第6章には、中立進化に関する有名な論文2点を説明しています。英語の専門の論文を解説スタイルは、一般の本ではありそうでないので、貴重な情報だと思います。
ただ、それ以外の章については、心から同感できるものはありませんでした。宗教を否定しても魂を否定してもそれは著者の自由ですし、実は絵画が好きで表紙のデザインが自分で、この世が無間地獄で笑い飛ばすとかいうあとがきを書きたければそれでいいのですが、読者には感動は正直ないと思います。進化遺伝学の知識の解説や、第7-8章の生物進化に関する想像は、面白かったです。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
自然淘汰論から中立進化論へ―進化学のパラダイム転換 (叢書コムニス10) (叢書コムニス 10) 単行本 – 2009/12/22
斎藤 成也
(著)
本書は、生物進化研究の最先端を、一般の方々に向け、できるだけわかりやすく紹介した
ものです。本書でもっともお伝えしたいことは、ダーウィン以来の自然淘汰論が、二〇世
紀の後半に中立進化論にとって代わられたという、進化学のパラダイム転換です。ラマル
クの進化学説以降、自然淘汰論と中立進化論のふたつが、進化論の二大潮流となっていま
した。そして、多数の生物種のゲノム塩基配列がつぎつぎと明らかになってきている現在、
ゲノム進化の根本は中立進化であることが確立したのです。
中立進化論の確立は、進化学だけでなく、生物学全体に大きな影響を及ぼしています。さ
らにこのパラダイム転換は、生物学の分野にとどまらず、私たちの生命観、世界観にも影
響を与えはじめています。
ものです。本書でもっともお伝えしたいことは、ダーウィン以来の自然淘汰論が、二〇世
紀の後半に中立進化論にとって代わられたという、進化学のパラダイム転換です。ラマル
クの進化学説以降、自然淘汰論と中立進化論のふたつが、進化論の二大潮流となっていま
した。そして、多数の生物種のゲノム塩基配列がつぎつぎと明らかになってきている現在、
ゲノム進化の根本は中立進化であることが確立したのです。
中立進化論の確立は、進化学だけでなく、生物学全体に大きな影響を及ぼしています。さ
らにこのパラダイム転換は、生物学の分野にとどまらず、私たちの生命観、世界観にも影
響を与えはじめています。
- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社NTT出版
- 発売日2009/12/22
- ISBN-104757160453
- ISBN-13978-4757160453
この著者の人気タイトル
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
1957年福井県生まれ。1979年、東京大学理学部生物学科卒業。1986年、テキサス大学ヒ
ューストン校大学院修了。東京大学理学部人類学教室助手、国立遺伝学研究所進化遺伝研
究部門助教授を経て、2002年より国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門教授。総合研究大学
院大学生命科学研究科遺伝学専攻教授、東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻教授を
兼任。日本学術会議会員。ゲノム進化、人類進化を研究している。
主な著書に、『遺伝子は35億年の夢を見る』(大和書房)、『ゲノムと進化』(新曜社)、『DNA
から見た日本人』(ちくま新書)、『ゲノム進化を考える』(サイエンス社)、『ゲノム進化学
入門』(共立出版)、『シリーズ進化学(全7巻)』(共編著、岩波書店)、『生物学者と仏教学
者 七つの対論』(共著、ウェッジ選書)などがある。
ューストン校大学院修了。東京大学理学部人類学教室助手、国立遺伝学研究所進化遺伝研
究部門助教授を経て、2002年より国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門教授。総合研究大学
院大学生命科学研究科遺伝学専攻教授、東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻教授を
兼任。日本学術会議会員。ゲノム進化、人類進化を研究している。
主な著書に、『遺伝子は35億年の夢を見る』(大和書房)、『ゲノムと進化』(新曜社)、『DNA
から見た日本人』(ちくま新書)、『ゲノム進化を考える』(サイエンス社)、『ゲノム進化学
入門』(共立出版)、『シリーズ進化学(全7巻)』(共編著、岩波書店)、『生物学者と仏教学
者 七つの対論』(共著、ウェッジ選書)などがある。
登録情報
- 出版社 : NTT出版 (2009/12/22)
- 発売日 : 2009/12/22
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 248ページ
- ISBN-10 : 4757160453
- ISBN-13 : 978-4757160453
- Amazon 売れ筋ランキング: - 825,228位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 11,539位生物・バイオテクノロジー (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年11月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2017年3月3日に日本でレビュー済み
本書の主張したいことは、十二分に理解できる。
だが、パラダイム転換は、やはり言い過ぎだろう。
現在の進化の総合説(あるいはネオダーウィニズム)が主張するところでは、分子レベルの進化は遺伝的浮動が重要な役割をし、すなわち自然淘汰に「中立」で、表現型レベルでは、やはり、かなり自然淘汰(自然選択)が重要な役割を演じていることは、様々なデータから実証されているのである。
それが、常識であって、表現型レベルでも「中立進化」しかない、と主張するのは無理がありすぎる。
しかしながら、第6章において、1960年代に提出された2論文を丁寧に解説しているのは非常に価値がある。
「分子進化の中立説」のスタートラインを明確に説明しているのは、その手の論文が手に入らない研究者や学生に、とても役に立つと思う。
従って、まっとうな章だけを拾い読みすれば、優れた本であると思う。
だが、パラダイム転換は、やはり言い過ぎだろう。
現在の進化の総合説(あるいはネオダーウィニズム)が主張するところでは、分子レベルの進化は遺伝的浮動が重要な役割をし、すなわち自然淘汰に「中立」で、表現型レベルでは、やはり、かなり自然淘汰(自然選択)が重要な役割を演じていることは、様々なデータから実証されているのである。
それが、常識であって、表現型レベルでも「中立進化」しかない、と主張するのは無理がありすぎる。
しかしながら、第6章において、1960年代に提出された2論文を丁寧に解説しているのは非常に価値がある。
「分子進化の中立説」のスタートラインを明確に説明しているのは、その手の論文が手に入らない研究者や学生に、とても役に立つと思う。
従って、まっとうな章だけを拾い読みすれば、優れた本であると思う。
2010年6月11日に日本でレビュー済み
第一章で著者は、宇宙や生命の成立過程という意味での歴史(自然史)を、文書記録という狭義の歴史と区別するため「歴誌」という言葉を造語している。だが「歴を誌す」では文書記録の意味を出ず、造語する意義が乏しいのでは。
著者には独特のこだわりがあるのだろうが、その感覚は(少なくとも私は)かなり共有し難いものがある。
この本全体を通じた私の印象も、概ねそんな感じであった。
筆者も解説する自然淘汰説対中立説の論争は、実はすでに2, 30年も前に決着をみた話である。現在の進化生物学の主流においては、適応万能論を支持する学者は皆無であり、自然淘汰も中立進化も共に進化の主要なメカニズムと位置づけられている。
だが、著者は現在のこの調和が気に入らないようだ。まさに中立万能論者とでもよぶに相応しく、自然淘汰による表現型進化を否定しようと試みている。
しかし著者の試みは証拠に乏しいだけでなく、論理的にも不備だらけのようにみえる。
例えばクジラ類の進化について、「あるとき四肢が著しく退化した突然変異体が生じた」(p.164)という著者の仮説は、四肢が一旦ひれに変化した後で後ろのひれが退化したという化石証拠とは矛盾している。また、人間の子供が泣くことに関しても、著者は「泣いて親を制御するほうが有利になった」可能性(p.171)に触れているが、私にはこの説は自然淘汰による説明としか思えない。
このような粗雑な自説を展開しておきながら、他方では「複雑な理論をつぎつぎに構築するのが好きな理論家」「自然淘汰を中心にすえた進化論にしがみつく進化研究者」などと他の研究者達を揶揄するに至っては論外である。学説上の論争なら正々堂々とすればよいだろうに。
結局、比較的違和感なく読めたのは第二、第三章の進化研究史の部分(と付録)くらいだった。この本は、進化生物学に関する知識があり、著者の思想に興味がある人以外にはとても勧められない。
著者には独特のこだわりがあるのだろうが、その感覚は(少なくとも私は)かなり共有し難いものがある。
この本全体を通じた私の印象も、概ねそんな感じであった。
筆者も解説する自然淘汰説対中立説の論争は、実はすでに2, 30年も前に決着をみた話である。現在の進化生物学の主流においては、適応万能論を支持する学者は皆無であり、自然淘汰も中立進化も共に進化の主要なメカニズムと位置づけられている。
だが、著者は現在のこの調和が気に入らないようだ。まさに中立万能論者とでもよぶに相応しく、自然淘汰による表現型進化を否定しようと試みている。
しかし著者の試みは証拠に乏しいだけでなく、論理的にも不備だらけのようにみえる。
例えばクジラ類の進化について、「あるとき四肢が著しく退化した突然変異体が生じた」(p.164)という著者の仮説は、四肢が一旦ひれに変化した後で後ろのひれが退化したという化石証拠とは矛盾している。また、人間の子供が泣くことに関しても、著者は「泣いて親を制御するほうが有利になった」可能性(p.171)に触れているが、私にはこの説は自然淘汰による説明としか思えない。
このような粗雑な自説を展開しておきながら、他方では「複雑な理論をつぎつぎに構築するのが好きな理論家」「自然淘汰を中心にすえた進化論にしがみつく進化研究者」などと他の研究者達を揶揄するに至っては論外である。学説上の論争なら正々堂々とすればよいだろうに。
結局、比較的違和感なく読めたのは第二、第三章の進化研究史の部分(と付録)くらいだった。この本は、進化生物学に関する知識があり、著者の思想に興味がある人以外にはとても勧められない。
2010年6月3日に日本でレビュー済み
著者は自分でも表現するとおり、ガチガチの中立論者。前半はそのガチ中立論から見た進化学史で、中盤は中立説と分子進化学の概要をさらに踏み込んで説明する。後半は表現型レベルの中立進化やそこから広がる著者自身の生命観について。
本書を読むときに気をつけないといけないのは、著者が否定的に繰り返し取り上げる「自然選択説」は、分子レベルでの進化もすべて選択が働くという1960年代の、そして現在では支持する人などいない「分子進化選択説」だということ。現在支持されている選択説は「表現型進化の選択説」である。分子進化と表現型進化は明確に区別するべきなのだが、なぜか本書では区別されないまま不毛な批判が続く。これは読者を誤解させるだけではないだろうか?
後半の「表現型進化の中立説」は著者オリジナルなものだが、Just-so-storyの水準すら達成していない。例としてクジラの進化について著者が提示するシナリオはこうだ
:一夜で四肢のない変異個体が現れ、しかもその個体は当初は選択上中立であり(つまり四肢がそろっている個体と同様に繁殖に成功し)、その後に選択によって四肢の欠損が広まった…
また著者は「中立」という語を「自然選択に対して中立」という専門的な概念から離れて、あらゆる偶然を含む包括的な語として再定義した上で、中立説はきわめて重要だと主張する。これも誤解を産むだけではないだろうか。中立論者から見た進化学史などはおもしろいし、分子進化学の解説もすばらしいのだが、それ以外の論理や主張が無茶すぎる。
本書を読むときに気をつけないといけないのは、著者が否定的に繰り返し取り上げる「自然選択説」は、分子レベルでの進化もすべて選択が働くという1960年代の、そして現在では支持する人などいない「分子進化選択説」だということ。現在支持されている選択説は「表現型進化の選択説」である。分子進化と表現型進化は明確に区別するべきなのだが、なぜか本書では区別されないまま不毛な批判が続く。これは読者を誤解させるだけではないだろうか?
後半の「表現型進化の中立説」は著者オリジナルなものだが、Just-so-storyの水準すら達成していない。例としてクジラの進化について著者が提示するシナリオはこうだ
:一夜で四肢のない変異個体が現れ、しかもその個体は当初は選択上中立であり(つまり四肢がそろっている個体と同様に繁殖に成功し)、その後に選択によって四肢の欠損が広まった…
また著者は「中立」という語を「自然選択に対して中立」という専門的な概念から離れて、あらゆる偶然を含む包括的な語として再定義した上で、中立説はきわめて重要だと主張する。これも誤解を産むだけではないだろうか。中立論者から見た進化学史などはおもしろいし、分子進化学の解説もすばらしいのだが、それ以外の論理や主張が無茶すぎる。
2010年4月6日に日本でレビュー済み
基礎知識のない人にも判るようにと最終項(専門用語の解説)にありますが、説明の完全理解は正直文系読者には相当きついなとの読後感です。最終項を先に読んでも同じかもしれません。
前段はダーウィン起源の自然淘汰論の歴史と木村資生の中立進化論への流れの説明。中段は分子生物学と数学統計学を縦横に駆使した中立進化論の冷静な展開が続きます。時として難解、しかしながら中立進化論の旗手たる著者の強い思い入れが込められた部分であることが伝わってきます。中立進化とはいかなる概念(最早事実?)なのか、最適者選択とどこが違うのかようやく朧ながら理解できたような気がしました。後段は著者の特徴でしょうか、古くさい言い方で恐縮ですが、物理・生化学からの説明に思想・哲学的な方向性が加わっています。言語とネオテニー、世界観・宇宙観における「偶然」、生命の起源などに中立進化の視点から問題提起を試みています。この点については、正誤はともかくやや対象が広がってもう少し説明と分析、立証が欲しいところですが、現在到達している科学技術水準ではそれは無理ですからあくまで著者の見解と言うことで理解すれば良いと思います。
前段は進化論の理解に極めて有意義、中段は中立論の内容理解、そして最近確定した隕石による大量絶滅の意味や個体数増加は実は遺伝的には安定期など従来の理解が違っていたこと等、後段は著者固有の世界観に触れるユニークな構成です。
前段はダーウィン起源の自然淘汰論の歴史と木村資生の中立進化論への流れの説明。中段は分子生物学と数学統計学を縦横に駆使した中立進化論の冷静な展開が続きます。時として難解、しかしながら中立進化論の旗手たる著者の強い思い入れが込められた部分であることが伝わってきます。中立進化とはいかなる概念(最早事実?)なのか、最適者選択とどこが違うのかようやく朧ながら理解できたような気がしました。後段は著者の特徴でしょうか、古くさい言い方で恐縮ですが、物理・生化学からの説明に思想・哲学的な方向性が加わっています。言語とネオテニー、世界観・宇宙観における「偶然」、生命の起源などに中立進化の視点から問題提起を試みています。この点については、正誤はともかくやや対象が広がってもう少し説明と分析、立証が欲しいところですが、現在到達している科学技術水準ではそれは無理ですからあくまで著者の見解と言うことで理解すれば良いと思います。
前段は進化論の理解に極めて有意義、中段は中立論の内容理解、そして最近確定した隕石による大量絶滅の意味や個体数増加は実は遺伝的には安定期など従来の理解が違っていたこと等、後段は著者固有の世界観に触れるユニークな構成です。
2010年3月3日に日本でレビュー済み
進化論理論における、自然淘汰論から中立進化論へのパラダイム転換を軸に、自然科学のみならず、社会全体にまで視野を広げた知的文脈へのインパクトを論じたものである。
ラマルク以前の進化論、ダーウィンの進化論、諸学説の展開、分子生物学のインパクト、そして中立進化論の登場と定着が順序立てて明快に論じられ、現代社会への思想や世界観への影響が詳細に示される。個人的には、初期比較言語学と進化論の関わり、言語遺伝子などの議論が興味深かった。
ラマルク以前の進化論、ダーウィンの進化論、諸学説の展開、分子生物学のインパクト、そして中立進化論の登場と定着が順序立てて明快に論じられ、現代社会への思想や世界観への影響が詳細に示される。個人的には、初期比較言語学と進化論の関わり、言語遺伝子などの議論が興味深かった。