突然の知らせ。それは姉の死についてのものだった。
「詳しいことはわからないけど、朝・・・・・・ベッドの中で死んでいたらしい」
北海道。故郷。久しぶりに忌むべきその地に還ってきた主人公、小暮柾彦は、何か遺品でも・・・・・・と、実家に立ち寄った。
姉の部屋。
「姉が最後に聴いたCDを”遺品”にしよう」
プレーヤーから抜き取ったCD。それにはラベルが無かった。姉が編集したベスト盤なのか?
葬式には参列することなく、セレモニーホールの外で姉を弔った柾彦は、東京に戻った。そして、自室で独り姉の遺したCDをかけるのだった。
サックスの演奏・・・・・・それは四曲目辺り・・・得体の知れぬ波動がやってきた・・・。
次の瞬間・・・・・・彼は自分の肉体を見下ろしていた!
体外離脱? 幽体離脱?
思わぬ体験に恐怖したが、幽体と抜け殻は再ドッキングを果たした。
もしかして・・・・・・姉は、あの《肉体》に戻れなくなったのでは・・・・・・!?
勇気を持ってこの”CD”と”体外離脱”の関係を知るべきだ。
あれほどの恐怖を感じたのにもかかわらず、謎に迫る覚悟を決め、柾彦は実験を開始した。
どこまで飛べるのか? 自分以外にもCDによる体外離脱現象は起きるのか? はたして幽体が《モノ》を掴めるのか?
そして、謎のCDの音源は何?
それは、知る人ぞ知る天才サックス奏者、アルバート・アイラーのサックスの音色。しかも未発表テイクだった。
それを知った夜。体外離脱で漂う夜空で、柾彦は幽体の少女と出会った。
「君もアルバート・アイラーを・・・・・・」
笑みと共に少女は去った。
原作者のmarginalは、狩撫麻礼の別ペンネームである。竹谷州史の画は初めて観たが、主人公もフツーにイケメンで、狩撫麻礼作品としてはなかなか新鮮だ。
体外離脱し、幽体となり翔ぶ清澄な夜空。そこでの更なる幽体たちとの出会いの数々は、奇妙な体験を柾彦にもたらす。
一方で、物語は現代社会の地上の人たちが抱える病理にも迫る。
テクノロジーの発達と人間の幸福=充足は並行しているのだろうか?
コミュニケーションを育むことに関して退化しているのではないか?
《ガセネタ》で規定された人生の未来に待ち構えているのは、精神のメルトダウン=溶解・・・?
それにしても、これらの不可思議の正体は何? そして、柾彦は姉の死の真相へと辿り着けるのか。
単行本で全四巻。
全体を通してミステリーめいた緊迫感が静かに漂う物語。じっくりと読ませてもらった。
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Astral Project 月の光 1巻 (ビームコミックス) コミック – 2005/12/26
日、韓で刊行決定の注目作。カンヌ受賞の話題映画『オールドボーイ』の狩撫麻礼(=marginal)の最新長編! 作画は『皆殺しのマリア』などを描いた、俊英・竹谷州史。姉の急死をきっかけに体外離脱をし、月光輝く夜空を翔ぶ青年・柾彦。謎に満ちた姉の死と、天空に拡がる壮大な幽体世界を探りつつ、現代日本が抱える根深い病理をも浮き彫りにする、問題作のミステリー・ロマン!
- 本の長さ218ページ
- 言語日本語
- 出版社エンターブレイン
- 発売日2005/12/26
- ISBN-104757725639
- ISBN-13978-4757725638
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登録情報
- 出版社 : エンターブレイン (2005/12/26)
- 発売日 : 2005/12/26
- 言語 : 日本語
- コミック : 218ページ
- ISBN-10 : 4757725639
- ISBN-13 : 978-4757725638
- Amazon 売れ筋ランキング: - 543,577位コミック
- カスタマーレビュー:
著者について
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札幌市出身、盛岡在住。作品のたびに画風が変化する不思議な漫画家。
「やすらかモンスターズ」(モーニング・ツー)「暗闇ダンス」(コミックビーム)「災厄乙女パン子」 (ヒーローズ)「Smoking Gun民間科捜研調査員流田縁」(グランドジャンプ)「拝金」(コミックゼノン)「紅蓮の花真田幸村」(コミックバンチ)「まっしろけ」「astral project月の光」「皆殺しのマリア」「LAZREZ」「PLANET7」(以上コミックビーム)など。
カスタマーレビュー
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上位レビュー、対象国: 日本
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2022年12月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年9月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
marginal (著)・竹谷 州史(画)によりコミックビームで連載され、2005年より全4巻の単行本が刊行されたものの絶版になっている作品。
体外離脱を扱った数少ないコミックの中でも群を抜く出色の出来映え。スリリングでヒリヒリとした空気が全篇を覆っており、この手のコミックにありがちなギャグの挿入も荒唐無稽な展開もなく、ゆっくりと神秘体験の謎が解き明かされて行くミステリアスなストーリーは、まさに「これを待ってました!」という賞賛を贈りたい傑作。marginal名義の原作者はあの狩撫麻礼ということで納得のクオリティ。
読み始めはデスノート風の画風かなと思っていたらキャラの持つ空虚感、退廃感など晩年の手塚治虫に匹敵する画力。ロリコン趣味の美少女キャラと探求者然とした濃い男性キャラ達のシリアスタッチという対比が持ち味となり、画の魅力にも引きづりこまれました。後で『皆殺しのマリア』の人だったと知って納得。
ここで体脱に使われるアイテムはジャズのCDということ以外最後まで明かされませんが、恐らくヘミシンクで使われるバイノーラルビートを用いた録音という設定でしょう。ボディからの抜け方、いきなり夜空を飛び回ったりするところをみると、作者は体脱体験者ではないでしょう。実際は恐怖感が強すぎてすぐに抜けられる状況ではないし、抜けた後も部屋の外へ出られるようになるまでかなりの時間と集中力が必要ですからね。そこを描いていればもう少し入り込めた読者もいたことでしょう。体脱者同志が気軽に会話したりもあり得ないが、それがなかったらこのマンが成立しないので良しとしましょう。
体脱を軍事的に利用するというのは面白い着眼点でスケールを広げていますが、逆に体脱の神秘がコンパクトになってしまっています。作者は一通りモンローの著作も読んでいるようで、せっかく体脱で彷徨っている世界は死後の世界ではないこと、意識の世界であり霊的成長によって、その先の次元へも進めることを語っていますから、その先も語るべきです。体脱の謎はもっと奥深いもので、もう少し階層についても触れるべきです。亡くなった姉との再会でラストを迎えてしまうのも残念でした。
全4巻の短い物語でしたから、作者にはこのテーマに再びトライして欲しいです。
体外離脱を扱った数少ないコミックの中でも群を抜く出色の出来映え。スリリングでヒリヒリとした空気が全篇を覆っており、この手のコミックにありがちなギャグの挿入も荒唐無稽な展開もなく、ゆっくりと神秘体験の謎が解き明かされて行くミステリアスなストーリーは、まさに「これを待ってました!」という賞賛を贈りたい傑作。marginal名義の原作者はあの狩撫麻礼ということで納得のクオリティ。
読み始めはデスノート風の画風かなと思っていたらキャラの持つ空虚感、退廃感など晩年の手塚治虫に匹敵する画力。ロリコン趣味の美少女キャラと探求者然とした濃い男性キャラ達のシリアスタッチという対比が持ち味となり、画の魅力にも引きづりこまれました。後で『皆殺しのマリア』の人だったと知って納得。
ここで体脱に使われるアイテムはジャズのCDということ以外最後まで明かされませんが、恐らくヘミシンクで使われるバイノーラルビートを用いた録音という設定でしょう。ボディからの抜け方、いきなり夜空を飛び回ったりするところをみると、作者は体脱体験者ではないでしょう。実際は恐怖感が強すぎてすぐに抜けられる状況ではないし、抜けた後も部屋の外へ出られるようになるまでかなりの時間と集中力が必要ですからね。そこを描いていればもう少し入り込めた読者もいたことでしょう。体脱者同志が気軽に会話したりもあり得ないが、それがなかったらこのマンが成立しないので良しとしましょう。
体脱を軍事的に利用するというのは面白い着眼点でスケールを広げていますが、逆に体脱の神秘がコンパクトになってしまっています。作者は一通りモンローの著作も読んでいるようで、せっかく体脱で彷徨っている世界は死後の世界ではないこと、意識の世界であり霊的成長によって、その先の次元へも進めることを語っていますから、その先も語るべきです。体脱の謎はもっと奥深いもので、もう少し階層についても触れるべきです。亡くなった姉との再会でラストを迎えてしまうのも残念でした。
全4巻の短い物語でしたから、作者にはこのテーマに再びトライして欲しいです。
2023年3月5日に日本でレビュー済み
ネット依存やSNS依存への警鐘に繋げてるんだけど、今の時代何だかんだ周りもやってるし動画も活用しているので古い印象を受けてしまった
昔良くあった「良く解らない物に警鐘を」系のアニメや啓発漫画に近い感じ
SNS依存、youtube依存、ゲーム依存、ポルノ依存なんかも、社会活動に害をなさないレベルで楽しめてるなら、余計なお世話で終わってしまうんだよなぁ
昔良くあった「良く解らない物に警鐘を」系のアニメや啓発漫画に近い感じ
SNS依存、youtube依存、ゲーム依存、ポルノ依存なんかも、社会活動に害をなさないレベルで楽しめてるなら、余計なお世話で終わってしまうんだよなぁ
2014年1月16日に日本でレビュー済み
幽体離脱する方法を手にした主人公が同じく幽体離脱している人達といろいろごにょごにょする話。
正直、期待してなかったんだけど、結構、話に引き込まれました。
ホームレスの人とか、ヒロイン?っぽい女の子とかとのこれからの関係が気になります。
正直、期待してなかったんだけど、結構、話に引き込まれました。
ホームレスの人とか、ヒロイン?っぽい女の子とかとのこれからの関係が気になります。
2009年1月4日に日本でレビュー済み
さて、原作はmarginal=狩撫麻礼。
狩撫麻礼=カリブとボブ・マーレイ。
かわぐちかいじさんと組んでいい仕事してました。コラボ。
『ボーダー』『ハードアンドルーズ』好きですね。
本作では、主人公の幽体離脱を通して、人間の内面を視覚します。
ヴィトゲンシュタインのいうところの”語り得ぬもの”の先といえるかも。
精神は確かに感じるのに、それを表現するためにはワンクッション、言葉をはさみこまなくてはなりません。
結局のところ、現時の社会で起きるキチガイ沙汰は、言葉という道具を用いたコミュニケーションが、うまくいかないところから起こっているように感じます。コミュニケーション不全。
言葉ではないコミュニケーションツールがあれば、もっと生き方がスムーズになるのではないか? なので、幽体離脱。想念を視覚化して、”語り得ぬ”けれども”いいたいこと”を描こうとしたのではないでしょうか?
言葉の呪縛からはなれるための鍵として、ミュージックが用いられるのは、腑に落ちました。
ぐちゃぐちゃ書きましたが、おもしろいよ!!
狩撫麻礼=カリブとボブ・マーレイ。
かわぐちかいじさんと組んでいい仕事してました。コラボ。
『ボーダー』『ハードアンドルーズ』好きですね。
本作では、主人公の幽体離脱を通して、人間の内面を視覚します。
ヴィトゲンシュタインのいうところの”語り得ぬもの”の先といえるかも。
精神は確かに感じるのに、それを表現するためにはワンクッション、言葉をはさみこまなくてはなりません。
結局のところ、現時の社会で起きるキチガイ沙汰は、言葉という道具を用いたコミュニケーションが、うまくいかないところから起こっているように感じます。コミュニケーション不全。
言葉ではないコミュニケーションツールがあれば、もっと生き方がスムーズになるのではないか? なので、幽体離脱。想念を視覚化して、”語り得ぬ”けれども”いいたいこと”を描こうとしたのではないでしょうか?
言葉の呪縛からはなれるための鍵として、ミュージックが用いられるのは、腑に落ちました。
ぐちゃぐちゃ書きましたが、おもしろいよ!!
2014年9月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
言い回しが独特であり、主人公はナルシストだと思った。面白くないこともないが、どこか残念な作品。
2007年6月1日に日本でレビュー済み
物語の挿入で慣れない描写が続くので、はじめのうちの世界観を知る段階において、少々とまどうかもしれません(とはいえほんの一部分なのでとりたてて気にする必要はありません)。
しかしながら、この作品は、非常にメッセージ性の強い作品です。
人間の生と死や現代人の問題点などを、体外離脱に目覚めた主人公を軸に、非常にうまく伝えていると思います。
そのメッセージをうまく伝えるだけの“読者を惹きつける魅力”もまた、十分にあります。
全4巻と手の出しやすい巻数ですし、是非オススメですね。
しかしながら、この作品は、非常にメッセージ性の強い作品です。
人間の生と死や現代人の問題点などを、体外離脱に目覚めた主人公を軸に、非常にうまく伝えていると思います。
そのメッセージをうまく伝えるだけの“読者を惹きつける魅力”もまた、十分にあります。
全4巻と手の出しやすい巻数ですし、是非オススメですね。