話は変わるが、最近の「運動会」は、競技会から学校の催しに変貌しつつあるという話をよく耳にする。競争を廃し、子どもにケガをさせないようにあぶない競技は行わず、親のビデオ撮影や写真撮影に時間を割き、和気あいあいと進行する。それに対して反対意見もあるが、この流れは止まらないようだ。 　もちろん、本書はこの新しい運動会には反対だ。勉強による刺激により脳が発育し向上するように、小学校低学年のうちに適度な運動により身体感覚を発達させておかないと、大きくなってからこういった身体感覚を身につけるのはたいへんなことだからだ。「運動会」というのは目標であり、そこに向かって努力することで、仮にビリで終わったとしても、そこには必ず成長が見られるはずだ。古い言葉だが、「文武両道」はよき伝統ではなかったのだろうか。

　関連商品として、「運動会で１番になる方法 DVD」も発売中です。本書の「股関節活性化ドリル」を横浜F・マリノス ジュニアチームに１ヶ月間実践してもらった様子と結果を映像で収録しました。3D CG映像も加え、ドリルの内容をわかりやすく解説しています。特典映像として、小島（旧姓・新井）初佳選手の特別インタビュー付き。 　再生時間：約40分、価格：3,675円（税込）、制作、著作、発行：株式会社ジースポート

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　この本は、タイトルのとおりの内容の本です。 　少し補足すれば、「小学生の子どもを運動会で一等賞にするための方法について解説した本」ということになります。 　本当に誰でも一等賞になれるのかといったら、それは走ってみなければわからないでしょう。ところが、この本に書かれた方法（股関節活性化ドリル）を実践することで、いままで「このボクが？」と思っていたような子どもでも、一等賞になれるチャンスがあるのです！ 　この本は、次のような方々に、ぜひとも読んでいただきたいと思って書きました。

・小学生の子どもをお持ちのご両親 ・スポーツを自分でもやったり観たりするのが好きな方 ・人間の身体やその動きについて興味のある方

　２００４年のアテネ・オリンピックでは、日本は過去最高の37個のメダルを獲得しました。 　日本が、こんなにメダルを獲得できるようになったのには、さまざまな理由があげられるでしょう。しかし、ここ数年のスポーツにおける日本人の活躍で、もっとも私たちを驚かせたのは、なんといっても陸上競技の「１００メートル」です。 　バレーボールや柔道や体操など、どちらかといえば作戦や技術がものをいうスポーツに比べ、陸上競技、その中でも１００メートルといえば、肉体の運動能力が、そのまま結果に直結してしまう競技のように見えます。 　１９６４年の「東京オリンピック」のときに、市川昆監督による記録映画が作られました。 　１００メートル決勝のシーンでは、満員の国立競技場がシンと静まりかえり、しなやかで力強く鍛え上げられた美しい肉体を映し出しました。このときの優勝者は、10秒０でゴールに駆け込んだ“黒い弾丸”ボブ・ヘイズ選手です。それは、単に鍛えられたというのではなく、スポーツをするために生まれてきたかのような強靱な肉体であることを見せつけました。 　日本人の体格では、彼らと肩を並べて走ることは難しいと当時の日本人は感じたと思います。 　ところが、１９９８年にバンコクで開催されたアジア大会で伊東浩司選手が10秒00という記録を出します。 　２００３年のパリ世界陸上選手権２００メートルでは、末續慎吾選手が20秒38で銅メダルを獲得、気がつけば日本人は、世界の檜舞台で戦える実力を持っていました。それどころか、体格では我々に勝る欧米各国をごぼう抜きにして、

“アフリカ系と対等になった短距離のメダル獲得”

そして、

“アフリカ系を除く１００メートルの世界記録は日本人”

となったのです！ 　まさに“奇跡”というべきことが起こっているのです。 　それでは、この“奇跡”は、どのようにして起こされたのでしょう。突然、日本選手が速くなったのはなぜなのか？ 　人間の身体は、約８００の筋肉からなっています。骨格と筋肉によってコントロールされる人の動きのメカニズムは、映像技術やコンピュータを利用して分析することができるようになりました。そのような、人間のメカニズムを研究する学問分野は「バイオメカニクス」と呼ばれています。そのスポーツ分野への応用に関しては、日本は世界でもっとも進んでいるのです。日本の短距離選手の活躍に、この新しい学問分野とそれに関わる研究者たちの成果が少なからず関係しているのです。 　興味深いのは、わずか10年ほどの研究で、いままでトレーニングの常識とされてきたことが次々に覆されたことです。学校の体育の授業で、

「モモを高く上げて」

とか、

「地面をシッカリ蹴る」

といった指導をされた記憶のある方は少なくないでしょう。ところが、いまのトップアスリートたちは、これとはまったく違う走り方をしているのです。 　その内容については、本文でくわしく触れます。 　さて、世の中はいまデジタル化やネットワークの発達で、現実感というものが希薄になりがちです。そんな中で、日本の古武術の身のこなしや動きが話題となりました。まったく立場は異なりますが、いままでの常識にとらわれずに、身体について考える、スポーツの動きをとらえ直すという点では、最新のバイオメカニクスの研究と共通する部分があるのかもしれません。身体感覚を養い動かすことの奥深さは、変わらないテーマのはずだからです。 　さて、ここまで書けばもうおわかりですね。 　この本は、日本人を世界のトップクラスまで押し上げた最新の科学理論をもとに、運動会で一等賞を目指そうというものなのです。そして、小学生で正しい走り方を身につけることは、正しい身体感覚を作り上げていくうえでも、とても大切であるということをお伝えしたいと思います。

　自分が小学生だったときのことを思い出してください。 　子どものときの一瞬の喜びや感動、なかでも挑戦してやりとげた満足感は、一生忘れるものではありません。 　運動会で１番になる、みんなに認められる、自信を持つということは、その後の人生にとっても、すばらしいことだと思います。自分の力を伸ばすことを覚え、勝つために精神的にも強くなり、本物の強さがあるからこそ優しくなれるのです。 　そんな、どんな高価な宝石にも代え難いキラキラする体験を、あなたのお子さんにさせたいと思いませんか？