生体分子の働きを知るには構造情報が大切ではあるが、本書では「揺らぎとダイナミクス」という、より反応に直結する観点から実例を交えて生体分子反応を解説している。例えば、蛋白質が信号伝達するためには局所構造や骨格構造の変化が必要であることは周知の通りである。本書ではさらに生体環境内では避けて通れない熱的揺らぎが蛋白質機能に重要であるということを実験・理論の両面から実証している。そのためのアプローチは多岐にわたり、これらを組み合わせることで揺らぎというわかりにくい現象の検出が可能になる。さらに揺らぎを制御する事にも取り組み、最終的には医療や薬剤開発に実用化するまでの道のりが本書には記されている。
このように、一つの分野を解説した専門書に比べると、物理・物理化学・生物物理・薬学・医学まで幅広い内容を取り扱っており、まさに分野融合を目指し最先端技術を駆使することで新しい学術分野を切り開こうという研究者の情熱が溢れる一冊である。さらに、こうした最先端の研究が学べると同時に、基礎から丁寧に説明されているため、初心者にもわかりやすい構成となっている。分子レベルから細胞・個体レベルまで幅広い対象を扱っているため、揺らぎが生命機能に直結することを実感できるというのも大きな魅力である。
本書を読むことで、その存在を漠然と認識していた揺らぎの重要性を実感することができた。人の思考は揺らぐものであるが、生命体を構成する蛋白質分子においても揺らぎが存在し、機能に直結していることは非常に興味深い。生命現象の神秘解明を担う若手研究者や学生には、生命機能の本質に迫る上でも、また斬新な手法の学習という点でも是非一読していただきたい。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
揺らぎ・ダイナミクスと生体機能: 物理化学的視点から見た生体分子 (DOJIN BIOSCIENCE SERIES) (DOJIN BIOSCIENCE SERIES 10) 単行本 – 2013/10/4
寺嶋 正秀
(編集)
ダブルポイント 詳細
揺らぎという観点から生体分子のダイナミクスを見ることにより,生体分子の反応を化学反応として分子論的に理解する.物理化学的視点から生体分子を研究する手法の基礎から先端的な結果までを詳説.
- 本の長さ368ページ
- 言語日本語
- 出版社化学同人
- 発売日2013/10/4
- 寸法18.5 x 2.4 x 25.8 cm
- ISBN-104759815104
- ISBN-13978-4759815108
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 化学同人 (2013/10/4)
- 発売日 : 2013/10/4
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 368ページ
- ISBN-10 : 4759815104
- ISBN-13 : 978-4759815108
- 寸法 : 18.5 x 2.4 x 25.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 698,813位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 10,145位生物・バイオテクノロジー (本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中5つ
5つのうち5つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
1グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ