途は多難なことが目に見えていますが、好きになることに理由はいらず、ただ好きになることが差別や偏見を乗り越えるたったひとつの、そして何よりも単純で難しい方法であることを教えてくれます。初恋がこれからのひとにも。遠い記憶の彼方に過ぎ去ってしまったひとにも。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2011年1月23日に日本でレビュー済み
2012年2月11日に日本でレビュー済み
作者はニューヨーク市のストリート・チルドレンの為の
演劇セラピストをされた後に作家になり、
アメリカ社会でアウトサイダーとみなされる若者たちの声を
吸い上げた作品を、次々描かれているそうです。
物語は、マイアとエリーのそれぞれの視点から語られていきます。
ニューヨーク市で一番授業料の高い私立高校パーシー学院で、
ある日出会った二人は恋に落ちます。
有名な映画監督の父と作家の母を持つ一人っ子で、
現在は両親が別居中のため、両家を交互に行き来し、
居場所の定まらない揺れを感じている黒人マイアは、
父から、「おまえは黒い男なんだ。戦士なんだぞ」
一方で「白人が住んでいる地区では、ぜったいに走っちゃいけないぞ」と
言い聞かされ、有名人の親を持つ悩みと同時に
肌の色の呪縛から逃れられない人生を歩んできました。
一方、ユダヤ系の医師の娘で、こちらも恵まれた環境に育ってきた白人のエリーですが、
かつて二度ほど母に家出され、その心の傷が未だ癒えず、
母親とは今もしっくりいきません。
互いに孤独を感じる二人は、自分たちの苦い過去を振り返り、
白人と黒人の交際への周囲の目に対しても、
自分たちなりに気持ちを整理しながら
愛を確認し、距離縮めていきます。
15歳なりに一生懸命折り合っていく姿に気持ちを重ねます。
ラストで、彼の父親の警告が伏線だったことに気がつき、
その構成に感嘆しましたが、
もう少し、二人の思いを感じていたかったような気がしました。
二人が少しずつ育ててきた気持ちに対して、幕切れはあっけなく、
それが作者の狙いでありこの作品のテーマなのかもしれませんが、
突き放された気持ちは否めません。
10代向けではありますが、もう少し文字量があってもよかったような気がします。
演劇セラピストをされた後に作家になり、
アメリカ社会でアウトサイダーとみなされる若者たちの声を
吸い上げた作品を、次々描かれているそうです。
物語は、マイアとエリーのそれぞれの視点から語られていきます。
ニューヨーク市で一番授業料の高い私立高校パーシー学院で、
ある日出会った二人は恋に落ちます。
有名な映画監督の父と作家の母を持つ一人っ子で、
現在は両親が別居中のため、両家を交互に行き来し、
居場所の定まらない揺れを感じている黒人マイアは、
父から、「おまえは黒い男なんだ。戦士なんだぞ」
一方で「白人が住んでいる地区では、ぜったいに走っちゃいけないぞ」と
言い聞かされ、有名人の親を持つ悩みと同時に
肌の色の呪縛から逃れられない人生を歩んできました。
一方、ユダヤ系の医師の娘で、こちらも恵まれた環境に育ってきた白人のエリーですが、
かつて二度ほど母に家出され、その心の傷が未だ癒えず、
母親とは今もしっくりいきません。
互いに孤独を感じる二人は、自分たちの苦い過去を振り返り、
白人と黒人の交際への周囲の目に対しても、
自分たちなりに気持ちを整理しながら
愛を確認し、距離縮めていきます。
15歳なりに一生懸命折り合っていく姿に気持ちを重ねます。
ラストで、彼の父親の警告が伏線だったことに気がつき、
その構成に感嘆しましたが、
もう少し、二人の思いを感じていたかったような気がしました。
二人が少しずつ育ててきた気持ちに対して、幕切れはあっけなく、
それが作者の狙いでありこの作品のテーマなのかもしれませんが、
突き放された気持ちは否めません。
10代向けではありますが、もう少し文字量があってもよかったような気がします。
2011年12月26日に日本でレビュー済み
簡単に言えば初恋の話なのだが,それが黒人少年と白人少女だった故に物語はすんなり進まない.1998年の作品なのだが,アメリカに今なお残る異人種のカップルへの差別と偏見に驚く.人を好きになる瞬間から思いを告げるまでの心の揺れが繊細に描いてあり,ハッピーエンドで終わって欲しかったと思う一方,切ないラスト故に忘れられない作品になった.十代はもちろん,あのころのドキドキを思い出したい大人にもお薦め.
2008年3月23日に日本でレビュー済み
ある日、二人は恋に落ちた。黒人の少年ジェレマイアと、白人の少女エリーは、互いに孤独を抱えていた。時間を共に過ごしていく中で、心を通わせていく二人だったが…
この物語は、ただの恋物語ではありません。家庭環境、人種差別など、様々な問題がジェレマイアとエリーを通して描かれているのです。(黄色人種も差別の対象です。しかし、私達の周りには、別の差別も蔓延っています…)
交互に視点を変えることで、二人が何を思い、考えていたかがよく分かる構成になっています。たいへん読みやすいのですが、あまりにも切ないので、読み終えるのが辛い作品でした。
良作だと思います。
この物語は、ただの恋物語ではありません。家庭環境、人種差別など、様々な問題がジェレマイアとエリーを通して描かれているのです。(黄色人種も差別の対象です。しかし、私達の周りには、別の差別も蔓延っています…)
交互に視点を変えることで、二人が何を思い、考えていたかがよく分かる構成になっています。たいへん読みやすいのですが、あまりにも切ないので、読み終えるのが辛い作品でした。
良作だと思います。
2008年12月10日に日本でレビュー済み
15歳の恋はあまりにも切実で儚く途切れた。
エリーとマイアをとりまく環境は複雑で、周囲の人々は理解以前に
“感情”レベルのところで、ふたりを拒否する。
肌の色、人種……偏見、差別的感情。
ふたりが交互に語る構成で、それぞれの家庭環境の困難さも
吐露されてゆく。
親の都合に振り回される現実は、ふたりに厳しい孤独感を与え続けてきたのだ。
自分のすべてをさらけだせる相手を求め続けてきたのだ。
出会って、恋におちて、やっとつかんだ「世界」であったのに。
◆「もしあの人たちが、肌の色にこだわってだれかを好きになれないとすると……
同じものがあたしの中にもあるんじゃないかって不安になるの」
◆「ああいうとき、おれは白人が嫌いになる。でも、白人が嫌いなのに、
きみを愛してるってどういうことなんだ、って自分にたずねる」
深い洞察力で自分たちのことを真正面からとらえたことばに胸をつかれた。
エリーとマイアをとりまく環境は複雑で、周囲の人々は理解以前に
“感情”レベルのところで、ふたりを拒否する。
肌の色、人種……偏見、差別的感情。
ふたりが交互に語る構成で、それぞれの家庭環境の困難さも
吐露されてゆく。
親の都合に振り回される現実は、ふたりに厳しい孤独感を与え続けてきたのだ。
自分のすべてをさらけだせる相手を求め続けてきたのだ。
出会って、恋におちて、やっとつかんだ「世界」であったのに。
◆「もしあの人たちが、肌の色にこだわってだれかを好きになれないとすると……
同じものがあたしの中にもあるんじゃないかって不安になるの」
◆「ああいうとき、おれは白人が嫌いになる。でも、白人が嫌いなのに、
きみを愛してるってどういうことなんだ、って自分にたずねる」
深い洞察力で自分たちのことを真正面からとらえたことばに胸をつかれた。
2008年5月12日に日本でレビュー済み
さまざまな社会問題を織り込みながら、
現代に生きるティーンエイジャーたちを描き出して来たジャクリーン・ウッドソン。
本作もその例に漏れません。
分類はヤングアダルトですが、
どんな世代のひとも考えなければならないテーマです。
「初恋」のすばらしさやつらさを描きたかった。
という著者のことばどおり、切なくて苦しくて悲しい、それでもなお、
ひとがひとを好きになるということのすばらしさが伝わって来ます。
現実は差別と偏見に満ちあふれ、主人公ふたりの前途は多難なことが目に見えていますが、
好きになることに理由はいらず、ただ好きになることが差別や偏見を乗り越えるたったひとつの、
そして何よりも単純で難しい方法であることを教えてくれます。
初恋がこれからのひとにも。
遠い記憶の彼方に過ぎ去ってしまったひとにも。
現代に生きるティーンエイジャーたちを描き出して来たジャクリーン・ウッドソン。
本作もその例に漏れません。
分類はヤングアダルトですが、
どんな世代のひとも考えなければならないテーマです。
「初恋」のすばらしさやつらさを描きたかった。
という著者のことばどおり、切なくて苦しくて悲しい、それでもなお、
ひとがひとを好きになるということのすばらしさが伝わって来ます。
現実は差別と偏見に満ちあふれ、主人公ふたりの前途は多難なことが目に見えていますが、
好きになることに理由はいらず、ただ好きになることが差別や偏見を乗り越えるたったひとつの、
そして何よりも単純で難しい方法であることを教えてくれます。
初恋がこれからのひとにも。
遠い記憶の彼方に過ぎ去ってしまったひとにも。
さまざまな社会問題を織り込みながら、
現代に生きるティーンエイジャーたちを描き出して来たジャクリーン・ウッドソン。
本作もその例に漏れません。
分類はヤングアダルトですが、
どんな世代のひとも考えなければならないテーマです。
「初恋」のすばらしさやつらさを描きたかった。
という著者のことばどおり、切なくて苦しくて悲しい、それでもなお、
ひとがひとを好きになるということのすばらしさが伝わって来ます。
現実は差別と偏見に満ちあふれ、主人公ふたりの前途は多難なことが目に見えていますが、
好きになることに理由はいらず、ただ好きになることが差別や偏見を乗り越えるたったひとつの、
そして何よりも単純で難しい方法であることを教えてくれます。
初恋がこれからのひとにも。
遠い記憶の彼方に過ぎ去ってしまったひとにも。
現代に生きるティーンエイジャーたちを描き出して来たジャクリーン・ウッドソン。
本作もその例に漏れません。
分類はヤングアダルトですが、
どんな世代のひとも考えなければならないテーマです。
「初恋」のすばらしさやつらさを描きたかった。
という著者のことばどおり、切なくて苦しくて悲しい、それでもなお、
ひとがひとを好きになるということのすばらしさが伝わって来ます。
現実は差別と偏見に満ちあふれ、主人公ふたりの前途は多難なことが目に見えていますが、
好きになることに理由はいらず、ただ好きになることが差別や偏見を乗り越えるたったひとつの、
そして何よりも単純で難しい方法であることを教えてくれます。
初恋がこれからのひとにも。
遠い記憶の彼方に過ぎ去ってしまったひとにも。
このレビューの画像
2008年6月2日に日本でレビュー済み
十五歳の二人が惹かれ会う様が美しく、静謐で辛い物語。
いろいろな差別をこういう切り口でみせてくれるのは凄いなぁと思います。
すごくえぐられる。この感覚を深く刻み込まれて、忘れる事が出来ない。
陳腐な言葉でしか説明出来ない感じがもどかしい。
辛い読後感だが、読んで良かった。
浮かれる自由もないなんて!と思う。
思春期の少年少女に、
それを忘れてしまっている大人にも
是非お勧めしたい。
いろいろな差別をこういう切り口でみせてくれるのは凄いなぁと思います。
すごくえぐられる。この感覚を深く刻み込まれて、忘れる事が出来ない。
陳腐な言葉でしか説明出来ない感じがもどかしい。
辛い読後感だが、読んで良かった。
浮かれる自由もないなんて!と思う。
思春期の少年少女に、
それを忘れてしまっている大人にも
是非お勧めしたい。