17C末~18C初頭にかけて、サレ海賊に囚われたイギリスのトマス・ペロー少年を中心にした歴史小説。
学校での通り一遍の歴史では決して出てこないような出来事がそこかしこにある。
イギリス海軍は世界最強だと思ったらあっさりコーンウォール近辺をモロッコの海賊に荒らし回されて
一気に何百人も奴隷として連れ去られて大臣が防ぐ手立てが無いとか嘆くぐらい継続的に荒らされまくるとか、
かと思えば外交上手のはずのイギリスが奴隷解放について(国王ジョージ一世が特に)やる気がなく、
短期で粗暴な軍人を送りこんだりして奴隷解放の交渉を頓挫させたりとか。
モロッコの側ではスルタンのムーレイ・イスマイル(ギネス記録で888人の子を成したらしい!)が独裁者どころでなく
自分でシャムシールもって下手を打った部下や奴隷の首をぽんぽん刎ねてたり、
かと思えば数万の奴隷を使役してヴェルサイユ宮殿を超えるほどの巨大な宮殿を建築していたり
セネガルまで人狩りのために数万の軍隊を差し向けたり、当時のモロッコって国力凄かったんだなぁという。
歴史小説家だけあって当時の資料を基に構成しているので臨場感満天。
イギリスだけではなく、スペイン、フランス、オランダ等の奴隷もおり、ドイツの医師やスコットランドの砲技師が重用されていたりする。
トマス・ペロー少年も改宗を強要され、スルタンに重用されていくわけで、宮廷の官僚?として見る景色もエキゾチックで面白い。
なんとなく読んでみたら思わぬ掘り出し物だった。
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奴隷になったイギリス人の物語 単行本 – 2005/12/22
ジャイルズ・ミルトン
(著),
仙名 紀
(翻訳)
一七~一八世紀のイスラム世界には、一○○万人のヨーロッパ人奴隷がいたことをご存知だろうか? 海賊に拉致され、イスラムの奴隷となった英国人トマス・ペローの貴重な日記をもとに、英国版「おろしゃ国酔夢譚」ともいうべき、波瀾万丈の人生ドラマを描きだし、イスラムと西欧の隠された歴史の真実に迫る、驚愕のノンフィクション!
- 本の長さ406ページ
- 言語日本語
- 出版社アスペクト
- 発売日2005/12/22
- ISBN-104757212119
- ISBN-13978-4757212114
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商品の説明
出版社からのコメント
編集者より—最初に、訳者の仙名 紀さんより、本書のことを教えてもらったときは、正直、「イスラム世界に100万人の白人奴隷がいたなんて聞いたことがない」と半信半疑でした。それに17~18世紀といえば、大航海時代も終わり、ヨーロッパが世界の制海権を掌握したあとではなかったっけ? と思いつつ、この本の中身を検討し始めた私は、すぐさま、この本のドラマチックな展開へと引き込まれていきました。そこには、金正日を100倍くらい強力にしたスルタンや、恐ろしいほどに運命を弄ばれていく白人奴隷、そして子どもの頃に読んだ『アラビアン・ナイト』さながらの贅を尽くしたイスラム宮廷の世界が広がっていたのです。奴隷の引渡しを求めてスルタンと交渉するヨーロッパの使節団など、まるで、拉致事件の解決のために北朝鮮に赴く日本の外務次官のように、いいようにあしらわれてしまいます。現代につながるヨーロッパとイスラムの相克を丹念に掘り起こした本書は、読み物であるとともに、第一級の歴史資料といえます。是非、お手にとって読んでください。
著者について
イギリス人。歴史ノンフィクション作家。大航海時代研究の第一人者。緻密な取材と精緻な時代考証は国際的に高い評価を得ている。邦訳書に、『コロンブスをペテンにかけた男——騎士ジョン・マンデヴィルの謎』(中央公論新社)、『スパイス戦争——大航海時代の冒険者たち』(朝日新聞社)『さむらいウィリアム—三浦按針の生きた時代』(原書房)がある。
登録情報
- 出版社 : アスペクト (2005/12/22)
- 発売日 : 2005/12/22
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 406ページ
- ISBN-10 : 4757212119
- ISBN-13 : 978-4757212114
- Amazon 売れ筋ランキング: - 933,856位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 60,531位歴史・地理 (本)
- - 75,760位文芸作品
- - 133,353位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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2015年4月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2010年8月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
奴隷というと、古代をのぞけば、アフリカからアメリカに送られた人々しか思い浮かばなかったが、近世にもなって、英国やヨーロッパ内から海賊によってさらわれ、奴隷にされた人がこんなに多数居た、というのは本当に驚きだった。
これは、手記や記録を元に構築されたものであるが、読み物としても、脱出の行程などスリルに富んでおり、面白くて一気に読破してしまう。
モーツァルトの歌劇「後宮からの逃走」やバレエの「海賊」は、ずいぶん荒唐無稽な話だ、と思っていたが、こうした史実が元になって作られていたのだ、と改めて認識。
この人々が東西文化交流の礎にもなったのだな、と脱出できずに異国で骨をうずめた人々にも思いをはせた。
これを読んで、この史実におおいに興味をそそられ、実際に先祖がさらわれて奴隷になった人の書いたフィクションなど、関連の小説や読み物を読みまくり、かなりはまった。
一読されることをお勧めしたい。
これは、手記や記録を元に構築されたものであるが、読み物としても、脱出の行程などスリルに富んでおり、面白くて一気に読破してしまう。
モーツァルトの歌劇「後宮からの逃走」やバレエの「海賊」は、ずいぶん荒唐無稽な話だ、と思っていたが、こうした史実が元になって作られていたのだ、と改めて認識。
この人々が東西文化交流の礎にもなったのだな、と脱出できずに異国で骨をうずめた人々にも思いをはせた。
これを読んで、この史実におおいに興味をそそられ、実際に先祖がさらわれて奴隷になった人の書いたフィクションなど、関連の小説や読み物を読みまくり、かなりはまった。
一読されることをお勧めしたい。
2008年9月5日に日本でレビュー済み
この本を読むまで、ヨーロッパ人が北アフリカで奴隷として働かされていたとは知らなかった。
訳者があとがきで書いているように本書でのテーマは歴史の教科書で一切触れられていないし、奴隷というとせいぜいアメリカでの黒人奴隷の話しか知らないのがほとんどの人に当てはまるのではないだろうか。
だから、この本のタイトルを見たときには衝撃を受けたし、本の中身を読み進めていくことでさらに多くの衝撃を受けた。
残虐なスルタンの気持ち一つで生死の境を潜り抜ける総勢100万人にも及ぶ白人奴隷。
黒人をヨーロッパで奴隷として使用しているヨーロッパ人がモロッコでは黒人に見張られるという皮肉を、彼らは劣悪な環境の中で何を思ったのか。
もちろん、捕らえられたモロッコで北米人は何を思ったのか。
記録に残された部分に基づいた構成なため上記のようなギモンが本書を読んで明かされることはなかった。
けれども、現代のキリスト教vsイスラム教という「宗教」という対立軸を挟んだ支配の構図が現代まで続いているというのは見逃せないポイントであり、この対立軸はこれからも消えることなく我々の社会を脅かすだろうという意識が改めて湧いてきた。
「面白い」という表現は語弊があるが、読み物としては大変価値のある作品で、北朝鮮による拉致問題が一向に解決しない日本ではもっと注目されてしかるべき作品だと思う。
訳者があとがきで書いているように本書でのテーマは歴史の教科書で一切触れられていないし、奴隷というとせいぜいアメリカでの黒人奴隷の話しか知らないのがほとんどの人に当てはまるのではないだろうか。
だから、この本のタイトルを見たときには衝撃を受けたし、本の中身を読み進めていくことでさらに多くの衝撃を受けた。
残虐なスルタンの気持ち一つで生死の境を潜り抜ける総勢100万人にも及ぶ白人奴隷。
黒人をヨーロッパで奴隷として使用しているヨーロッパ人がモロッコでは黒人に見張られるという皮肉を、彼らは劣悪な環境の中で何を思ったのか。
もちろん、捕らえられたモロッコで北米人は何を思ったのか。
記録に残された部分に基づいた構成なため上記のようなギモンが本書を読んで明かされることはなかった。
けれども、現代のキリスト教vsイスラム教という「宗教」という対立軸を挟んだ支配の構図が現代まで続いているというのは見逃せないポイントであり、この対立軸はこれからも消えることなく我々の社会を脅かすだろうという意識が改めて湧いてきた。
「面白い」という表現は語弊があるが、読み物としては大変価値のある作品で、北朝鮮による拉致問題が一向に解決しない日本ではもっと注目されてしかるべき作品だと思う。