正直言って、若くして亡くなった人たちのことを知ることは気が重い。
なかなか読むことができなかったのはまったくそういった個人的な事情によるので、この書のせいではない。そのことをまず述べておきたい。
しかし、夜寝る前の1時間から1時間半の間に一人、二人と読んで行くうちに著者の情熱が鈍感な私にもじわりじわりと伝わってきた。
この書でとりあげられた25人の若者たちはほとんど30歳になる前に亡くなった方々である。例外はフランスに留学してマリ・キュリーの下で初期の放射線研究に励み、日本最初の放射線障害の犠牲者となった山田延男の31歳と「被差別部落一千年史」を著した高橋貞樹の30歳くらいである。
すべての人が、その死後に顕彰碑ができているか、遺稿が書籍となって出版されているか、遺族や友人知人が故人を偲んで本を出版したとか等である。もっともそういう事情がなければ、著者も含めた私たちがその人の存在を知ることはできなかったにちがいない。
藤村操、金子みすず、樺美智子、大島みち子、円谷幸吉、高野悦子のような死後彼らの著作等によって著名になった人もいるが、私などこの書を読まなかったら、絶対に知らなかったであろうと思われる人もいる。
福井藩から幕末に初の留学生としてアメリカに派遣された日下部太郎とか「女工哀史」を書いた細井和喜蔵、獄中記「何が私をこうさせたか」を書いた金子ふみ子等である。
特に金子ふみ子は時の国家権力によって、検挙され、かつ大逆罪で死刑判決を受けたが、その取調べの過程で手記を書き、それが出版されたという。
どういういきさつで出版されたのかはこの書には出ていないのでわからないが、ただ単に本人の希望が強かったというだけではあるまい。彼女の生涯の悲惨さに強く同情する人がいたためであろうか。それも1931年(昭和6年)という出版時期を考えればなおさらそうではないかと推察される。
宮沢トシは岩手県の出身とあったので、宮沢賢治と同じ宮沢姓だなと思いながら読み進んだが、彼女の死後の話として彼女を献身的に介護した兄が宮沢賢治であることがさらりと述べられており、とても印象に残った。著者の書きぶりにはこういう心憎いところがある。
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若き命の墓標―20世紀を生きた若者からの伝言 単行本 – 2014/1/1
西条敏美
(著)
- 本の長さ244ページ
- 言語日本語
- 出版社花伝社
- 発売日2014/1/1
- ISBN-104763406884
- ISBN-13978-4763406880
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
事故で亡くなった人、不治の病気で亡くなった人、自ら若き命を断った人、戦死した人…心に響く命のメッセージ。若くして散った25人の生き方と思い。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
西條/敏美
1950年徳島県生まれ。関西大学工学部卒業、同大学大学院工学研究科修士課程修了。徳島県の公立高校に35年勤めて、2011年3月定年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1950年徳島県生まれ。関西大学工学部卒業、同大学大学院工学研究科修士課程修了。徳島県の公立高校に35年勤めて、2011年3月定年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 花伝社 (2014/1/1)
- 発売日 : 2014/1/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 244ページ
- ISBN-10 : 4763406884
- ISBN-13 : 978-4763406880
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,795,509位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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