前作既読であることが前提の続編です。
最近また読み返して新しい発見があったので、レビューを書いています。
前作の「エルナ」は、世界でただ一人魔法の力を持たないアーサトゥアルの姫・エルナが
敵国からやってきた王子・シャールヴィと協力し、魔獣フレーズヴェルグから世界を救う物語でした。
エルナは確かに魔法を持たない、分かりやすく言えば力のない主人公だったわけですが、
とはいえ彼女は大国の姫君でした。また、作中最強の剣の一つでもある聖剣グランテイン、グランクニーヴを扱うことができ、
作中最強のシャールヴィと並んだ時に遜色のない力を発揮できる人物でもありました。
ですが今作はどうかというと、ギムレーが消えた代わりに世界は広がり、
強大な魔法の力を封印した王族たちはかつてのような「目に見える分かりやすい」力を失いました。
そんな中で、ただの女子高生(いや、血統的には彼女もまたエルナスの姫君なのですが)のエルナと、
文字通り何の力も持たないはずの大学生ヴァルが、あるいは騎士リョートが、
自分達が生き延びるために世界を救う。
エルナやシャールヴィのような大望はそこにはありません。
ですが、それがものすごく貴いんじゃないかなというのが再読した感想です。
特に、今回騎士役を務めることになったヴァル。彼の成長は本当に著しいです。
強大な魔力を内に秘めたエルナ、あるいは騎士として生まれながらに育てられているリョート、
作中協力関係になるソーロッドと彼は一線を画しています。
何しろヴァルはただの大学生ですから、魔法オタクとしての知識以外、彼には本当に何もありません。
(逆に言えば彼の場合は知識、思考力、そこから始まる勇気と行動力こそが稀有なる力とも取れます。)
分かりやすい力を持ちえないヴァルは、しかし友人の死やエルナ、世界に迫る危機を前に、文字通り命懸けで戦いを挑みます。
世界を救う、目指す目的は同じです。
でもそれって無印エルナの時の「世界を救う」とは根本的に意味が違うんだと思うのです。
ヴァルの動機付けは単純かつ強いもので、ずっと近くで見守ってきたエルナのためであり、
しかもその気持ちを彼女に受け入れてもらおうというつもりが(少なくとも途中までは)ない。
そこには相手を思いやる気持ちや、何とか滅びの先に向かおうとするあがきがあります。
ヴァルだけでなく、ヴァルの友人スヴァン、途中から協力関係になるベリアルなど、
魅力的な一般人が多いのも、エルナ2の特徴ではないでしょうか。
無印エルナでは、アトリ、シグルーン、ラタトスク、ラヴァルタ(まあ彼女はかなり強い騎士でしたが…)らが果たしたことを
さらに力を持たない一般人の彼らが代弁していると言いますか。
一定の教育が一定の人々に施されるようになり、
個々人の能力は平均化され、遥かに広がった世界。それがエルナ2の世界です。
現実の、今の地球と似ています。
本作のような、力でものを解決しないという価値観がある程度広まり、
共有された世界においては、大きな力を持った英雄は生まれにくい。
そんな中、英雄的な思想など何もない人達が、必死に生きようとして足掻いた物語が
エルナ2なんじゃないかと思います。
なお今回も敵役がスゴイです。ある意味ヴァーリ様に負けてません。
前作を読んでいないと分からないところが多々あるかと思いますが、逆に前作を読んでいる方には
ぜひ読んでもらいたい!
あまり詳しく書くとネタバレが過ぎるので書けないのが残念……くうう。
(終盤、ソーロッドがちょっと報われたようで嬉しかったです。)
おすすめです。
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聖戦記エルナサーガ2 7巻 (Gファンタジーコミックス) コミック – 2006/4/27
堤 抄子
(著)
未来は自分の手で造るものだ———。
暴走した枢機卿・バルドゥルの手に落ちたエルナを救うため聖修道会の本部に攻め入ったヴァルが見たものとは…。世界を救うべく奔走したエルナ達の物語が、今、完結する!!
暴走した枢機卿・バルドゥルの手に落ちたエルナを救うため聖修道会の本部に攻め入ったヴァルが見たものとは…。世界を救うべく奔走したエルナ達の物語が、今、完結する!!
- 本の長さ190ページ
- 言語日本語
- 出版社スクウェア・エニックス
- 発売日2006/4/27
- ISBN-104757516762
- ISBN-13978-4757516762
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登録情報
- 出版社 : スクウェア・エニックス (2006/4/27)
- 発売日 : 2006/4/27
- 言語 : 日本語
- コミック : 190ページ
- ISBN-10 : 4757516762
- ISBN-13 : 978-4757516762
- Amazon 売れ筋ランキング: - 554,173位コミック
- カスタマーレビュー:
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