化石燃料や原子力発電の代替となる再生可能エネルギーなどは、
普及の速度が遅く、また期待出来るほど急速に普及を加速することも出来ないので過度の期待は禁物だというのが主張の大枠のようです。
個別の内容は特に大きく反対すべき内容はなかったように思います。
バイオ燃料にしても、必要な量確保するだけの生産が可能な耕作地を得るのは現実的でなく、
食料生産とも拮抗してしまい、良いことばかりではありません。
風力発電が負荷率が低く、需要と電力生産とがマッチしない時間を克服するのは容易でないというのもそのとおりかもしれません。
風力発電は詳しくありませんが、
発電単価自体は水力発電などと同様安価なので、
使い方によっては有効利用出来るのではないでしょうか。
欧州の風向データなどのマッピングの話も本書に図表入りで紹介されていますが、
日本の国土面積はこれよりずっと狭いので、
良い風速地図が海上を含めて必要かもしれないと思いました。
電気自動車については、化石燃料を燃やして発電している限りでは、
著者の言う通り、温暖化対策には貢献しないでしょう。
発電で化石燃料の使用を減らせば電気自動車の意味が生きてきますが、
著者は発電量を増やすことと、再生可能エネルギーを倍増することが現実的でないと考えているので、
電気自動車にはほとんど期待出来ないということになります。
この件については、まず1次エネルギーで考えると
日本の例では化石燃料の1/3以上は車などの
輸送部門が利用していたと思います。
言い換えれば、輸送部門で化石燃料の消費を放置すれば、
1/3以上は化石燃料を削減出来ません。
他の1/3は工場などの産業部門で、
これは石油危機以降高度に省エネ化されているので、ほとんど変化しません。
つまり、輸送部門も再生可能エネルギー+電気自動車と燃料電池車などに置き換えていかない限り、温暖化削減は進まないと思います。
著者の現状認識については多くの点で妥当なのでしょうが、
多分問題設定自体がおかしいのだと思います。
代替エネルギーのソリューリョンが実用的でないというのは、
本書であらためて主張するような内容ではなく、
ある意味当たり前のことだと思います。
代替エネルギーという考え方が出てくるそもそもの理由は、
環境と資源の有限性の観点で別のエネルギー源を検討する必要があると見なすからです。
動機が無ければ、実用化されていない技術を導入したり開発するより、著者のいうように現状のものをそのまま使う方が合理的に決まっています。
だから問題は、単純に現状の実用性がどうかということではないでしょう。ピークオイルがいつ来るかは著者のいうように不明ですが、いま代替の検討をしない選択をして、例えば50年後に真に必要性が出てきたときに必要な技術があるかというと、どうしようもなくなるという可能性もあります。
著者自身は代替エネルギーの導入自体は必要とも書いていますが、「幻想をいだいてはいけない」と本書を締めくくっている一方で、どういう風に進めればよいのかよくわからず、中途半端に冷水を浴びせただけのようにも見えます。
原題は、bringing science to the energy policy debate ということなので、
著者は合理的科学的に妄信を正すという意図なのでしょうが、
どうも問題の所在は別ではないかという気がしました。
なお、非在来型石油、燃料電池、太陽電池などは特に
過小評価ではないかと思いました。
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エネルギーの不都合な真実 単行本(ソフトカバー) – 2012/4/23
バーツラフ・シュミル
(著),
立木勝
(翻訳)
世界の石油はいつ枯渇する?
原子力発電の経済性と安全性は?
バイオ燃料や風力発電の将来性は?
将来のエネルギーのあり方を考えるうえで絶好の書!
電気自動車・原子力・ソフトエネルギー・ピークオイル
二酸化炭素隔離・植物由来液体燃料・風力発電……
広く流布しているエネルギー神話の「誤り」を
科学的なアプローチによって解き明かし、
今日の議論で抜け落ちがちな「現実」を掲示します。
★エネルギーをめぐる神話の一例★
≪神話≫新たなエネルギー源と技術革新で、化石燃料のニーズは数十年以内にゼロになる≪現実≫包括的なエネルギー移行には数世代の年月がかかるものである
≪神話≫二酸化炭素隔離こそ、地球規模での気候変動への決定的な対策である
≪現実≫コスト、技術面での課題等から考えて、
隔離によって二酸化炭素の排出量の上昇をさほど防ぐことはできない
≪神話≫電気自動車は近い将来、従来型の自動車を一掃するだろう
≪現実≫電気自動車は高価で、普及はゆっくりとしか進まず、
内燃エンジンが向こう数十年にわたって市場を支配することになる。
原子力発電の経済性と安全性は?
バイオ燃料や風力発電の将来性は?
将来のエネルギーのあり方を考えるうえで絶好の書!
電気自動車・原子力・ソフトエネルギー・ピークオイル
二酸化炭素隔離・植物由来液体燃料・風力発電……
広く流布しているエネルギー神話の「誤り」を
科学的なアプローチによって解き明かし、
今日の議論で抜け落ちがちな「現実」を掲示します。
★エネルギーをめぐる神話の一例★
≪神話≫新たなエネルギー源と技術革新で、化石燃料のニーズは数十年以内にゼロになる≪現実≫包括的なエネルギー移行には数世代の年月がかかるものである
≪神話≫二酸化炭素隔離こそ、地球規模での気候変動への決定的な対策である
≪現実≫コスト、技術面での課題等から考えて、
隔離によって二酸化炭素の排出量の上昇をさほど防ぐことはできない
≪神話≫電気自動車は近い将来、従来型の自動車を一掃するだろう
≪現実≫電気自動車は高価で、普及はゆっくりとしか進まず、
内燃エンジンが向こう数十年にわたって市場を支配することになる。
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社エクスナレッジ
- 発売日2012/4/23
- ISBN-104767812984
- ISBN-13978-4767812984
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登録情報
- 出版社 : エクスナレッジ (2012/4/23)
- 発売日 : 2012/4/23
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 320ページ
- ISBN-10 : 4767812984
- ISBN-13 : 978-4767812984
- Amazon 売れ筋ランキング: - 263,096位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年11月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2017年6月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
友人の大学教授に紹介されて興味深く読みました。示唆に富む内容です。タイトルが不都合な真実という意味不明の訳になっています。
不都合なのは真実でなく、世の中には不都合な神話が多すぎることです。原子力神話は取り返しにつかない人災事故で崩れました。
代わりに再生可能エネルギーが登場しましたが、これも不都合な真実と思われます。日本だけでなく、世界中で同様です。こんなことが事実、根拠を示して書かれています。
不都合なのは真実でなく、世の中には不都合な神話が多すぎることです。原子力神話は取り返しにつかない人災事故で崩れました。
代わりに再生可能エネルギーが登場しましたが、これも不都合な真実と思われます。日本だけでなく、世界中で同様です。こんなことが事実、根拠を示して書かれています。
2012年11月8日に日本でレビュー済み
図書館で見つけたので借りて読んだが、誰もレビューを書いていないので思いつくままごく簡単に。
ブログとかの低レベルな議論に過剰に反発してしまっているため、本書自体も同レベルになってしまっている。(例えば『エネルギー関連技術の進歩をコンピューターの進歩と同じように見ないでほしい』という「お願い」が何度も出てくる)
結果として、無駄に説教臭く偉そうな割に結論としてはごく当たり前のことしか書かれていない。
例えば第1章・自動車に関して、
電気自動車(EV)には過剰なほどのCO2削減ノルマを勝手に課しそんなことはできないとこけ下ろしたり、最新の技術革新には具体的に全く触れない一方、ガソリン自動車ではディゾットとかいう新型エンジンが『もう手の届くところまで来ている(p.61)』『ハイブリッド車を凌ぐことも十分に予想される(p.61)』などと書いている。こういう夢見る夢子ちゃん的な考えを本書では執拗に攻撃しているのに、結局著者も同じようなことをしている。もちろん私はディゾットやらが期待できないと言っているわけではない。そうではなく、EVには『もう手の届くところにまで来ている』新技術が全くないのか。調べてなかったというならともかく、詳しく調べようという動機が文章から全く感じられない。
結論として、EVが普及するにはまだまだ時間がかかるというごく当たり前のことが書いている。
3.11後に腐るほど出てきたこの手の本にありがちだが、本書もやはりジャッジが偏っていて、上述のように新エネ(太陽光発電や風力等)や新技術(EV等)に対しては現在の技術レベルを前提に過度なほどのノルマと将来を勝手に担わせ、そんなことは無理だとこけ下ろす、というマッチポンプが全体的に目立つ。たちの悪い特徴だ。
他にも、ガソリン自動車に対して例えば排ガスや騒音について全く言及していない。ガソリン自動車を電気自動車に置き換えるメリットはエネルギーだけではないはずである。
あとは、エネルギー移行には本質的に時間が掛かるだの、インフラが大事だの、人は慣れた体制からそう簡単に抜けだそうとしないだの、定性的な話ばかり。
雑なレビューで申し訳ないが、金を払ってまで読む価値はないというのが結論。
ブログとかの低レベルな議論に過剰に反発してしまっているため、本書自体も同レベルになってしまっている。(例えば『エネルギー関連技術の進歩をコンピューターの進歩と同じように見ないでほしい』という「お願い」が何度も出てくる)
結果として、無駄に説教臭く偉そうな割に結論としてはごく当たり前のことしか書かれていない。
例えば第1章・自動車に関して、
電気自動車(EV)には過剰なほどのCO2削減ノルマを勝手に課しそんなことはできないとこけ下ろしたり、最新の技術革新には具体的に全く触れない一方、ガソリン自動車ではディゾットとかいう新型エンジンが『もう手の届くところまで来ている(p.61)』『ハイブリッド車を凌ぐことも十分に予想される(p.61)』などと書いている。こういう夢見る夢子ちゃん的な考えを本書では執拗に攻撃しているのに、結局著者も同じようなことをしている。もちろん私はディゾットやらが期待できないと言っているわけではない。そうではなく、EVには『もう手の届くところにまで来ている』新技術が全くないのか。調べてなかったというならともかく、詳しく調べようという動機が文章から全く感じられない。
結論として、EVが普及するにはまだまだ時間がかかるというごく当たり前のことが書いている。
3.11後に腐るほど出てきたこの手の本にありがちだが、本書もやはりジャッジが偏っていて、上述のように新エネ(太陽光発電や風力等)や新技術(EV等)に対しては現在の技術レベルを前提に過度なほどのノルマと将来を勝手に担わせ、そんなことは無理だとこけ下ろす、というマッチポンプが全体的に目立つ。たちの悪い特徴だ。
他にも、ガソリン自動車に対して例えば排ガスや騒音について全く言及していない。ガソリン自動車を電気自動車に置き換えるメリットはエネルギーだけではないはずである。
あとは、エネルギー移行には本質的に時間が掛かるだの、インフラが大事だの、人は慣れた体制からそう簡単に抜けだそうとしないだの、定性的な話ばかり。
雑なレビューで申し訳ないが、金を払ってまで読む価値はないというのが結論。