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生み出された物語: 目撃証言・記憶の変容・冤罪に心理学はどこまで迫れるか (法と心理学会叢書) 単行本 – 2003/5/28
事件の事実を明らかにするために,大学生が幼稚園児たちに聞き取りをした。誰もウソをつこうとせず,誰もウソをつかせようとせず,子どもたちの証言は一致した「事実」が得られたかに見えた。だがそうではなかった。記憶の常識を覆す「ウソの生み出される過程」について,分析,検討,さらに,発達論的にも分析する。
- 本の長さ226ページ
- 言語日本語
- 出版社北大路書房
- 発売日2003/5/28
- ISBN-10476282318X
- ISBN-13978-4762823183
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商品の説明
著者からのコメント
虚構の「客観的事実」が無意図的・集団的に生成するメカニズム
社会的に共有された「事実」とはなんだろうか。あるできごとについて目撃者が複数いて、その目撃者にそれぞれ別々に尋ねたら同じ答えが返ってきたとする。そうすると聞いた方は当然それを「事実」と思うだろう。
私たちの実験では、複数の子どもに彼らが集団して体験したできごとを別々に繰り返し尋ねたら、答えた子ども全ての証言が最後に一致した。その聴取はひとりひとり別々の部屋で行われ、お互いに示し合わせることもないにもかかわらず証言はみごとに一致した。ところがその一致した証言が「事実」ではなかったのである。
検察役の聴取者も、もともとの事実を知らないで聴取に臨んでおり、意図的に子ども達の証言を一つの方向に誘導することはできなかった。ただ「事実を明らかにする」という目標を持って繰り返し聴取しただけである。当然聴取者たちも一致した証言を「客観的な事実」として確信した。そうやって「虚構の物語」が集団的に「客観的な事実」として確定していった。
なぜこのような奇妙な現象が起こってしまったのかを分析していくと、人間の誰もが持っている普通の記憶の仕組み、そして、過去の記憶を人々が語り合うメカニズムが見えてくる。つまり、この一見不思議な現象は、ある条件さえあれば実はどこにでも起こりうる普通のできごだということが分かってくる。実際、冤罪甲山事件における子どもの目撃証言も、同じメカニズムで理解できるのである。
本書ではこの現象を認知心理学的観点とコミュニケーションの観点から多角的に分析し、さらに3年後に同じ子ども達に対して行った再度のインタビューをふまえて発達心理学的にこの集団的な記憶の問題を検討した。
また最後には「客観的事実」と「社会的物語」に関する多少の議論も試みている。冤罪の問題は、「社会的物語」にならないように「客観的」に「事実」をさぐろうということだけでは解決されない。両者の間にはもっと本質的に切り離せない関係があり、そもそも社会的に問題になる「客観的事実」とは何なのかということ自体が問い直されると考えられるからである。
「冤罪」の問題に興味を持たれる方はもちろん、記憶に関する新しいタイプの心理学的フィールド実験とその分析、「物語」の形成と「事実」の関係などに関心のある方にもお読みいただきたいと思っている。
社会的に共有された「事実」とはなんだろうか。あるできごとについて目撃者が複数いて、その目撃者にそれぞれ別々に尋ねたら同じ答えが返ってきたとする。そうすると聞いた方は当然それを「事実」と思うだろう。
私たちの実験では、複数の子どもに彼らが集団して体験したできごとを別々に繰り返し尋ねたら、答えた子ども全ての証言が最後に一致した。その聴取はひとりひとり別々の部屋で行われ、お互いに示し合わせることもないにもかかわらず証言はみごとに一致した。ところがその一致した証言が「事実」ではなかったのである。
検察役の聴取者も、もともとの事実を知らないで聴取に臨んでおり、意図的に子ども達の証言を一つの方向に誘導することはできなかった。ただ「事実を明らかにする」という目標を持って繰り返し聴取しただけである。当然聴取者たちも一致した証言を「客観的な事実」として確信した。そうやって「虚構の物語」が集団的に「客観的な事実」として確定していった。
なぜこのような奇妙な現象が起こってしまったのかを分析していくと、人間の誰もが持っている普通の記憶の仕組み、そして、過去の記憶を人々が語り合うメカニズムが見えてくる。つまり、この一見不思議な現象は、ある条件さえあれば実はどこにでも起こりうる普通のできごだということが分かってくる。実際、冤罪甲山事件における子どもの目撃証言も、同じメカニズムで理解できるのである。
本書ではこの現象を認知心理学的観点とコミュニケーションの観点から多角的に分析し、さらに3年後に同じ子ども達に対して行った再度のインタビューをふまえて発達心理学的にこの集団的な記憶の問題を検討した。
また最後には「客観的事実」と「社会的物語」に関する多少の議論も試みている。冤罪の問題は、「社会的物語」にならないように「客観的」に「事実」をさぐろうということだけでは解決されない。両者の間にはもっと本質的に切り離せない関係があり、そもそも社会的に問題になる「客観的事実」とは何なのかということ自体が問い直されると考えられるからである。
「冤罪」の問題に興味を持たれる方はもちろん、記憶に関する新しいタイプの心理学的フィールド実験とその分析、「物語」の形成と「事実」の関係などに関心のある方にもお読みいただきたいと思っている。
内容(「MARC」データベースより)
3度の無罪判決を経て、1999年に冤罪事件であることが確定した甲山事件。実験により、目撃証言をした園児らが、意図せずに「物語」を生み出す過程を心理学的見地から丁寧に分析する。
登録情報
- 出版社 : 北大路書房 (2003/5/28)
- 発売日 : 2003/5/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 226ページ
- ISBN-10 : 476282318X
- ISBN-13 : 978-4762823183
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,127,780位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,071位司法・裁判(一般)関連書籍
- - 3,880位思想・社会の法律
- - 16,228位心理学入門
- カスタマーレビュー:
著者について
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青森県青森市出身。中卒後、呉服屋の丁稚を経て京都大学文学部、同大学院文学研究科修士課程修了、博士課程中途退学。奈良女子大学、共愛学園前橋国際大学を経て早稲田大学人間科学学術院教授(現職)。奈良女子大学在学中に北京師範大学児童心理研究所で教育学博士号取得。
専門は発達心理学・文化心理学・法心理学。
研究テーマは所有制度の個体発生。他に子どもの記憶と証言の共同生成、ディスコミュニケーション分析。
受賞歴は日本教育心理学会城戸奨励賞(幼児の所有研究論文にて)、朱智賢心理学賞(子どものお小遣い研究を通した新たな文化心理学理論の展開論文にて)。
日中韓越の心理学を中心とする研究者や一般市民による円卓メーリングリストの共同管理人。
青山学院大学社会情報学部教授。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員(PD)、東京大学大学院教育学研究科助手、東京学芸大学国際教育センター講師、准教授を経て2008年より現職。
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