事前情報から、“雪ルートのノベライズ化”と思っていたのですが、読んでみたら全然違いました。同著者の『水月―この世界に足りないもの』では途中までとはいえ、基本的に本編の流れに沿って書かれていましたが、今著ではそういった点も完全にオリジナルとなっています。
本編では結局投げっぱなしと言えた、“空き巣”や“引き出し”などに著者なりの解釈や、回想では登場するものの、リアルタイムでは一切登場しない主人公の父などの扱い方もユニークで、水月本編が好きだった人なら興味深く読めるのではないかと思います。
ただ、幾つかの面で本編の設定と異なる点は残念でした。目を瞑れる部分は瞑るにしても、年代設定まで変えてしまうのはやり過ぎでしょう。本編で明確に2002年としているものを2005年としてしまうのは如何なものかと思います。
また、主人公の人格は、鈴蘭にマジキレする程、本編よりも病んでいます。
前作もそうでしたが、著者は医者に対し嫌悪感を抱いているのか、随分とネガティブに医者を描いています。本編では特にそういった描写がなかったにも関わらず、小説では二度も描くのは明らかに著者によるネガティブキャンペーンと受け取れます。そういう趣旨の作品なら構いませんが、今作は関係がないだけに、作者のエゴの押し付けを強く感じました。
最大の問題点は最初と最後にある部分でしょう。非常に浮いています。喩えるなら『アルプスの少女ハイジ』の最初と最後に『アポロ13』を付け足したような感じでしょうか。かなり蛇足に感じました。何故このような事をしたのか理解に苦しみます。
個人的には先述の通り“雪ルートのノベライズ化”として楽しみにしていたので、その期待は裏切られましたし、不満も少なからずあるのですが、水月に対するユニークな着眼点と解釈はなかなか面白かったので良しとしたいです。
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水月~迷心: この世界に降りそそぐ光と (ファミ通文庫 508 SPECIAL STORY) 文庫 – 2005/5/1
山と海に囲まれたのどかな風景がつづく「那波町」、目覚めた時に記憶喪失となっていた主人公「僕」こと瀬能透矢。記憶喪失により混乱し、過去がない事の恐怖に怯える透矢。そして、そんな透矢を支え、護るように世話をするメイド、琴乃宮雪。しかし、雪との優しい生活の中に忍び込む疑念が透矢を苦しめる。これは現実なのか、それとも夢なのか——? 大人気ADV『水月〜迷心〜』の小説版に待望の新作!
- 本の長さ249ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA(エンターブレイン)
- 発売日2005/5/1
- ISBN-104757722931
- ISBN-13978-4757722934
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA(エンターブレイン) (2005/5/1)
- 発売日 : 2005/5/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 249ページ
- ISBN-10 : 4757722931
- ISBN-13 : 978-4757722934
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,297,692位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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