加速器で物理的に原初宇宙の再現を試みる「神様のパズル」に対し、量子コンピュータの演算力で仮想の宇宙創造を試みるのが本書。SFとしてのメカニズムは面白い、のだが……
正直、読み進めるのが辛かった。気弱で取り柄のない主人公を中心に悩むばかりで先へ進まない展開。登場人物の突拍子もない思考回路から導かれる不思議な結論。機本の悪い癖である、対話型AIに頼り切りのコンピュータ描写。文体そのものは決して悪文でないだけに、内容の悪さが際立つ。
悩める(だけの)主人公像は好みの問題でもあるしテーマからして悩みを必要とするのかも知れない、ここはまあ目を瞑ろう。しかし神の問題は機本作品の中心命題である。なれば、もっと練り込んでから書くべきだったのではないだろうか。論理SFなのにあまりに論理をおざなりにしすぎで破綻してしまっている。
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神様のパラドックス 単行本 – 2008/7/1
機本 伸司
(著)
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- 本の長さ381ページ
- 言語日本語
- 出版社角川春樹事務所
- 発売日2008/7/1
- ISBN-104758411131
- ISBN-13978-4758411134
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登録情報
- 出版社 : 角川春樹事務所 (2008/7/1)
- 発売日 : 2008/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 381ページ
- ISBN-10 : 4758411131
- ISBN-13 : 978-4758411134
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,650,074位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 388,521位文学・評論 (本)
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2008年7月14日に日本でレビュー済み
アイデアは面白いんですよ、本格sfのアイデアを軽い味付けで処理する。でも主人公の造型が面白くない。無重力(慣性飛行)を初めて体験するはずなのにその描写すらない。
とはいえ、本格sfの書き手としていつも期待していますので年に1冊ずつ出していってほしい。年齢的にはsf作家第三世代(大原まり子や神林長平、野阿梓)と同じ世代らしいので彼らもこのくらいのペースで新作を出してほしいですね。
とはいえ、本格sfの書き手としていつも期待していますので年に1冊ずつ出していってほしい。年齢的にはsf作家第三世代(大原まり子や神林長平、野阿梓)と同じ世代らしいので彼らもこのくらいのペースで新作を出してほしいですね。
2009年8月2日に日本でレビュー済み
映画化もされた『神様のパズル』の著者の最新作。だけど『神様のパズル』の続編ではない。
結構、この著者の作品は面白くて、『神様のパズル』以下全部読んでる。新しいのが出ないなぁと思っていた矢先、書店に並んでいたのを買って、すぐ読み始めた。
これまた、偶然なんだが直前にイーガンの『宇宙消失』っていう量子論をテーマにしたSFを読んだばかりで、今回の量子コンピュータを使って神様をつくるという話とつながった。
イーガンほど本格的なハードSFというわけではないが、量子コンピュータの仕組みなんかも触れていて、SFらしいSFになっているが、それに「神様」を加えるところが面白い。
たしかに最先端の科学と宗教ってどこかでつながるところがある。題名にもあるように、パラドックスはともに解消されない、できていない。なんか、読みやすい小説だったけど、ものすごく考えさせられた。出てくるAIの苦悩って本来、人間が持つべきものだろう。
余談だけど、なんでこの著者の文庫化されたカバーはあんななんだろう?手が出しづらい表紙だ。
結構、この著者の作品は面白くて、『神様のパズル』以下全部読んでる。新しいのが出ないなぁと思っていた矢先、書店に並んでいたのを買って、すぐ読み始めた。
これまた、偶然なんだが直前にイーガンの『宇宙消失』っていう量子論をテーマにしたSFを読んだばかりで、今回の量子コンピュータを使って神様をつくるという話とつながった。
イーガンほど本格的なハードSFというわけではないが、量子コンピュータの仕組みなんかも触れていて、SFらしいSFになっているが、それに「神様」を加えるところが面白い。
たしかに最先端の科学と宗教ってどこかでつながるところがある。題名にもあるように、パラドックスはともに解消されない、できていない。なんか、読みやすい小説だったけど、ものすごく考えさせられた。出てくるAIの苦悩って本来、人間が持つべきものだろう。
余談だけど、なんでこの著者の文庫化されたカバーはあんななんだろう?手が出しづらい表紙だ。
2008年7月4日に日本でレビュー済み
ついに映画化された『神様のパズル』の評判がちょっとアレな(もちろん映画のほうの評判です。念のため)機本伸司の新作です。
ついに完成した超高性能コンピューターに人間が質問する。「神は存在するのか?」それに対するコンピューターの答えは…。作中でも引用されている、有名な古典ショートショートですが、今回はついにそのテーマに挑みます。
量子コンピューターで擬似的に神と世界を作り出し、それを使った占い&カウンセリングで商売しようとする企業のプロジェクトにアルバイトで参加した、地味で内向的な女子大生が主人公。果たしてそのプロジェクトが内包する「パラドックス」とはなんぞや。
今回も例によって壮大なテーマと卑近な日常の対比の中で、登場人物たちがあれやこれのトラブルに振り回されたり、その解決に奔走します。これまたいつものように宗教的な問題には慎重に距離をとりつつ、エンターテインメントとして楽しめる内容に感心しました。
あと本作については、実はあっと驚く仕掛けがあるのですが、これは読んでからのお楽しみということで。先に知っちゃうと楽しさ半減です。(楽しみを奪われないように、あとがきを読むのも、ちゃんと本編を読み終えてからにしてくださいね)
前作『スペースプローブ』は、主人公のエキセントリックなキャラクターやストーリー展開が個人的にはちょっと気に入らなかったのですが、今作はかなり楽しめました。お薦めです。
ついに完成した超高性能コンピューターに人間が質問する。「神は存在するのか?」それに対するコンピューターの答えは…。作中でも引用されている、有名な古典ショートショートですが、今回はついにそのテーマに挑みます。
量子コンピューターで擬似的に神と世界を作り出し、それを使った占い&カウンセリングで商売しようとする企業のプロジェクトにアルバイトで参加した、地味で内向的な女子大生が主人公。果たしてそのプロジェクトが内包する「パラドックス」とはなんぞや。
今回も例によって壮大なテーマと卑近な日常の対比の中で、登場人物たちがあれやこれのトラブルに振り回されたり、その解決に奔走します。これまたいつものように宗教的な問題には慎重に距離をとりつつ、エンターテインメントとして楽しめる内容に感心しました。
あと本作については、実はあっと驚く仕掛けがあるのですが、これは読んでからのお楽しみということで。先に知っちゃうと楽しさ半減です。(楽しみを奪われないように、あとがきを読むのも、ちゃんと本編を読み終えてからにしてくださいね)
前作『スペースプローブ』は、主人公のエキセントリックなキャラクターやストーリー展開が個人的にはちょっと気に入らなかったのですが、今作はかなり楽しめました。お薦めです。