直木賞作家、井上荒野が描いたある三角関係の物語。
夫の浮気に気づきながらも強く言えず、自らも別の男性に思いを寄せる妻。一方、愛人と夫は曖昧で心地いい関係を築き上げていた。そんななか、夫が不治の病にかかっていることが判明、そのまま彼はホスピスに入ることになり……。
妻と愛人、それぞれの立場からの話が交互に綴られ、全体が少しずつ見えてきます。その見え具合が微妙でとてもどきどきします。
作者はこの二人をあえて書き分けていないようで、途中でどちらがどちらかがややわからなくなるところもあるのですが、それが、「結局、妻も愛人も変わらない」という現実を突きつけられているようで怖くも面白いなぁと感じました。
ややもすれば、単なる恋愛小説になってしまうところを、二人の女性の二つの一人称小説にうまくしあげていると感じました。たぶん、荒野さんが書きたかったのはこういうものだったんだと思います。
ちょっと変わった感じです。
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もう切るわ 単行本 – 2001/10/1
井上 荒野
(著)
- 本の長さ205ページ
- 言語日本語
- 出版社恒文社21
- 発売日2001/10/1
- ISBN-104770410557
- ISBN-13978-4770410559
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
死んだ夫が残した手帳には謎の文字が残っていた。「もう切るわ」。夫の恋人が電話で呟いた言葉か、関係を切るのか、手術の意味か、電話を切るのか? 男と女と恋人の心の迷路を軽妙に描く。
登録情報
- 出版社 : 恒文社21 (2001/10/1)
- 発売日 : 2001/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 205ページ
- ISBN-10 : 4770410557
- ISBN-13 : 978-4770410559
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,647,041位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 39,255位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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1961年東京都生まれ。成蹊大学文学部卒業。1989年「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞を受賞し、デビュー。2004年『潤一』(新潮文庫)で第11回島清恋愛文学賞、2008年『切羽へ』(新潮社)で第139回直木賞を受賞。『あなたがうまれたひ』(福音館書店)など絵本の翻訳も手掛けている。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年2月19日に日本でレビュー済み
なにがせつないって、内容というよりも、作中に全体に漂う雰囲気が。
二人の女の何気ない日常が。しぐさが。息遣いが。言葉がせつないんです。
他の方も書かれてますが、とにかく大人。
どこがどうという内容にもかかわらず、入り込めてしまう。
著者の卓越したセンスと力量を感じた。
もうこの人のなにげ無い言葉の選び方にいちいちやられてしまう。
読み終えると胸が苦しいような余韻がしばらく残ります。
「歳さんはどこの人?」
「歳さんはここの人」
読み終えた時に、自分が井上荒野の世界に酔ってしまっていたことに気付く。
大人っていいな、素敵やん。。って思える作品。
二人の女の何気ない日常が。しぐさが。息遣いが。言葉がせつないんです。
他の方も書かれてますが、とにかく大人。
どこがどうという内容にもかかわらず、入り込めてしまう。
著者の卓越したセンスと力量を感じた。
もうこの人のなにげ無い言葉の選び方にいちいちやられてしまう。
読み終えると胸が苦しいような余韻がしばらく残ります。
「歳さんはどこの人?」
「歳さんはここの人」
読み終えた時に、自分が井上荒野の世界に酔ってしまっていたことに気付く。
大人っていいな、素敵やん。。って思える作品。
2005年11月9日に日本でレビュー済み
これは、一人の男性を正妻と愛人で取り合っている話でもなく、男性の闘病日記でもない。例えばモームや有吉佐和子(敬称略)のように「どうだ!」っていう落ちもなく、悲惨さも感じなかった。
読後の感想は、大人だな~~ってこと。メインの登場人物がそれぞれ、今の問題や、不満の原因を自分でそれぞれ抱えて、それなりに消化しようとしてる。
だから、三角関係なのに、修羅場なんてない。で、ふと思ったのですが、こういう関係で修羅場になるのは、女が男を愛してるか・してないか、じゃなくて、その当事者がどれだけ、自分の今の立場や状態を、自分でちゃんと抱えられないからじゃないかなって思った。そういう「悟り」とまではいかないけど、そういうことわからせてもらった。愛情の高低浅深じゃなく、自分で問題を抱えられない人が、わめいて、自分以外の色々なもの:世の中のルールや、男の良心や、周囲の同情、などに訴えたり責めたりして、味方を作ろうと思うから修羅場になるんじゃない?なんてね。
私はどちらかというと、どうだ!って落ちがある作品が好きなんですが、なんだか読めました。
読後の感想は、大人だな~~ってこと。メインの登場人物がそれぞれ、今の問題や、不満の原因を自分でそれぞれ抱えて、それなりに消化しようとしてる。
だから、三角関係なのに、修羅場なんてない。で、ふと思ったのですが、こういう関係で修羅場になるのは、女が男を愛してるか・してないか、じゃなくて、その当事者がどれだけ、自分の今の立場や状態を、自分でちゃんと抱えられないからじゃないかなって思った。そういう「悟り」とまではいかないけど、そういうことわからせてもらった。愛情の高低浅深じゃなく、自分で問題を抱えられない人が、わめいて、自分以外の色々なもの:世の中のルールや、男の良心や、周囲の同情、などに訴えたり責めたりして、味方を作ろうと思うから修羅場になるんじゃない?なんてね。
私はどちらかというと、どうだ!って落ちがある作品が好きなんですが、なんだか読めました。
2005年8月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私は井上荒野の、言葉の選び方が好きなのである。ストーリーは、とりたてて個性的だとは思わない。ひとひねりした恋愛小説。ガンにおかされた女好きな中年占い師をめぐって、妻と愛人の視点で交互につづられる。ちょっとひっかかるのは、二人の女性の感性がなんだかよく似ているのだ。食べ物に対する執着は生と官能への嗜好だろうし、自分への投げやりな態度も共通しているような気がする。この二人は、案外似たもの同士なのかもしれない。
ただ、タイトルの切れ味がいい。「もう切るわ」だけで、緊迫した一場面が思い浮かぶ。小タイトルにも「ミルフィーユの日」「アマゾンの蟹」「ゾルキー」と、きらめく言葉オンパレードである。もったいなくて他の作品の題名に使ってほしいくらいである。
他作品「仕方のない水」の舞台になったフィットネスクラブがでてきて、ちょっとマニアックに楽しい。
ただ、タイトルの切れ味がいい。「もう切るわ」だけで、緊迫した一場面が思い浮かぶ。小タイトルにも「ミルフィーユの日」「アマゾンの蟹」「ゾルキー」と、きらめく言葉オンパレードである。もったいなくて他の作品の題名に使ってほしいくらいである。
他作品「仕方のない水」の舞台になったフィットネスクラブがでてきて、ちょっとマニアックに楽しい。
2005年2月27日に日本でレビュー済み
男を挟んだ二人の女性は、美しく賢い、成熟した魅力を感じたのだけれど、いい歳して甘ったれたオジサンの、良い所がよく分らなかった。気持ち悪いとさえ思ってしまった。
現在『ウフ』で連載している「誰よりも美しい妻」も然り。
現在『ウフ』で連載している「誰よりも美しい妻」も然り。
2006年9月16日に日本でレビュー済み
30代以上の大人の恋愛が静かな流れで描かれている会心の一冊。全大人必読の書です。内容もさることながら、言葉のセンスがすばらしい。「スイトルヨ」なんて読めば「あー」と思ったが、一番初めに目にしたときに自分の頭に浮かんだ意味とのギャップに、ただ「参りました」というしかなかった。心情描写についても作者の視線の正しさというか清潔感というか、びっと中心を打ち抜いている。
甘いだけの、ご都合主義の、性愛だけの恋愛物に飽き飽きしている方はビターな本書を手に取ることをオススメします。
甘いだけの、ご都合主義の、性愛だけの恋愛物に飽き飽きしている方はビターな本書を手に取ることをオススメします。
2010年1月28日に日本でレビュー済み
井上荒野の小説を初めて読んだ。はじめの数ページはあまりにも凡庸で、正直すぐにでも退屈して投げ出したくなるような本だと思ったが。愛人と妻の交互の描写。夫が健康なら、それぞれが別の人生を歩んだに違いないのに、夫がガンに冒されることで、互いの感情が揺れる。
読むにつれて感情移入する。人間って本当はそれが普通の状態なのかもしれない。互いに愛し合っていると確信している夫婦であっても、長い時間の瞬間を切り取れば心が離れたり、孤独であったり、ひどく切なかったり。そしてそれでもやはり愛していると心底思う。大人にしかわからない感情の揺れを、こんなふうに描写できる作家はなかなかいないのではないかしら。
成熟した大人向けのラブストーリー。
読むにつれて感情移入する。人間って本当はそれが普通の状態なのかもしれない。互いに愛し合っていると確信している夫婦であっても、長い時間の瞬間を切り取れば心が離れたり、孤独であったり、ひどく切なかったり。そしてそれでもやはり愛していると心底思う。大人にしかわからない感情の揺れを、こんなふうに描写できる作家はなかなかいないのではないかしら。
成熟した大人向けのラブストーリー。
2009年1月17日に日本でレビュー済み
妻も恋人をも持ちながら、ガンで死んでいた歳さんは、とても孤独な人だ。
しかし彼は、一見どうしようもないような男だけれど、その孤独をきちんと受け止め、一人死んでいった。
大人の愛の話。
人は誰かを愛しても、結婚しても、どうしようもなく孤独だ。
それを肯定していくことでしか、本当の意味で、人生、を全うできないと感じた。
死に逝く者と残される者。
生きるとは、死ぬとは、愛するとは。
そういうことをあたり前の日常を描写することで、私たちの前に曝している。
しかし彼は、一見どうしようもないような男だけれど、その孤独をきちんと受け止め、一人死んでいった。
大人の愛の話。
人は誰かを愛しても、結婚しても、どうしようもなく孤独だ。
それを肯定していくことでしか、本当の意味で、人生、を全うできないと感じた。
死に逝く者と残される者。
生きるとは、死ぬとは、愛するとは。
そういうことをあたり前の日常を描写することで、私たちの前に曝している。