森下さんは父母弟との四人家族。父親が乱暴・横暴で経済的にも精神的にも豊かでない中に、高校卒業まで秋田市で育ちます。結局は高校二年生の時、姉弟主導で両親を離婚させ、父親を追い出します。それぐらい自分のある少女なのですが、如何せん精神的な豊かさを学べる機会が無かったし、人間不信の念は深かったようです。だから「感情がすんなり外に出ていかない」。東京の会社にうまく就職し、親の呪縛を断ちましたが、仕事の将来に希望を持てず、友達もできず、偶然のスカウトを受けいれ、TOHJIRO監督にめぐり会いAV女優になります。「裸になる」は、AV出演ということ以上に、これまで身に付けてきたものをすべて捨てて、リセットするような大転回をし、「冷凍マグロ」のような何もない自分をさらけ出したことなのでしょう。ここでTOHJIRO監督が社会人としての森下さんを「父」として育ててくれたこと、加藤鷹さんとかのAV男優も含めて現場のスタッフが真面目に真摯に作品作りに努めることを直接示してくれたことで、新しい「森下くるみ」が生まれます。AV女優の同僚も含め、AVの仕事に携わるすべての人に敬意を払い、尊敬し、「仕事が好き」と言える、人を信じられる森下くるみに育ち直します。
サラリーマン読者として、上司が、職場の仲間が、新人を育てる、とても良い例を見せていただいたと思います。また、「家族の愛情」のようなものを感じさせる現場を維持した人たちに敬意を感じます。
それに応えて、プロフェッショナルの域に達し、大変な人気と業績を叩き出した森下さんの理解力、共感力も魅力です。多様な価値観を認めながらも、多くなった収入に飲まれてしまうことなく、自分を俯瞰し、良識を保ち続ける、ほんのり温かい人間力も素敵です。
ファンとの交流の中で、偏った人や壊れていく人を知り、思い遣りながらも、結局は甘えることなく、恋愛にしても自分が自分を変えていくしかないのだと、クールに割り切るところが、森下さんの次への発展の基礎になっているのでしょう。
訥々と語る感じながら、企まず、じわっと体温を伝えるような文章が良いと思います。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
すべては「裸になる」から始まって 単行本 – 2007/3/1
森下 くるみ
(著)
- 本の長さ237ページ
- 言語日本語
- 出版社英知出版
- 発売日2007/3/1
- ISBN-104754220773
- ISBN-13978-4754220778
登録情報
- 出版社 : 英知出版 (2007/3/1)
- 発売日 : 2007/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 237ページ
- ISBN-10 : 4754220773
- ISBN-13 : 978-4754220778
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年12月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年12月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
森下くるみさんを知ったのは「山犬」という芝居を観て。上演後のトークショーにも登壇してて。それで興味を持って本書を買った、と。
そんな経緯がなければ大部分は「ふーん」で読み流す感じだったかも。芝居とトークショーを観て、何か気になったのは森下さんのほわんとした感じと時折り見せる神経質そう(とはちょっと違うんだけど)な表情。初舞台のテンションと上演後の安堵感と観劇直後のお客さんの前でのトークという緊張感といろいろないまぜだったんでしょうが。
あの人がどんな文章を書くんだろう、と思いながら読んだ。
洗練された文章ではないし、全体的にもごった煮風のエッセイになっていて、このあたり、編集者の技量なんかも感じるけど、時折りすぱっとした物言いで面白い目線だなと感じる部分がある。
笑ってしまったのが、さる業界でぶっかけと呼ばれるジャンルについてのくだりで、「・・・発射するとかの行為は捧げる祈り。で、それを全て受け止めてくれる女優さんが仏様、・・・」という一文。この前読んだ鈴木大拙さんの「無心ということ」を思い出してしまった。女優菩薩が受け止めた後、発射者が次の段階に上がったら、これは宗教と言ってよいのでしょう。ま、一瞬の極楽で満足してるかもしれませんが。
仏教のことなんか考えてると、AV女優の過酷さや彼女らへの偏見が修行のように思えてきて、それを通過してきた森下さんはきっとある時、無心のような状態に達して、また今の世界に戻ってきたんだろうな、なんて思う。
本書自体は「とても面白い」と言うには中途半端なところが多いけれど、この後に書かれたものを読んでみたいなと思うエッセイでした。
そんな経緯がなければ大部分は「ふーん」で読み流す感じだったかも。芝居とトークショーを観て、何か気になったのは森下さんのほわんとした感じと時折り見せる神経質そう(とはちょっと違うんだけど)な表情。初舞台のテンションと上演後の安堵感と観劇直後のお客さんの前でのトークという緊張感といろいろないまぜだったんでしょうが。
あの人がどんな文章を書くんだろう、と思いながら読んだ。
洗練された文章ではないし、全体的にもごった煮風のエッセイになっていて、このあたり、編集者の技量なんかも感じるけど、時折りすぱっとした物言いで面白い目線だなと感じる部分がある。
笑ってしまったのが、さる業界でぶっかけと呼ばれるジャンルについてのくだりで、「・・・発射するとかの行為は捧げる祈り。で、それを全て受け止めてくれる女優さんが仏様、・・・」という一文。この前読んだ鈴木大拙さんの「無心ということ」を思い出してしまった。女優菩薩が受け止めた後、発射者が次の段階に上がったら、これは宗教と言ってよいのでしょう。ま、一瞬の極楽で満足してるかもしれませんが。
仏教のことなんか考えてると、AV女優の過酷さや彼女らへの偏見が修行のように思えてきて、それを通過してきた森下さんはきっとある時、無心のような状態に達して、また今の世界に戻ってきたんだろうな、なんて思う。
本書自体は「とても面白い」と言うには中途半端なところが多いけれど、この後に書かれたものを読んでみたいなと思うエッセイでした。
2013年10月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
結局なぜAVなのか、いまいち分からない。金ではないらしい。作中で否定している。AVもプロであり成長できた。これはいい。自分の選択である以上責任は取るし、後悔はしない。これもいいが、これだけなら別にAVでなくてもよい訳である。蒼井そらのようにビッグ(?)になるための手段と割り切っている訳でもない。
結局まえがきで書いているとおり、「リセットするため」なのだろう。たとえ本人の望まない形であれ、切実にそうせざるを得ない人がいる。この内容では、そう納得するしかない。
そろそろ裸にならなくてもいいよ。とは、花村萬月の解説。彼女はこの一文に反発するだろうか。「AVに誇りを持っている。偏見を持つな」と。いや、彼女はこのメッセージに、救いを見ているような気がする。
結局まえがきで書いているとおり、「リセットするため」なのだろう。たとえ本人の望まない形であれ、切実にそうせざるを得ない人がいる。この内容では、そう納得するしかない。
そろそろ裸にならなくてもいいよ。とは、花村萬月の解説。彼女はこの一文に反発するだろうか。「AVに誇りを持っている。偏見を持つな」と。いや、彼女はこのメッセージに、救いを見ているような気がする。
2018年11月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
陳腐である。AVに限らず芸能人や小説家 漫画家 才能がモノ言う職業人の自伝でよく見かけるエピソードの連続。だけど 一気に読ませる。感動をくれる。つまり 文才並々ならない作家さん
2012年11月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本の存在は”映画の原作”という事で知りました。以前から、コラム的なものを書いているという噂は何となく聞いていましたが、既に一冊の本になっているとは露知らず。
色々と紆余曲折あって、講談社から再出版となった様ですが、そこら辺の経緯も後付けです。
さて、内容ですが、悲惨な幼少期から始まって、アダルト女優になる経緯や仕事ついて、加えて、個人的な生活ぶりなどなどを、淡々と語っています。実に森下さんらしい内容だと思います。あの少しボソボソとした低いトーンで語り掛けてくる様な文章です。彼女の声が聞こえる様です。
序盤は少し陰鬱な感じがしますが、全般的に、能天気な感じがして、非常に心地良い。こういう職業の方の自伝的は兎角暗くなりがちですが、漫才のつっこみ口調で面白可笑しく描かれ、清々しいくらい同情できないです(失礼)。
当然ながら親しい訳ではないので真相は分かりませんが、彼女の人柄がよく出ているのではないかと思います(推測)。
又、皆さん、この本を読んで、森下くるみさんは文才があるとか感想を書かれていますが、私は文才云々より「この娘(こ)は、沢山、本を読んでいるんだなぁ」という思いの方が強いです(”この娘”とか言ってすいません。一応、年上なので…)。
色々な文章を読んで、それを自分なりに理解し、消化して再構成された文章の様に思います。だから、読みやすい。読み手の事が分かっているから。
ただ、内容として、正直、共感できない部分もあります。人間、十人十色、千差万別なので、当然です。批判するつもりは毛頭ございません。
でも、こういう女性もいるんだなぁという気持ちで読んでみると、きっと、面白いと思います。
因みに”−★”は、その共感できない部分。共感できる人には★×5でしょう。
色々と紆余曲折あって、講談社から再出版となった様ですが、そこら辺の経緯も後付けです。
さて、内容ですが、悲惨な幼少期から始まって、アダルト女優になる経緯や仕事ついて、加えて、個人的な生活ぶりなどなどを、淡々と語っています。実に森下さんらしい内容だと思います。あの少しボソボソとした低いトーンで語り掛けてくる様な文章です。彼女の声が聞こえる様です。
序盤は少し陰鬱な感じがしますが、全般的に、能天気な感じがして、非常に心地良い。こういう職業の方の自伝的は兎角暗くなりがちですが、漫才のつっこみ口調で面白可笑しく描かれ、清々しいくらい同情できないです(失礼)。
当然ながら親しい訳ではないので真相は分かりませんが、彼女の人柄がよく出ているのではないかと思います(推測)。
又、皆さん、この本を読んで、森下くるみさんは文才があるとか感想を書かれていますが、私は文才云々より「この娘(こ)は、沢山、本を読んでいるんだなぁ」という思いの方が強いです(”この娘”とか言ってすいません。一応、年上なので…)。
色々な文章を読んで、それを自分なりに理解し、消化して再構成された文章の様に思います。だから、読みやすい。読み手の事が分かっているから。
ただ、内容として、正直、共感できない部分もあります。人間、十人十色、千差万別なので、当然です。批判するつもりは毛頭ございません。
でも、こういう女性もいるんだなぁという気持ちで読んでみると、きっと、面白いと思います。
因みに”−★”は、その共感できない部分。共感できる人には★×5でしょう。
2015年5月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本を読み終わっての私の感想は花村萬月氏のあとがきのこの一言が全てを語っている。
「彼女には文才がある」
エッセーではあるが父と娘のくだりは私小説を読んでいるかの感覚だった。次の作品を読みたいと思わせてくれる内容であることは確かである。彼女がこの先、文筆家としてどう伸びるかはわからないけれども新しい作品を期待しています。
「彼女には文才がある」
エッセーではあるが父と娘のくだりは私小説を読んでいるかの感覚だった。次の作品を読みたいと思わせてくれる内容であることは確かである。彼女がこの先、文筆家としてどう伸びるかはわからないけれども新しい作品を期待しています。
2016年12月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
以前に発売された文庫本の方も読ませていただきましたが、内容は大きく変わってないのですがガラッと印象が変わったように感じました。
森下くるみさんが大人になったからなのかな?30代になり何かが変わったからだろうか?
僕なりに分析させてもらいましたが、たぶん親になったからなのかもしれません。
読んだ後に人を好きになれる作品になりましたね(愛)
文庫本の方と読み比べしてみると面白いと思います。何が違うのかな?
うむ。表紙の女性が未来を見ているところかもしれないな(笑)
とても素敵な作品なので是非!寒い冬でもほっこりします!!
森下くるみさんが大人になったからなのかな?30代になり何かが変わったからだろうか?
僕なりに分析させてもらいましたが、たぶん親になったからなのかもしれません。
読んだ後に人を好きになれる作品になりましたね(愛)
文庫本の方と読み比べしてみると面白いと思います。何が違うのかな?
うむ。表紙の女性が未来を見ているところかもしれないな(笑)
とても素敵な作品なので是非!寒い冬でもほっこりします!!
2012年6月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
森下くるみっていうAV女優は知らなかったのですが
ことこの小説は意外といっては失礼ですが、淡々と自分の気持ちを
素直に表現してあって良かったよ、小説してるよ
巻末にはAV嫌いという「花村満月」さんの紹介文が掲載されていた
のがまさに意外でした。
花村さんも褒めていましたね文章を・・・・
凄く卑猥な自伝でも書いてるのかと思ったのですが
意に反して不幸な生い立ちから始まってAVにスカウトされる
までの淡々とした自分の気持ちを素直に文章に乗せていました
森下くるみさんが、AV女優に誇りを持って真剣に撮影に
臨んでいたと云うのが伝わってきました。
AVというだけで偏見に囚われて見るなと言われた気がした。
ことこの小説は意外といっては失礼ですが、淡々と自分の気持ちを
素直に表現してあって良かったよ、小説してるよ
巻末にはAV嫌いという「花村満月」さんの紹介文が掲載されていた
のがまさに意外でした。
花村さんも褒めていましたね文章を・・・・
凄く卑猥な自伝でも書いてるのかと思ったのですが
意に反して不幸な生い立ちから始まってAVにスカウトされる
までの淡々とした自分の気持ちを素直に文章に乗せていました
森下くるみさんが、AV女優に誇りを持って真剣に撮影に
臨んでいたと云うのが伝わってきました。
AVというだけで偏見に囚われて見るなと言われた気がした。