ベルトランはクセジュ文庫に『冶金の歴史』が翻訳されている科学史家ですが、この本の翻訳がかねて畏敬している山田慶児氏ということもあり、読んでみました。
前半部（第5章まで）は、レオナルド・ダ・ヴィンチが引き継ぐことになる、ヨーロッパの機械製作の伝統を詳しく述べています。それこそギリシアのアルキメデスからローマやビザンツの原典を探り、アラブから中世ヨーロッパの工学者たちまで。ベルトランさんは古文書館や図書館に埋もれていた史料を駆使してくれたおかげで、ヴィラール・ド・オヌクール、グイド・ダ・ヴィジェヴァーノ、ドイツ学派のコンラド・キーザー、フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニなどの業績を知りました。
後半からダ・ヴィンチの仕事ぶりを見てみると、この「万能の天才」は工学の分野ではほとんどオリジナリティーを発揮しなかった、といいたくなります。
挿絵や図が多くてわかりやすく、科学史に興味のある読者は、巻末で写本目録や参考文献を一覧できます。
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