蓮實映画論は、読んで分からないのが相場である。著者自身、分かってもらおうと思って書いているわけではないだろうから、やっぱり分からない。まぁ分かるわけがない。
しかし、講演となると、人が変わったように分かりやすくなる。本書は二時間のレクチャーを三回収録しているが、根が学校の先生だからなのか、実際の講演では、ふんだんにショットが用いられており、懇切丁寧で、教育的に十二分に配慮されていたらしい。蓮實がサービス精神旺盛であることは、インタビュアーとしての仕事ぶりをみてみれば、ある程度想像できる。
特に第二章。ヒッチコックの『汚名』では階段のシーンが合計七回出てくるが、七回とも演出を変えることによって、「階段という何の変哲もない装置が、さまざまな意味をあたりに押し拡げていくこと」を分析し、「映画とはごく僅かなもので成立するものだ」という原則を、手品のように納得させてくれる。
昔からの蓮實ファンにとっては、あられもなく聴衆に手取り足取り説明する姿など、幻滅するかもしれない。しかし、初期の蓮實映画論を読んで裸足で逃げ出してきた人たちにも、安心して読める。これ一冊読めば蓮實映画論が分かるというわけではないが、読んで分からないということは、ないと思う。
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映画への不実なる誘い-国籍・演出・歴史 単行本 – 2004/8/1
蓮實 重彦
(著)
- 本の長さ179ページ
- 言語日本語
- 出版社エヌティティ出版
- 発売日2004/8/1
- ISBN-104757140819
- ISBN-13978-4757140813
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登録情報
- 出版社 : エヌティティ出版 (2004/8/1)
- 発売日 : 2004/8/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 179ページ
- ISBN-10 : 4757140819
- ISBN-13 : 978-4757140813
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,264,637位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2004年9月23日に日本でレビュー済み
講演をもとにしていることも理由だろうが、かつての蓮實節のような鬼面人を驚かす文体、着目点、論理展開は目立たなくなっている。普通の文章として、スイスイ読める。自分が映画について語るための環境は作ったという自信からだろう、もはや敵への激しい攻撃もなく、方法論的な自己言及もなく、ただ、語りたいことを、語りたいように語っている。蓮實ファンとしては、「国籍」の章など、いまさら感もあるが、渇えは癒えた。
私としては、やはり「歴史」の章が面白い。蓮實さんがゴダールをここまで明確に相対化した文章を、読んだ記憶がない。「新しい歴史はまだ構想されていない」と言いつつ、蓮實さんの頭の中にはその展望があるはずだ。まとまった形で読めるときは、来るのだろうか。
私としては、やはり「歴史」の章が面白い。蓮實さんがゴダールをここまで明確に相対化した文章を、読んだ記憶がない。「新しい歴史はまだ構想されていない」と言いつつ、蓮實さんの頭の中にはその展望があるはずだ。まとまった形で読めるときは、来るのだろうか。