警視庁公安部外事第3課から流出したとされるイスラム過激派にまつわるスパイ資料を掲載し、合わせて識者の解説と批判を掲載したのが本書だ。
流出資料は (1)現場からの調査報告書(要はスパイ報告)、(2)現場への指示文書(誰をターゲットにどう動くという命令)、(3)公安部から警察上層部への報告書(公安部はこんなに頑張ってテロの脅威と戦っています!)からなっている。
調査報告書からは、公安警察が相手の行動をひたすらに監視し記録しているさまが伝わってくる。何時何分、どんな服装で出かけ、どこで誰と会い(接触相手の身辺調査も追加で行う)、なにか不審な行動がないか、ひたすらに記録し、たといどんな些細な事でも見逃すまいという異常な執念が伝わってくる。
そして、現場への指示文書では、例えば「サミットを控えているので怪しい人間を徹底的にマークして、事件化(ようは別件逮捕)して身柄を拘束せよ。優秀者は表彰や人事考課等で優遇する。」なんて書いてある。
最後に、上層部への報告書では、いかに公安警察がテロの脅威と戦っているのか、どんなに些細と思えることでも大手柄としてアピールしようとする魂胆が伝わってくる。
読者の立ち位置によって感想はいろいろあると思うが、公安警察の活動実態を垣間見るには優れた資料だと思う。
本書を読んだあとに、ふと旧ソ連時代の政治学者がKGBについて語った言葉を思い出した。
「彼ら(KGB)はただ情報をファイルするだけだ。それを活かすのも殺すのも、政治が決めることだ」
日本の公安警察も、究極的には情報をファイルしているだけなのだと思う。その情報を活かすも殺すも、そして対象者を政治的・社会的に生かすも殺すも、それは警察上層部、そして政治、もっといえば「世論」が決めているのだと思う。もしかしたら、日本人の異文化や異民族に対して感じる本能的な恐怖心が、警察機構という中で増幅されて、このようなイスラム監視体制につながっているのかもしれない。
…と考えると、「手段」「道具」に過ぎない公安警察を責め立てたところで、彼らの指揮官である「政治」が変わらないかぎり、こういった監視体制はなくならないのだろう。
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国家と情報―警視庁公安部「イスラム捜査」流出資料を読む 単行本(ソフトカバー) – 2011/10/8
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購入オプションとあわせ買い
2010年10月、警視庁公安部外事三課のデータファイル114点がインターネット上に流出した。在日イスラム教徒を尾行し、モスクを監視し、家族関係を調べ、金融機関などの民間情報を収集した公安の違法捜査と事件が及ぼす問題を探る。イスラム教徒であるというだけでテロリスト扱いされ、失職、経営不振、家族離散、孤立、精神障害……。イスラム敵視の対テロ政策、国家による情報収集の実態とずさんな管理の危険性を解き明かす。
- 本の長さ400ページ
- 言語日本語
- 出版社現代書館
- 発売日2011/10/8
- 寸法15 x 2.8 x 21 cm
- ISBN-104768456634
- ISBN-13978-4768456637
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登録情報
- 出版社 : 現代書館 (2011/10/8)
- 発売日 : 2011/10/8
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 400ページ
- ISBN-10 : 4768456634
- ISBN-13 : 978-4768456637
- 寸法 : 15 x 2.8 x 21 cm
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