玄米を食べようと思って
電気釜を買ったらマイコン制御でした。
ケータイ、スマホ、タブレット、パソコンが
半導体を含んでいることは
すぐにイメージできます。
マイコンやメモリはチップの一種です。
（チップ＝ＩＣ＝集積回路）
そして
半導体製品の８５％がチップです。
こうして考えてみると
電気釜に限らず
かなり多くの家電が半導体で動いている
と言ってもよいでしょう。
さらに
３・１１の東日本大震災で明らかになったように
クルマはいまや「走る半導体」です。
（クルマのエンジンなどを制御しているチップの
ほとんどを東北地方で製造していたため
震災後に日本でも北米でも車の生産ができなくなったことを
みなさんご記憶のことと思います）
あるいは
代替エネルギーの代表選手である
太陽光発電は半導体そのものです。
玄米と電気釜をきっかけに
『半導体についての手頃な本はないかな』
と思いたち
Ａｍａｚｏｎを通じて購入したのが本書です。
著者は牧本次生（まきもと・つぎお）氏。
私＝評者＝の記憶が確かならば
２０１１年６月１１日オンエアーの
ＮＨＫスペシャルの中で
『ミスター半導体』
と紹介されていた方です。
ラ・サール高校→東大工学部応用物理学科卒業
スタンフォード大学修士、東大工学博士
日立製作所専務
ソニー執行役員専務
日米半導体交渉終結交渉での日本側団長
などのご経歴です。
半導体を専門にされる方にも
半導体を専門にされない方にも
本書をお勧めします。
（私＝評者＝自身、半導体も家電も全くの専門外です）
いちばんは、季節がら
いわゆる五月病にかかるんじゃないかなと思いつつ
日々がんばっておられる
新入社員や新入生のみなさんにお勧めします。
著者は
４回の山頂と３回の谷底を体験なさったそうです。
山の１＝弱冠３２歳で、日立の部長に昇格（最年少記録樹立）。
谷の１＝オイルショックで赤字転落、部長解任。
山の２＝メモリーの開発と販路拡大で、工場長に昇格。
谷の２＝半導体不況で赤字転落、地方に左遷。
山の３＝半導体設計開発の成果をあげ、事業部長に昇格。
谷の３＝３年間の大不況で赤字転落、専務から平取へ二段階降格処分。
山の４＝「提言書 日本半導体の復活」をまとめ、ソニー執行役員専務に就任。
ご自身の表現を借りるならば
『三転び四起き』（ミコロビ、シオキ）
の人生であり
それが日本の半導体の盛衰の歴史と重なっていることもあり
『ミスター半導体』
と呼ばれるようになったそうです。
不安と緊張の中、毎日を送っておられる
新入社員や新入生のみなさん
本書の第８章（わが人生のシリコン・サイクル）だけでも、お読みになれば
元気が出てくるかもしれません。
自分はメーカーでもないし文系だから関係ないや
とお考えの方
『牧本ウエーブ』（Ｍａｋｉｍｏｔｏ Ｗａｖｅ）
という言葉をご存じでしょうか？
もともとは
『半導体産業において
カスタム化指向の時期と標準化指向の時期が
サイクルのように入れ替わる現象』
のことです。
著者が１９８７年に発見
１９９１年、英国『Ｅlectronics Weekly』誌が取り上げ
逆輸入のかたちで日本にも紹介されました。
半導体どころか
アパレル（洋服）業界でも同じような傾向が
言われるらしいです。
異業種の本にトライしてみるのも
五月病の予防に役立つのではないでしょうか。
著者が『牧本ウエーブ』の着想を得たのは
地方工場に左遷された「二度目の谷」の時期だったそうです。
落ち着いて考える時間があったのが幸いしたとのこと。
私＝評者＝は
玄米を契機として本書を読み
半導体についての理解が前より深まりました。
同時に、人生についてのヒントも得ることができたので
得した気分です。
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